表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

私を好きなら心変わりしないで

拗れ人、襲来

 とまあ……これで丸く収まるだろー、

 無事にソーマくんを焚き付けらーれた…おーわり!

 私達の戦いはこれからだー。


「颯真くんっ」


 若干ハッピーエンドに向かう事を確信した。

 いやー疲れたなーでもこれって雛菊の為になったかなー。

 だったら嬉しいなー。

 なーんて和やかに気を抜きたい私の耳に、キャンキャン声が響いた。


 うわー、何?この不愉快な声と言い方。

 ……此処まで拗れて煩かっただろう私とソーマくんに、見た目上は無関心だった連中が途端にこっちに注目してる。

 人の不幸は遠目に見て楽しむ雰囲気……ていうの?

 野次馬の目も相当嫌だけど……。

 誰、空気読まないこのバカは!?


「颯真くんっ!!!颯真くんまでその女に騙されてるの!?」

「あぁん?」


 誰が誰を騙してるって!?

 反射的に目一杯睨んでやったらヒィっとか言ってるし。


 ……あれ何この女子。喧嘩売り方知らないの?

 スカート短いしシャツ開け過ぎだし、付け睫毛付け過ぎだし上目遣い凄いし。

 こういうのがソーマくんの趣味?二股?

 だったら雛菊はやれないな。考え直そうかな。


「痴話喧嘩ウザ―」

「両手に女子とかリア充爆発しろよー」


 やいのやいの、って外野が煩いわ。

 それにしても野次馬も暇だねー。

 完璧に観戦モードになってるし。


 しかも誰に応援されてるわけでもない、この闖入者はめげてない。

 何か私を見ないようにやたらプルプルしてるけど。

 そんなに私が怖いんなら来るなっての。


「そのしのぶって女は、とんでもない野生猿みたいな女なのよ!!」

「全校生徒が知ってる」


 それに負けずに叫ぶこいつもヤバいね。

 私が何か言う前に即座にソーマくんが肯定したわ。


 いや、最近まで多分知らなかったよね、私の正体…正体?

 まあ正体か。

 そんな自信満々に言い放たないでほしい。

 でもまあ、安心して手加減なしでいいのは有難いかな。

 まだ未確定だけど、自然に地が出るのと、意識しておとなしく装うのは違うし。

 どっちか言うとこの男子っぽい言い方も地のひとつになってきた気もするし。

 付け焼刃も長年やればちょっとは固まるってことかな。


「だっからどうしたバァーカ」

「ヒッ、何なのよあんた!!」

「テメーが何だよ、ブス」

「ブッ……ブスですってぇ!?

 ちょっと可愛いからって兄弟に二股掛けてるくせに!!」


 ええ……二股?私が翔くんとソーマくんを股掛けしてるって?

 ……気持ち悪い事を考えないでほしいわ。

 仮に世界に二人でも嫌だわ。


 そんな感情を混めてソーマくんに向けたら、心底嫌そうな顔を向けられた。

 いや安心して。

 ソーマくんみたいな暗いいじめっ子男には何の関心も持てないから。

 お互い様だけど腹立つな、ソーマくん。


「二股ァ?人として最低だろーが」

「騙されちゃだめよ颯真くんッ!

 その女、手下を使って私を苛めたんだから」

「手下?」

「そうよ、あのゴリラみたいな女よッ!!」


 ゴリラが手下?女の?

 猿だのゴリラだの悪口のバリエーションが全くない女だわ。

 ……それに記憶を辿っても居ないわそんなの。

 それに苛める?なら自らやるけど。

 知らない人には流石に何にもしたことない。

 まあ、勝手に人の苛めを背負わされそうになったことは何度か有るけど。


 思わず私はソーマくんを見たら、ソーマくんも私を見た。

 さっきからよく顔を合わせる羽目になるけど、本当に不本意。

 翔くんを見たい。


「なあ、ソーマくんあれ誰」

「3年、村井麗奈」

「へー、それだけじゃなさそうだな」

「颯真くんっ、私の事好きだって言ったじゃない!!」


 こっちのヒソヒソ話も無視で、女がキャンキャン叫んでいる。

 ええー、何なのソーマくんの元カノ?ちゃんと別れてないの?

 マトモに躾といてほしいわこういう思い込みの激しいタイプは。

 ややこしいなー。


「いや、それ小学生の頃だし、大体お前転校生の厚木が好きだって言った」

「私を好きならずっと好きなんでしょ!?」

「お前、何言ってんの?」


 あまりにも身勝手なお話で…ずっコケそうになった。

 ずりって音がしたから、多分野次馬の誰かがコケたんだと思う。

 うーん誰か知らないけど元カノですらないって…。

 ソーマくんに全面同意するわ。今回は。

 何言ってるんだろ、こいつ。


「私に告白したのに他の人を好きになるなんてダメ!!

 間違ってるわ!!」


 この村井って子の発言に、

 面白そうに野次馬してた奴らも一気にシーーーーンッってなったよ。

 ヤバさを本人以外は感じ取れた。だから絶句した…。

 さっきまでは知らないけど、確実に今は全体一致してるわ。


 それにしても……病的に人の話を聞かないタイプか。

 久々に見たわ。頭痛いわ。


「……」


 ソーマくん、現実逃避しないでほしい。

 頭痛いのは分かるけど、当事者でしょ!…多分。


「おい、ソーマくん何とかしろよ」

「こいつ、昔から変なんだ」

「ずっと私を好きでいてよ!!」


 更にとんでもない自己中心的台詞に呆れて見てると

 ねっとりと、その女がソーマくんにしがみついていた。

 早っ。

 しかもこの環境下でよく出来るわー。恋は盲目?


「いい加減にしろよ、村井」

「いやっ、好きだって言って!!」

「おい痴女!!手伝え!!」


 流石にこういう根の深そうなヤバい女子を引き剥がすのは大変か。

 まあいいや、たっぷり恩を着せとこう。


「ハァ?もーしゃーねえ、剥がすの手伝ってやる……から」


 そして私は見てしまった。

 学食の入り口に立つ、人影を。

 ……帰った筈の、雛菊を。



 恐ろしい程の蒼白な顔で、見開いた目が真っ暗で。

 昨日とおんなじ顔だ……。


 ……タイミング最悪。

 これ絶対勘違いしてる。絶対その流れにしか見えてない。

 どうしてこう、この二人はボタン掛け違え所か破いてズタズタになってるんだ。

揉めて仲直りしてハッピーエンド…って難しいですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