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残暑の憂鬱。

作者: Dry‐Ice


夏休みももう終盤。



今日も10時頃に起床し、バイトもないこの真の休暇をどう過ごそうか考えてみる。

・・・が、悲しいかな、一緒に過ごしたい人がいない。

恋人どころか思いの人もいない。

友達はいるにはいるが、今誰に会いたいかと考えると誰も浮かばないのだ。

洗濯物を干そうにも窓ガラスから伝わる熱にやる気を一気に溶かされる。

何もしたくない。・・・しかし、腹は減る。

少しそこのコンビニまで歩こうか。



外へ出ると嫌な蒸し暑さで自然といつもより猫背になる。

視線を下に向けると気持ちが悪いほどの蝉の死骸が転がっている。

そういえば蝉時雨はいつの間に止んだのだろう。

夏の始まりを感じさせるあの音はいつ聞こえなくなったのだろう。

よく聞く話だと蝉は何年間も土の中にいてその後一週間しか生きられないらしい。

一週間しか生きられなかったら僕も必死に生きるのだろうか。

もし今の僕が土の中にいるような段階ならあと何年このままで、果たして地上に這い出る日は来るのか。

それとも僕は殻に閉じこもったまま一生を終えるのだろうか。

そう考えていた矢先、少年が自転車で蝉の死骸を轢き潰した。



何処にも日影がない12時前。

優柔不断でコンビニに長居した結果、無難に菓子パンと大きめのサイダーボトルを買った。

温度差で出る水滴が早く帰りたいと心を逸らせる。

渡ろうとしていた信号が点滅し始め、さっきまでは無気力だったのに自然と駆け足になる。

早くあの冷えた部屋に帰って楽になりたい。

もう今日は何もしないぞ。

バイトも課題も家事も全部また明日から頑張る、本当だって。

学生の限りある夏休みの残り時間を刻々と消耗していることを見て見ぬふりをしている。

まあ、人生なんてこんなものだよな。

そういえば、と帰り道の途中で振り返ってみたが、あの潰れた死骸はどのあたりだったか見当もつかない。

・・・蝉の死体なんてその辺何処にでもゴロゴロ転がっているし気に留めるようなものではないのかもしれないけれど。




グラスに氷を入れてサイダーを注ぐ。


しゅわしゅわしゅわ


人魚姫もこんな風に泡になって消えたのかな。


ぱちぱちぱち


ありきたりで何の変哲もない僕はこの先どうなるんだろう。





ぼうっと眺めていたら炭酸は抜けきってしまった。




夏バテしちゃうと心身ともに参ってしまいがちになります。

まだまだ暑い日が続きますので夏の疲れに充分ご注意下さいね。

お読みいただきありがとうございました。

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