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両親について  作者: 冬弥
5/5

入院

 大好きな帰省もせず(体力不足と彼の母にやつれた姿を見せたくないという心情からだろうと推測)初詣にも行かない父の正月休みは過ぎ去り、これからお世話になる先生との二度目の診察の日になった。


 渋る父を母が説得しタクシーで出発。(この状態で公共交通機関利用って馬鹿だろうと思った私の心の声は、母とシンクロしていたに違いない)

 診察時には得々と仕事について語る父(如何に仕事が大事か、どの日程で会議があるか)とそれを呆れた目で見遣る母と私、アルカイックスマイルで聞き流す医師が揃っていた。

 

 結局入院が決まり、待合室に戻ってから部屋を決める事になったが、意見の相違が発覚した。



「病室の種類が幾つかありまして、うちの科はこちらの階とこのグレードの病室からお選び頂けます」

「大部屋で」と両親。

「この階は現在満室になっておりまして、待機の方も含めて空きが出るのに2カ月程かかる予定です」

「じゃあ、大部屋が空いたら」

「いえ、個室で良いのですぐ入れる部屋の手配をお願いします」

「そんな高い所…」

「待ってたら、どんどん治療を始めるのが遅くなるでしょう?これ以上悪くなったらどうするの!」

返事が出来ない父。

そして病室は、空いている個室の中で一番安い所に決まった。




 入院日、病院に到着すると冊子に書いてあった通りコンシェルジュの方がいた。

好みではないが、良い顔立ちの女性だ。

これから父に振り回されるかと思うと申し訳なさを感じる。


 彼女の案内で病室へ到着する。

冊子で数字だけは見ていたが、広く感じる。少なくともビジネスホテルよりは広い。

 木造の扉、右側には天井まである備え付けの物入れは6カ所に分かれそれぞれに開きが付いている。

その隣に引き出し付きの棚に載せられた大画面のテレビと電話。

パソコンを持ってくれば、ネットも使える。

その前に据えられたゆったり4人座れる対面ソファーと間にある低いテーブル。

扉の対面の壁は全て窓。さすがに一枚造りではない。

最奥にベッド。大部屋のベッドには無かった気がするが、リモコン付きで体を起こすのも横になるのも楽そうだ。

高さ調整も出来る。

右側に小さな冷蔵庫、左側にどの病室にもある小さな物入れ。

扉の左側にはもう一つ扉があり、開けると手前に簡素なキッチン(電気コンロ付き)、奥の扉にはトイレと洗面台とシャワールームで、歯磨きセットとシャンプーセット、タオル類が置かれていた。

部屋の雰囲気はどうやっても病室だが、備品を抜き出せばホテルにしかならない。

「広いですね、ホテルみたいだ」

愛想笑いで告げながらコンシェルジュさんに部屋の説明を受ける父、荷物をそれぞれの棚に片付ける母、室内探索の途中で母に呼ばれて手伝う私。


 落ち着くと入院手続きに移行し、コンシェルジュさんが退室し、看護師さんが来た。

これから簡単な検査をして治療に入るらしい。

 母も一緒に居る予定だったが、体調不良を申告して先に帰った。

仏頂面で早く帰れという父を看護師さんがどう感じたかは知らない。

 夕方、医師より治療説明があったので母の代わりに同席した。

点滴を含む5種類以上の投薬治療、サイクル、使う薬の内容や同意書、食事も含む注意事項。

放射能を忌避している父に、投薬治療のみなのは朗報だろう。


 母は3日後に床上げをした。出来る手伝いはした。

みる必要のある家人は、入院に合わせて預かって貰ったからどうにかなったのが正直な所だ。

ストレスと過労が原因なのは、母と私と医師の共通認識だ。

入院が決まり気が緩んで、それが症状として出たのだろう。


 こうして、入院と治療が始まった。

放置していて申し訳ありません。

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