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なんちゃって側妃候補の後宮へ行こう!  作者: さくら比古
草原から来た側妃候補
10/21

予約投稿ここでいったんストップです。

好きな小父様出てきましたが、蓮歌さんのお陰でお気の毒な状態になります。

先に断っておきますが彼は皇国随一の能吏です。


5月3日修正こまごまします。


 時は進んで正使の役目を果たし後宮への回廊を戻る女官長の専属文官・律涼と大門の衛士・流風である。

 上背のある流風が華奢な律涼に首根っこを掴まれ賑やかな様子ではあるが、後宮の正使の領巾(ひれ)と冠を身に着ける律涼に物を言える人間など居ない事から、衛士には気の毒そうな視線が集中するのみだった。

 このような事態に反応する内宮の門衛も、ただ頭を下げるのみで止める者など居ない。その顔触れに馴染みの者がいたのか流風が目線で助けを求めるが、目を逸らされるに終わった。

 正使の露払いは白虎の皮の垂に天鵞絨(びろうど)のマントに典礼用の兜には後宮を示す白鷺の羽が付いている。そんな姿(なり)をした流風に近付きたいものなど居ないだろうと、流風自身が思っている。自分なら巻き込まれないように一目散に逃げるだろう。口は出さないが目は釘付けなどと、流風に後々絡まれても文句は言えない。内宮の衛士たちもお叱りを受ければいい。流風はやさぐれていた。


 偶々(たまたま)大門でその時その場で最上位の役職だったがために、蓮歌と関わることとなってしまっただけなのに、どうしてこうなったのか。

 律涼にしても初対面だと言うのにこの扱い。色々な事があり、自分以上にやさぐれている彼女にに引き摺られるように戻る道はやはり後宮。後宮の衛士でもないのに後宮の者として、況してや今の自分は皇帝にお目見えできる役職に無いのに露払いとしてこうして内宮に来ている。

 今日一日の出来事は完全に流風の許容範囲を超えている。

 同志と言っていいこの専属文官は逃がしてなるものかと言わんばかりに首を締めあげてくるし。

 後宮に待ち構えている女官長も同じく。実に上司に忠実な事だと悪態も吐きたくなる。

 その上、あの蓮歌からは逃げられないのだと思うと、もうこれはお手上げと言う他はない。

 しかし、ふと露払いとして皇帝の前に立った時のその目を瞠る姿を思い出し、笑いの衝動が腹から湧き上がってくる。

 久しく合わなかった間に、清以の頬は丸味を潜め、その激務を物語るように鋭い眼力は威を纏っていた。自分が側から離れることに一番に反対していたと聞いている。時は流れ、二人の間に幾重もの差が重ねられようとも、変わらない信をその瞳に()いていた。

 馬鹿な奴。と(うそぶ)いても尚、己の中の情は忠と成り代わってもその熱量は変わりないと確認する外無かった。対外的には彼を裏切った。彼も裏切られたと思っている筈なのに、どこにも怒りや恨みの色は無かった。そんなことが単純に嬉しいと思う自分に呆れる。


「貴方なぜ黙っていたんです?」

 引き摺ることの負担に今更ながら気が付いたのか、律涼がいきなり流風を開放し詰問してきた。

「・・・何のことだ」

 予測は付いているが墓穴は掘りたくない。流風は空恍(そらとぼ)ける。

「彼の方の事は基本表向きの事しか出回ってはいないですが、後宮では独自の情報取集が出来ますので私が任官する以前の事も知ることはできます。

 『皇太子の懐刀』の乱心はそれ程に衝撃がありましたからね。現場が後宮であった事も今では教本に対応策の例題として掲載もされておりますから」

「なんだよ例題って。失礼しちゃう。それって出演料は出ないの?」

 大袈裟に憤慨しつつも流風は冷や汗を()いていた。教本だなんて誰の画策か分かってしまう自分がいる。

「当時の当事者でもあった皇太子殿下、つまり陛下のご指示があったそうですよ。ご請求は陛下になるでしょうか?

