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攻守交替

マイナススタート。

「ええ……おおっと……?予想外シリアスの気配……?

 シュラーバ?」


 ……ガクッと来るなあ。

 変な発音すんな、しのぶのアホ。

 ……いけない。

 目の前が真っ暗になりそうな所をしのぶの声が現実に引き戻してくれた。

 天然なのかアホなのか分からないけど、有難いよ、しのぶ。


「しのぶ、帰ろう」


 何時の間にか二人から手を放されていたらしく、私は逆にしのぶの腕を取った。

 が、怯えた目で見られた挙句に振りほどかれた。

 何なのよ。

 あんたがさっきまで私を掴んでいたんだろうが。


「ちょちょちょっと待って!!

 まだ根本的な解決に至っていない!!」

「大丈夫よ、こんな性癖ですみませんって

 土下座したらいいわ、彼氏に」

「何の解決にもなってないし!

 大体ソーマくんどうすんの」

「三年の先輩が何か私に関係ある?

 大体しのぶの関係者でしょ」


 ……先輩の前では冷たい声しか出て来ないな……。

 そんな私にしのぶは怯えたように私から若干距離を取り、先輩にひそひそと話しかけた。


「ちょ、何したソーマくん……。

 こんな零下な対応の雛菊、見た事ないぞ」

「な、なにもしてない」

「図鑑って何よ。雛菊を図鑑で殴ったとかしたの?

 うっわ怖ぇー!!ヒッデー!」

「するかお前じゃあるまいし!!」

「じゃあ何だよ、借りパクでもしたっての?」

「返すつもりだったのに来なくなったんだ!!」

「うっわそれ普通に借りパクじゃねー?

 そりゃ怒るわー」


 ……ちょっとしのぶ、せめてもう少しヒソヒソ話そう。

 全然内緒話になってないし聞こえてるし。


「あ、明日!明日持ってくるから!雛菊」

「結構です。自分の名前苦手なんです。名前で呼ばないでください」

「……?何で?可愛いと思うけど」


 嘘つかないでよ。

 子供の頃言ってたんだろ、他の子に。


『ヒナギクちゃんってお名前、似合わないよってあの子が言ってたよ?』



 うん、名前が似合わないのは前からだし、

 言われ慣れてた。

 でも、優しくした子に言われるとあんなに傷つくとは思わなかった。


 子供が悪気無く言った事だ、分かってる。

 何年も前の事をグジグジと引き摺って根に持ってるのは良くない。

 支倉先輩は悪くない。悪くないのに…。


 イライラは消えない。

 気が付くと、頭に血が上って、怒鳴ってた。


「図鑑は勝手に処分してください!」


 先輩は驚いている。そりゃそうだろう。

 でも止まらない止めないといけない。

 頭がぐちゃぐちゃになって、何も考えたくない。

 しのぶは私と先輩を交互に見て、絶句している。


 ああ、でもしのぶに構う気力ないや。

 これ以上ここに居たくないや。

 その考えで頭が一杯になって……私は学食を出て走って逃げ出した。


「これは……借りパクした挙句、嫌がってる名前で呼んだからフラれたんだな

 ゴシューショーサマーソーマくん」

「……」


 修羅場の攻守逆転した、二人を残して。

 そしてしのぶ、

 私と先輩とはどんな関係でもないし、フってない。

 私が一方的にぐずぐず怨んでるだけだ。

人と人との付き合い

悪気は無くとも結構怨まれていることもあったりする。

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