小春日和の児童館で
色々お約束を詰め込んでラブコメを書きたいと願っています。…暗い方へ行かないように…。
ハッピーエンドが好きなのに…むしろハッピーエンドしか好きじゃない。
何時も行く児童館で、片隅でプラスチックの積み木を男の子が居る。
長く通っているはずなのに、誰とも遊ばず、ずっと一人で遊んでいたのが目についた。
何で誰もあの子の傍に行かないんだろう。
その時は単なる好奇心で、その子に近づいた。
「それ恐竜?かっこいいね」
私の顔を上げた男の子は、とてもかわいい顔をしていた。
他の子よりも背が大きくて、女の子扱いされない私よりも。
「……」
「図鑑有るよ。これ作れる?」
私はその子に自分の図鑑を診せた。
彼は首を振って、小さい声で答えた。
「…難しいよ」
じゃあさ、と私はおもちゃ箱の一つを
彼の前に引きずった。
「こっちの小さいブロックなら作れる?」
「……小さいの、使っていいの?」
「皆使ってるよ」
「でも使っちゃダメって、言われた」
誰がそんな意地悪をしたのだろう。
「いいよ。じゃあ、一緒に作ろう。
何か言われたら、言い返すよ」
「……」
無口で、悲しそうな顔をしていた男の子に、無理矢理おもちゃを押し付ける。
最初は拒んでいた男の子は、恐る恐る一緒に遊んでくれるようになった。
少しずつ、笑顔を診せてくれて……。
ぽつりぽつりと自分の話をしてくれた。
仲良かった子が、引っ越して一人になったのだと。
その子が居なくなると、誰も相手にしてくれなかったのだと。
「じゃあ、わたしが一緒に居るよ」
「え……女の子だったの。知らなかった」
心底驚いた、と真面目にそう言われた時は
若干ショックだった。
「ねえ、ヒナギクちゃん」
「何?」
とある日の小春日和。
何時ものように児童館のドアを開けて、靴を脱ごうとしたら。普段話しかけられない女の子に話しかけられた。
「ヒナギクちゃんってお名前、似合わないよってあの子が言ってたよ?」
「え?」
「ほら見て、れいなちゃんと居る方が楽しいって。
男の子みたいだもんね、ヒナギクちゃんって」
彼女が指さす先に、彼は居た。
可愛い女の子と私の貸した恐竜の図鑑を二人、寄り添って。
とても仲が良さそうに、笑いあっていた。
春のぽかぽかした日差しの中で。
ただそれだけ。
多分、それだけ。
頭の中が真っ白になって気が付けば家におり、布団をかぶっていた。
どうやって帰ったかどうかも覚えていない。
当時、母や父が何を言ったのか覚えていないが、聞かなかったのだろう。
それから児童館へ行かなくなった。
名前も覚えていない。
知らなかったのかもしれない。
きっと姿もおぼろげで。声も忘れている。
それでもずっと、心の奥底、恋でもない愛でもない、
何と名付けていいか分からない暗い暗いゆらゆらとした何かが居る。
思い出したくなくて沈めたひとが、居る。
女の敵は女だそうな…。