 まあ、実名は出ておりませんでしたので気が付くのが遅れましたが・・・貴方だったのですね」

 しみじみとした口調に嫌悪も無く、どちらかと言えば慰労の念がある。それはそれでむずむずするので逃げを打つ流風。

「まあ、裏を知っているようだからこれ以上は、な?それよりもやっぱり俺はここでお役御免とは・・・「当たり前ですよ。逃がしませんからね」だよなあ」

 



「何がどうなってこうなった?」

 戻ってきた二人が見たものは、最凶の三竦(さんすく)みだった。



 二人が戻る少し前。

 女官長と蓮歌は一見和やかな雰囲気で茶を喫し四方山話に花を咲かせている態でいた。

 実には隠そうにもしなくなった蓮歌の威に女官長は鍛えられた胆力で応戦しているという状況だった。ふわふわと浮かんで部屋を行き来する精霊王は興味深げに見下ろしてくるし、中々の混沌状態だった。

 そこに、外から入室の許可を求める声が掛けられた。

 対応する者はこの場の下位である女官長だ。相手は戸惑う気配を見せたが直ぐに取り直したのか扉を開けたのだった。


「御前を汚します事お許し下さい」

 拝跪し額づく文官の装束を(まと)った男に、蓮歌は興味深げにしている。直言を女官長に止められたためだが、今は目の前の人物に気が行っていて『面倒臭い』も御座なりとなっていた。

 文官服を纏った壮年のこの人物は、皇帝の信を得る一人でもある後宮の全ての文官を束ねる第一書記官の開居その人だった。

 第一書記官の役職は後宮の全ての文官を束ねる者である。だが、女官長はそれに含まれない。どちらかと言えば女官長が上位者になるが、その女官長と言えど後宮の内外及び対外的な物事に対する判断に第一書記官の同意が得られなければ通すことが出来ない。

 現実に二人の間柄は役職上のものを寸分も出ないが、お互いの意思に相反することが無く問題なく後宮の運営に共闘してきた。戦友と言っていい間柄だった。

 その第一書記官にして帰庁早々に後宮の幹部たちに捲し立てられた異変は未だ己の中で消化できず、当事者の女官長に面談を求めに来たのだが、文官たちの混乱状態からの連絡ミスで、当の蓮歌との同席である事が伝えられていなかった事が第一書記官の不幸だった。

 自分の庭で絶対的な不利。情報を求めて女官長を(おとな)ったはずが、空手で前線に放り出されたのだ。恨む視線を女官長に遣るが、元より女官長にもどうしようもない事態だった。

 吹き出す冷や汗を隠すことに終始している場合ではない。

 能吏である彼は目的の為には肉も骨も断つ覚悟がある。どうしようもない事に拘泥(こうでい)する無駄を嫌い直截に蓮歌自身に事の説明を求めることにした。

「お前様は面白い人物だな」

 初手は蓮歌。上座に座し、跪く開居に純粋な興味で声を掛けてくる。神威の圧とはこういうものか。開居はその出が精霊を祀る祭司の家故にその『気配』には馴染がある。が、蓮歌のそれは精霊のモノより実体化に近い程の脅威。『知る者』だからこそ律涼以上に硬直してしまう。

