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恨みは解けて消えて……いいわけない

お読みいただき有難うございます。

ねちっこくて非常識な人たちの悪い意味のアッサリした恋愛です…。

 よし、整理しよう。

 頭がこんがらがって来たわ。

 私、晴馬しのぶ。愛する彼氏が出来てハッピーな筈の高1。

 ……只今修羅場に巻き込まれ中。


 昨日までの出来事を思い返すと……。



 幼少期のソーマくんは雛菊を好きすぎるあまり、

 喧嘩して構ってもらおうと思った。

 挙句雛菊の名前コンプレックス滅多刺しにぶっ刺して、逃げられた。

 で、私こと晴馬しのぶとお友達になり、和やかに学食で語らっていたら私と彼氏の障害小姑、お邪魔虫…いや、彼氏の陰険な弟が現れ……彼氏の弟がソーマくんだった。


 突然のトラウマ要員との再会に逃げる雛菊、追わないヘタレ……いや、ソーマくん。

 帰ってきた雛菊は何故か私の彼氏を崇拝していて、ショックの末の精神異常を疑った私、しのぶはソーマくんを呼び出し、雛菊との過去を聞いた。

 ついでに私の過去も曝してやったが全く同情されなかった。


 だが、理由が分かれば突破する糸口も見つかると言うもの。

 何とか雛菊への贖罪から始めさせようとした私とソーマくんの前に、変な女が現れ……。

 自己中満載の妄言を吐いた今、ソーマくんにへばりついていた途端、雛菊が現れた。←今ここ。


 ……よし、現実逃避終わり!!

 立ち向かえよソーマくん!今度こそ!!

 正直こんな男は本当に嫌だけど!!何がいいんだ。


「雛菊、伝えたいことがある」


 やっと言ったね年貢の納め時!

 見直したよヘタレネクラソーマくん!


「その前に……とりあえず、助けてくれ」


 ……よくも言ったね見損なったよネクラソーマくん!

 見てみなよ周りを!!

 さっきのムライって女の発言よりシィーーーーンってなってるよ!!


「……」


 恐ろしいくらい無表情、無言で歩いてきた雛菊が、ぺいっ、ソーマくんの腕からムライって女を引き剥がして、捨てた。

 ……昨日は煩かった学食が凄く静まり返っている……。


 助けるんだ……優しいね雛菊。

 雛菊の腕っぷしを知らない若干野次馬が引いてるけど、知らない。

 でもそこは昨日みたいにショックでダッシュで逃走でも良かったと思うよ。

 お尻蹴飛ばしてでもソーマくんに追わせたよ。


「きゃんっ!」


 あ、このムライって女が這い擦って、またソーマくんに張り付こうとしてる。

 とりあえずスカートでも踏んどくか。


「な、何すんのよっ!」

「今いーとこなんだ、邪魔すんな」

「こ、怖いわ……誰か助けて……」


 しかし助けは来なかったよ!

 まあ、当たり前よね。助けさせる気も無いけどね!

 とりあえずガムテープで後ろ手に縛って、本人のハンカチ(スカートから引っ張り出した)でも口の中に入れとくかな。


「ふぐっ、くぐっ」


 よーし静かになった!

 うん?ガムテープは常備してるよ。

 翔くんに会う前に制服の泥汚れとか取らないとね!


「雛菊……」

「名前を呼ぶなと言いましたけど」

「話がしたい」

「結構です」

「図鑑も返すから」

「要りません」


 わあ雛菊、にべもなーい!

 でも当然の反応だよ。ここからソーマくんの頑張りどころだ!!

 ……要らん事言うんじゃないよ、ソーマくん。

 正直今凄く胃が痛いわ。


「児童館では、悪かった。冷たくされて当然なのは、分かってる」

「何のお話ですか」

「あのときはガキだったから名前くらいしか、悪口が思い当たらなくて」

「……は?」

「優しい雛菊が好きだから、意地悪して喧嘩したらもっと俺を見てくれると……」


 ……空気読めよ、ソーマくん。

 今、欠片もそんな空気じゃなかったよ。


 ここはちゃんと謝罪した上で、許されなくてもいいから好きでいてもいい?

 そして償いの過程を経てハッピーエンドにみたいなノリじゃないの!?

 何自分の思いだけを爆発させてんだ。

 その台詞はもっと後に取っておきなよ。

 二人きりとかで!!二人きりとかで!!ここ重要!


「……ええと、何を言ってるんですか」


 絶対引いてると思われた雛菊の顔が……え、赤いだって……!?

 あれぇ!?雛菊の態度が軟化してるよ!?

 おっかしいな!?

 いや本当に何でよ。


「本当に悪かった」

「や、やめてください。私……」


 いや、本当に顔を赤らめてんの雛菊?

 今の何に照れる要素が?

