彼の休日
父は月に一度、泊まりがけで外出していた。
少なくとも10年以上は続いていたのではないだろうか。
大きく崩れた体調がまだ戻っていないので、やっと記録が止まった位だ。
母が寝込んでいても、他の家族の看病をしていても、それを尻目にいそいそと出掛ける。
行き先はいつも同じ、彼の生家に行き親と墓参りをして帰ってくる。
時々キレた母が『誰があなたの家族なのよ!』『生きてる人間より墓参りが大事なの?』と本人がいない所で怒っていた。(目の前で言うと逆ギレして怒鳴るので言えない)
『行かないでって言ったら?』と提案した事があるが、以前試したら通常仕様に輪をかけて不機嫌になり、無意識に八つ当たりをされたので懲りたそうだ。
行く事だけだはなく、こちらでは聞かない上機嫌の声の電話や、祖母への様子伺いの電話で全く手伝わない掃除や片付けをあちらではしているのが分かるから腹立たしさが募るのだろうな。
私が聞いていないだけでまだエピソードがあるだろうし。
そして帰ってくると仏頂面のデフォ顔になって『ありがとう』を言わないからまた母がイライラする。
最低限の食事マナーと一緒に『ありがとう、ごめんなさい』も仕込めば良かったのにとか、いい加減期待するの止めたらとか言いはするが中々子どもの声は聞こえないようだ。
因みにごく最近父の『盆や正月だけ特別視するのは阿呆らしい』というポリシーを初めて聞いた。
それが恐らく毎月墓参りに繋がるのだろうな。
『阿呆はそっちだろう』と言わずに済ませた虚脱感を思い出した。
コミュ障よりもコミュ拒否の方が面倒だし、外面に感心するよ。