「皇帝より信を得る忠義の者。事に当たれば皇帝はおろか自身の信さえ疑う。

 細かな事さえ自ら赴き調べねば気が済まぬ。ふうむ。厄介な御仁だ」

 女官長は眉を上げ蓮歌を凝視する。小さな唇から紡がれる言葉はいつの間にか独特の訛りが消え、少女から大人の女、人の上に立つ器量を持つそれに変化していると気が付いた。

 その瞳もぼんやりと形容するしかない辺境から来た少女から戦場に立つ女将軍とも言うべき力強さを湛えている。

 自分の目の前に居るこの人物は何であるのか。人の皮を被った何か。ぞくりと女官長の背が震えた。

「お褒め頂いたと解釈してもようございましょうや」

 恐れ入りますとぬけぬけと言う胆力に、蓮歌は開居に苦笑する。

「それで、女官長とお前様は『知る側』だと思うが、どこ(・・)まで知っている?」

 どこまで?奇しくも問われた二人が内心で声を合わせる。

 後宮の重鎮や己の前任者より口伝にて伝えられたことは勿論承知だ。だが、蓮歌の口振りではそれ以外(・・・・)がある?それともそれ以上か。

「・・・皇国の成り立ちや繁栄に草原の国の蓮歌在り。それを初句に108節の詞が皇帝陛下及び皇国の重鎮、近侍迄に伝えられます。

 後宮は国の大事を護る宮なれば、女官長と第一書記官である私め、数人の幹部までが承知と思っていただければ」

 頭を垂れたまま、開居は様々な事を想定しながら蓮歌に答える。

 その答えに、蓮歌ははぐらかされたかと苦笑するが無理も無いと、この第一書記官ならば当然のことと納得する。

 自分はこの二人の信を得たわけでも、勿論忠を捧げられたわけでも無い。この二人が畏まりながらも『部外者』の自分に正直に話す筈も無い。

「まあ、あの下手の横好きが書いた詩篇だか何だかの解読はご苦労さんな事だが、アレには更に続きと言うか裏がある。

 初代様はこの国では皇国での生活に耐えられず草原へ帰って行ったとさと伝わっているんだろうさ」

 確かに広く広まっているのは、この国が未だ王国としてい興った時に初代王に力を与えた蓮歌と言う名の少女は、平和の世となった時に王妃へと迎えられた身分を捨て草原へ帰って行ったというお伽噺だ。

 時が流れて草原の国に対する認識が『(まつろわ)ぬ者』に変化し、皇国民でありながら皇国に従わぬ地方民族にすり替わったことには、学びながら女官長も人為的なモノを感じたが、皇帝陛下を始め皇国の重鎮に草原の国を粗末に扱う者は居ないため、却って知られない方が良いと認識した経緯がある。

 だが、件の白公子のように『知らされない側』の暴挙のような案件は想定外だった。

 それも含まっての蓮歌の問い掛けだと思うと、女官長は開居に事前に話を通すことが出来なかったことに(ほぞ)を噛んだ。

「初代様は戦乱の世を収められると国の安定を祈るために草原にある聖地に籠られた。5種3水を()まず百日百一夜祈り続けられ入滅されるも、土に還ることを拒まれ岩室にその身を横たわれ守護たる精霊へと昇華された。

 今尚この国が危うげながらも保たれているのはその守護の力に他ならない」

 第一書記官も女官長も救国の聖女である蓮歌のその後の真実に絶句する。

 固まる二人に蓮歌は続ける。

「そしてこれからが是非知って貰いたい話だ」

 勿体つけてと言うわけでは無いが覚悟を決めろと言わんばかりの視線で二人を射抜く。

「これまでも何度かこの国は危機を迎えた。内憂外患。呆れるほどの言いがかりで攻めてこようとする諸外国や獅子身中の蟲に悩まされてきた。

 その折折に何とか収めてきた。だろう?」

 問う仕草に二人は頷く。見聞きしてきただけでも皇国の歴史はその波乱の度合いが大きく、まるで物語の様だと若い文官だった第一書記官は思ったものだった。

「それらを予見した初代様は、後顧の憂いを除くために、都を離れざるを得なかった。

 愛した王を最も信頼する腹心に任せ、この国自体を護る守護の符を錬られた。

 その身が朽ち果て人でなくなっても尚な」

 言葉も無い二人に容赦なく蓮歌は続ける。

「己の腹心は後に王妃となり次代の王を育てた」

 ハッと女官長が顔を上げる。初代の王妃は後宮を創られた方。蓮歌が去った後の王国を王を支え護ったと言われる人物だった。

 代々女官長が引き継ぐ執務室の壁画には、聖樹の根元に朗らかに笑みを交わす二人の婦人像が描かれているが、元々その部屋は初代王妃の後宮での執務室だったと聞いてる。あれは蓮歌様と初代王妃だったのか。絵の中の一人の面影が蓮歌と重なった。