 おーい雛菊、こいつは10年くらい前の宿敵ですよー。

 さっきまでこのトラウマの権化め!の目で見てた人だよー。


「謝られたくらいで許すとか、チョロすぎないか!?

 もっとコミュニケーションとれよ!!

 だから自己完結のみでウジウジ悩むんじゃねーの!?」


 あ、言っちゃった。うっかりー。

 ……いや、わざとですけどね。

 こんな流れは断ち切らざるをえないでしょ。


「はっ、そ、そうだった」

「しっかりしろよ雛菊!!」


 雛菊がしっかりしないと私が突っ込む羽目になってるんだよ!!

 おかしいでしょ!?普通逆じゃない!?

 昨日の切れ味を思い出して!!

 ソーマくん絡みでポンコツ化する雛菊とか正直見たくない!!


「おいふざけるな痴女!!折角話が出来るかと思ってたのに!」

「ソーマくんは自分の事さえ構ってもらえりゃ相手の気持ちは無視かよ!!アホか!!」

「だから10年くらい思い悩んで今謝れたんだろうが!!」

「重い割には展開が軽すぎる!!誠意を見せろ!!」

「し、しのぶ、誠意ったって……先輩も反省を」


 怒鳴る私に雛菊がオロオロと声を掛けた。

 何で雛菊がソーマくんをフォローしてんの!?

 たったこれだけの会話でポンコツが極まってるの!?

 ソーマくんに重きを置き過ぎじゃない!?


「いや、雛菊が何で庇ってんの?

 こいつはお前が放っておいてもこんなんなんだよ!?

 お前がここで折れて後生大事に守ってたら、更なるオンブにダッコのオヒメサマになるぞ!?

 心を鬼にしろ厳しくしろ!!」

「お、お姫様……」

「誰が姫だ痴女……!!」

「フツーに立場が逆だろ!!ソーマくん!

 雛菊を守れる優しい男になってから出直せ!!」


 何故か野次馬から拍手が起こってるわ。

 うん、今の私、すごく正論言ってる。

 野次馬に褒められても嬉しくもなんともないけど。


「え……た、多分無理かと……」

「ひ、雛菊!?」


 あ、雛菊に否定されてるわ。


「しのぶ、別に私は先輩に守られたい訳じゃあ無いし……」


 いや、言いたいことは分かるし、実際ソーマくんヘタレだし、見捨てたい方向なら応援するけど……。

 その顔は間違いなく、自分がソーマくんを守りたいみたいな顔だな雛菊!!

 駄目野郎製造業になってもらっては困るよ!?

 翔くんとの未来は輝かしいけど、こんなのが義弟だなんて恐ろしすぎるわ!!


「おいソーマくん!ここまで言われてんぞ!?情けなさすぎる!!」

「ぐ……でも、雛菊にしたことを思えば何を言われても仕方ない」


 そこの誠意は今見せなくてもいいんだよ!!

 もっと他の所を頑張ってよ!!とことん駄目だなこの男は!!


「此処は成長を約束しとけよ!!」

「出来もしないことを約束するのは不誠実だし」

「やろうとすらしねーのかよ!!」

「それに、しのぶ……。私は先輩から謝られたら、過去とかどうでも良くなってきたというか」


 ちょっと待って。よく無いわ。

 雛菊は今までの経過を冷静に振り返った方がいい。

 もう借りパク許すまじとかでもいい。

 …私は開いた口が塞がらなかった。


「お前の積年の恨み、名前トラウマはどうした!!

 どうでもよくない!!おぞましいこと言うな!!」

「積年の恨み……言ったっけ?」

「ソーマくんからさっき聞いたんだよ!!」


 何でそんな忘れてるみたいな!?

 何で全て水に流したみたいな晴れやかな顔を!?

 ……いけない、叫びすぎて喉が痛くなってきたわ!!

 飴か水が欲しいわ。


「すげーな、あの突っ込みっぷり。案外あの子常識人なのかな」

「あれ、素?だったらちょっといいよな。見た目も可愛いし」


 ハァ!?何でそうなるのよ!?

 どさくさに紛れてしょーもない愁波が送られてきててぞわっとする!!

 翔くん以外が私にそういう目を向けないで!!気持ち悪い!!

 これだから野次馬は嫌いだよ!!


「とにかく!!ソーマくんに雛菊!!」

「え、何」

「煩いな痴女」


 揉めに揉めてた癖にぽわぽわした顔を二人でするんじゃない!!

 当事者達なのにおかしい!!


「お前らは今のままでは付き合うべきではない!!」

「「何で!!」」


 ……何を言ってるの、この二人は……。

 言いたくないけど、仲いいよね!?

 この変な病み具合、お似合いかもしれない…でも、だけど!!


「お前らがアホみたいに共依存だからだろーが!!」


 これだけは確信を持って言えるわ。

混ぜるな危険を防ぐため、しのぶ、頑張る…。

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