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去勢された未来  作者: かなえる
7/17

恐怖

恐怖は大切なものである。

唯 「私のこと何も知らないあんたに 何で、こんな酷いことを言われないといけないんだよ」


唯 「うーーん、頭が痛い」


どうやら、悪夢でうなされている 唯だった。

だんだん、酷くなっている気がする。


舞は、心配になって、

唯の布団を上の方までかぶせて、

頭をなでなでしてあげたのだった。

そうすると寝息をたてて、すやすやと悪夢から開放されたようだった。



その時である。

昆虫の羽音が聞こえてきたのである。


それは聞き覚えのある 羽音だった。

そうゴキブリの羽音だ、と舞は思った。


英語で コッコローチ

長崎弁で、くろんず


普通の女性なら、「くろんず怖い」とかいって、

恐怖のあまり逃げ出すだろう。


恐怖は、人間にとって必要なものである。

恐怖があるから、家の戸締りもするし、

悪いやつがいるところには、近づかないし、

蛇とか命の危険があるものからは、逃げるし、

病気にならないように 用心したり、

危険にならないように 注意もする。


恐怖さまさまである。



だけど、ゲームとか 命の危険のないゴキブリとかから

恐怖で 逃げる必要はないのである。


危険がないときに

恐怖を克服する方法の一つは、{どうでもいいや}と思うことである。


ゲームなら、ゲームに負けてもいいやと思って

全力を出そうとすれば、ゲームに集中できて、力を発揮できるのである。



ゴキブリに襲われてもいいや、命の危険はないし

と舞は心で、唱えた。


恐怖を克服した舞は、前とは、違った。


舞は、ゴキブリの天敵になってしまったのである。


舞は、

いつも ゴキブリをみつけると 鷲づかみして、ポイするのである。

お腹が空いた時には、食べようとしたときもある。(食べなかったけど)



岩手県で にっしょこ

標準語で、豆電球 と呼ばれる


LEDライトだけがついた 薄明かりの部屋の中


舞は、近くにあった雑誌で

近づいてくる 羽音を力いっぱい 叩き落したのである。


ちゃんと手ごたえがあった。

我ながら、お見事である。


こんなときは、

自分を好きだと 繰り返し 心の中で唱えると

自分を好きになれるらしい。


さっそく

明かりをつけて、叩き落した獲物を確認する舞だった。


???


ゴキブリにしては 色が黒っぽいけど。

どうやら、

舞が叩き落した昆虫は、クワガタのようである。


少しピクピクしているけど

どうやらあまり動けないらしい。


無理もない 力いっぱい叩き落したのだから。


なんで、こんなところに クワガタが・・・。

まさか、唯が、大事に飼っているクワガタではないのか?


恐る恐る 唯の飼育ケースを確認すると

案の定、クワガタがいなくなっているのである。


どうしよう?


困った舞は、瀕死の クワガタを そっと飼育ケースに戻したのである。


恐怖を無くしても慎重さを失ったら、失敗するのである。

後悔する舞だった。


明日、唯に気づかれないうちに

別のクワガタを買ってきて、戻したら ばれないだろう。


それまで、瀕死のクワガタは、

寝ていると思わせればいい。



翌日、さっそくクワガタを買いにいった舞だった。

少し大きさは違うけど、

似たクワガタをゲットして 急いで家に戻った舞だった。


どうやら、まだ気づかれていないようである。


死んだクワガタを新しいクワガタと交換して

何事もなかったように 振舞った 舞だった。



だがしかし、

夕食のあとの唯の様子が変である。

妙に無口で、物を動かすときに バンバンと大きな音をたてるのである。


イライラしているようである。


怖い、なんだか、今日の唯は、怖い。

そう感じた舞だった。


そんなときは、いつもトイレに逃げ込む 舞である。


唯 「何か言うことあるでしょ?」


唯がトイレの前にきて、問い詰めてきた。


舞 「何のこと?」


とぼける舞である。


唯 「じゃ、聞くけど、昆虫って、小さくなることある?」


舞 「あるんじゃない、人間だって ダイエットしたらやせるし」


唯 「じゃ、ノコギリクワガタが、ミヤマクワガタになるなんてことある?」


舞 「突然変異したんじゃない?」


唯 「じゃ、死んだクワガタが生き返るなんてことある?」


どうやら、ばれていたようである。


舞 「ごめんなさい」



唯 「出てきなさい!」


舞 「嫌、ぜったい嫌」


唯 「いいからでてきて」


舞 「怖いから嫌」


唯 「本当に 怒るよ」


舞 「怒るから、怖いんだよ」


唯 「こっちは、漏れそうなんだよ」


ガチャ、ようやくトイレから出てきた舞である。


唯 「膀胱炎になったら、あんたのせいだからね」


まだ怒っているようである。


触らぬ、唯にたたりなし。


怒りが収まるまで、そっとしておいたほうが、良さそうである。


恐怖を克服する方法を知っていても

唯が怒ったら、怖いのである。

怖いものは、怖いのである。



でも死の恐怖とか、

どうにもできないことは、受け入れ、前向きに生きていけるよう

恐怖を克服したほうがいいのである。



でも恐怖がわからないのは、ただの馬鹿人間である。


恐怖を主体的に受け入れ、

危険は、恐怖で回避して

危険でない恐怖は、いろんな方法で、克服して、己をうまくコントロールするのである。


そして人生をよりよいものにしていく、

それは、経験のなせる生き様なのである。


恐怖をコントロールできたら、人生をよりよく生きられるのである。

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