「初代様は聖地に赴く前に内宮に一年間籠っている。件の腹心と共にな」

 今度は開居が顔を上げる。真っ青になっている。

「ま、まさか」

 くっと蓮歌の口端が上がる。

「察しの良いのは()いな」

 気が他に行っていた女官長もあっと気が付いた。

「そうだ。

 初代様は王との間の一粒種を腹心に預け、そのいとし子と王の事を頼んで都を離れた。

 初代様は独断で全てを行った。当然、王は怒り狂い腹心は嘆き悲しんだ。それでも、初代様の現世の身が息絶えたことを感じられた時、初代様の言い残されたことを実行される。

 残された子を王妃の子として世に表し、二人は白い婚姻をしたのだ」

 息も詰まるような話に、今迄蓮歌に去られた王を支えた乙女を初代王妃として娶り王国を立ち上げたのだと。結ばれること無く悲恋に終わった英雄の少女は、草原の国に戻り草原の王に娶られたのだと。そして、その後は王が皇帝になった今迄、蓮歌のその功績に報いんがために下にも置かぬ扱いで草原の国は皇国と繋がって来た。そう思って来た。

「初代様は王を愛した。だが、迫ってくる強大な危機に対抗出来る手段はアレよりなかったのだと思う。

 一緒にいとし子を育てたかっただろうが、その子を草原には連れて行けぬ。

 いとし子は生まれながらに国を握る者だった。連れてはいけない。

 反対されると分かっていたから王にも腹心にも何も言わずにいた。

 守護の符が成り、国は守られた。臣には王の慟哭も些細な事と黙認されたが、時が過ぎ子に代を継いだその夜、腹心であった王妃に看取られ王は自死した。その喉仏を蓮歌と共にあることを遺言してな。それ以来、皇帝のみが火葬される。そうだったな?」

 火葬の意味がそんな話だったという事は初耳だった。臣民に強要はしないが、確かに皇帝は火葬だった。息苦しさに開居は襟に手をやる。

「まあ、そんなことが草原国では初代様の父親の血筋に口伝として伝えられている。

 その、な?これ迄の話をふまえた上で更に話は続くんだが、いいか?」

 いいかと言われても、聞きたくなくても聞かねばならないだろう。重くなった肩を張って開居は首肯する。

「初代様はその血を使い、ある呪を草原の国に残された」

 言い難そうな躊躇に、二人の背に緊張が走る。何が出てくるのか、戦々恐々だった。

「王国、皇国だな、皇国に再び災いが巡り合わせた時、守護せんがために自分の雛型を仕込んだんだ。

 私は私であって私じゃない。純粋な意味で生まれ変わりでは無いが『蓮歌』として生まれてきた。

 逆に言えば太平ならば『蓮歌』は生まれない、という事だ」

「あ、あ、まさか」

 女官長がよろめき裳に絡んで転ぶ。膝立ちだったために引っ繰り返ったわけでは無いが、精神的衝撃で喘いでいる。

「『蓮歌』そのものではないが『蓮歌』の記憶を引き継いでいると思ってもらえば正解だな」

 やれやれと息を吐いて女官長に助け手を出す開居を見ている。

「驚かせてしまったな。まあ、国に禍する者には後宮は容赦しないようにできているから安心してほしいと言っても、この後宮を創ったのも強化し続けたのも初代様と2代様3代様だから信用して貰えないかも知れないがね」

 息を吐く間もなく衝撃の事実に曝され、舌が痺れたように動かせないでいる女官長に、開居はずっと前のめりに蓮歌へと問う。

「申し訳ございませぬ。初代様とは蓮歌様、救国の御方となりましょうが2代様3代様とは・・・」

 記録には全く蓮歌と言う名が皇宮には残されていない。見たことが無い。況してや草原の御方が後宮に来たとなれば表の正史にも記されている筈だ。王国時代のものも全て失われること無く後宮で管理されている。確かに見たことは無かった。

