〜恋の病はツライ〜
スマホからの投稿ですので、見難い箇所ありましたら申し訳ありません。
何事かとシルヴィアちゃんと2人、ロビーホールに降りてみればそこにいたのは兄貴と件の人、ディアッカさんだった。
「シオン様シオン様!一体いつお話を進めて下さるの!?」
「はなし?!進める!?何の事ですか、さっきからこちらも全く話が通じなくて参っているのですがっ」
「んもう!結婚前のカップルは諍いが生じやすいというのは本当ですのね!」
「ちょっと待て!けっこんって何のことだ!?」
兄貴は最終的に丁寧な態度と言葉をかなぐり捨て、素に戻っているようだった。
「何かしらあの方は。また勝手にいらして勝手な事をおっしゃって……というかおにいさま全然お断れていないじゃありませんの……っ!」
「お、落ち着いてシルヴィアちゃん。何だろう、何2人で喧嘩してるのかな?」
しばらく言い合う2人の様子をこそこそと覗き見ていたのだが。
シルヴィアちゃんはシルヴィアちゃんで何故か柱の影でギリギリと歯噛みしている。
ーーその時だった。
「でもでも良いんですのよ、困難を2人で乗り越えてこそ愛と絆が深まるというもの……っ!!」
「ディアッカ嬢!?」
ディアッカさんが兄貴にガバッと大胆にも抱きついたのだった。
「コミュニケーションは大事ですわ、シオン様。すれ違いが生じてしまいますもの。ちゃんとこのように密に取らなければ」
ディアッカさんは「うふふ」と兄貴の胸板に頬を寄せて愛らしく微笑む。
兄貴は突然の事に驚いたのだろうか。岩のようにビシッと固まって動かないままでいた。
その行為をシルヴィアちゃんは「まぁ!何てはしたない!!」と憤り、私の手をぐいっと引っ張る。
「おねえさま私達も行きましょう!大体おかしいですわ。軍人のおにいさまがあの攻撃を避けられないだなんて!絶対ラッキースケベを狙っているに決まって……おねえさま?」
シルヴィアちゃんは一体どっちの何に怒っているのかよく分からない。分からないが、腕を引っ張られ促されても私は立つことが出来ないでいた。
2つの影が重なったその光景があまりにも衝撃的過ぎて。
「シルヴィアちゃん……、私、どうしよう。行けないよ。だって、あんな仲良さそうに抱き合う2人を見てたら、なんか、立てなくなっちゃっ……」
恋人同士のハグ?
そりゃそうだ。2人は恋人だったんだ。
兄貴ときたら恋人がいても、ちっとも浮かれたところを見せなくて。だからいつもと何も変わらなくて。
だからだからどこか私は。……私だけがずっと実感を持てていなかっただけで。
ーー『その男性は恋人に愛を囁いたりキスをしたり。もしくはそれ以上のことも……』
『その恋人の女性に嫉妬せずに2人の幸せを心の底から願えるのでは無いでしょうか』
ーー願えない。願えないよ。
抱き合う2人を見ているだけでこんなに苦しいなんて。
大粒の涙がボロッとこぼれてしまった。
それを見たシルヴィアちゃんは困ったように笑った。慈愛に満ちたような聖女のよう。
「そうなんですの。いつも元気で強い女性でも、恋をするとそんな風に気弱で臆病な女の子になってしまうんですのね。何だかおかしくて……ふふ、とても可愛いですわ。おねえさま」
「シルヴィアちゃ……」
白いレースのハンカチで私の涙をそっと拭いてくれた。
「でも他に奪られたくないのなら立ち上がらなければ。ねぇおねえさま。恋をしているそのお友達にもぜひ伝えて下さいな。……大好きなだけでは、想っているだけでは……綺麗なお月様を地上でぼんやり眺めているのと同じですわよ、と……」
「見ているだけでは落っこちて来ないのに……」と苦笑混じりにため息をひとつ。コツンと私のおでこにおでこを合わせる。
優しく私の頬を手の平で包み込んだ。
「今回は可愛いおねえさまの代わりに私が戦いますわ。代理戦です。……でも今回だけですのよ」
そう言ってレースとドレープのたっぷり装飾されたスカートを翻して、シルヴィアちゃんは行ってしまったのだった。
短めですが次話は視点変える予定ですので一旦切ります。