「希代の呪術師だったんだぞ?初代様を妨げる障害なんぞ存在しない。

 それに去りし神々の息吹を身に受け生まれついての半神となった初代様だ、どこぞの空っぽの神像を拝んでる狂信者共とは格が違うさ」

 どんどん()がれる情報の濃さ重さに驚くことにも疲れ果てた。

 二人が知る正史も裏正史にも蓮歌が半神であったとは書いていなかった。書いていない事は知ることが出来ない。当然のことだ。蓮歌も知らない事を詰るようなことはしない。

「王妃が初代様の残した設計図通りに後宮を建てさせ、子に面会に来がてら忍び込んであちらこちらに守護の符を(しつら)えて行く。そんなことをやったらしい。

 2代様3代様に至っては王妃の間に『いたずら書き』をしてその時は王太后になっていた初代王妃を泣かしたり、初代様の符に結構えげつない呪をくっつけたりしたから、皇帝や皇后はいざとなれば後宮に逃げ込めばいい。

 あ、風の精霊王(シュカ)が引っ掛かったんで後で壊れたとこ修正しておこう」

 感謝すればいいのか、判断に迷う顔で二人は見合う。ここまでくれば、蓮歌の意図することが見えてきたが話は最後まで聞かないと何が引かけられるか分からない。

「と、これまでが私が後宮まで来たことの背景になる。質問はあるか?」

 もういっぱいいっぱいな二人を見て蓮歌の口が止まる。

 質問と言われても、正史にあることが所謂カモフラージュになっていた事に気が付き、ならば真実に沿ってと言うにもまだ消化しきれていない。弱弱しく首を振る女官長に蓮歌は申し訳なさそうに顔をつるりと撫で上げ頭を掻いた。

「まあ、今まで話していた事を前提とするならば、私が今ここに在ることに理由は分かると思う。分かるよね?」

 宥めるように問う蓮歌に開居が頷く。

 蓮歌が語った話を信じるならば、蓮歌が生まれ今後宮(ここ)にあるということは、皇帝ないし皇国に危機が迫っている。若しくはもう既に危機に(おちい)っている。それを防ぐために蓮歌が何らかの行動を起こすことに自分たちは有無も言わせてもらえず巻き込まれる。

「先程皇妃になりに来たと仰せでしたのはそう言う事でしたか」

 吐息のような女官長の言葉に、蓮歌は頷いた。

「今上に会うまでにここの最高責任者に会うべきだと思ったのでな。 

 …初代様と私は同一人物ではない。だが、それでも蓮歌の血を継ぐ子は愛しい。それが初代様の掛けた最大の呪だろう」

 しみじみと言う蓮歌に、生まれながら、それどころかそのために生まれてきた蓮歌の気持ちを思う。生の全てが図られたこと。そこに諦観の念が見えるようだった。

「打ち合わせは今上が来た時にしよう。今は後宮の責任者たるお二人との擦り合わせがしたい」

 私情を剥ぎ取った蓮歌に開居と女官長は拝跪する。目前の御方はこの後宮の真の主であるとこの二人が認めた瞬間だった。



「陛下の御成りにございます」

 先触れの声が後宮の回廊に響いた。

 シャンと露払いの衛士の錫杖が鳴る。ゆっくりと進むその御幸に後宮は寂を持って迎える。

 まるで人など居ない様な静寂に、額づく文官たちは人形と見紛うばかりだった。

 急く気持ちを押さえつけ、清以は歩を進める。

 シャンと鳴る。

 一行は蓮歌の待つ部屋へと進んでいった。

 

コメディのつもりで書き始めましたが、蓮歌さん迄あれ?な状況に。

どうしてこうなった?ぎゃふん!


読んで頂き感謝感激!

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