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令嬢は生きるのがツライ  作者: 今谷香菜
~シャダーン編Ⅲ 竜との約束~
68/85

~託された想いを知ってツライ~

連日更新祭り第5弾

******


ルークの背に乗って移動して。どれくらい経っただろうか。

実際はそんなに時間が経っていないのかもしれない。


でも私はシャダーンを離れることに後ろ髪を引かれる想いでいて。


それでいて、別の部分では。

……早く離れたくて仕方がなかった。


この時の自分は疲弊しきっていた。精神が焼き切れているんじゃないかというくらい。

何かを想う事も考えることも辛かった。


限界だったのだ。精神的にも体力的にも。


既に時間間隔もまともな判断能力も手放している。


前を向いて飛んでいたルークはそっと首をこちらに捻る。


『母上。大丈夫?』


しがみつく力が弱くなったことを察したのだろう。

心配そうな声音に私は何だか申し訳ない気持ちになってしまうけれど。


声を出すのも億劫だった。


『一旦降りて馬車でも手配しようか。流石にこのままサイラス入りは……』


彼が全てを言い終わるのを聞けず。


私は彼の背に寝そべるように寄りかかる。


『! 母上ったら。落ちるよ、もう。……咥えて移動した方がいいかな?』


彼の焦った声が聞こえていたけれど。眠りたくて仕方がない。

落ちる心配がないのなら咥えてくれてもいい。異存はない。


彼はため息をしつつ。


『今度はしっかりやってよ。随分無茶をしてシャダーンから切り離したんだ。あんたもそれ相応の働きをしてくれなきゃ許さないから』


「……?」


どういう意味?それは誰に言っているんだろう。


遠のく意識の中で。


彼のむっつりとした声を聞いた。



――『ちゃんと箱に収めておいてよ』と。



**************

*******



ザパザパと黒い水が湛えられた海なのか。暗渠なのか。

私は波打ち際で倒れていた。波打ち際……やはり海だろうか。


ぎゅっぎゅっと砂を踏みしめてこちらに歩く人の。

その足をぼんやりと視界に入れながら、私は声を出すこともなく。うつ伏せ状態だ。


砂埃にまみれた革靴ローファー

紺のハイソックスには校章が刺繍されている。


目の前に立っている人物の。その小さな足は女性のものだろう。


「怒られちゃったわ。あなたの息子に。……良い子を持ったわね、オリヴィア」


私の名前を何故か知っているその人の声は少女のもの。

かがみ込み、私の脇に手を差し入れると。重力を感じさせぬ動きで身体を持ち上げ抱き上げた。


そのまま一緒に黒い水の中へ。


「ごめんね、オリヴィア。『彼』を箱に閉じ込めるわ。そして私がその箱を上から押さえておく。もうあなたが昔の記憶に翻弄されることがないように」


彼女は私の髪を撫でながら、ざぷざぷと水をかき分け奥へ進む。

「でもね……」と少女は言う。


「勇太も『彼』も。悪気はなかったのよ。あなたの身体を乗っ取ってやろうとか、そういうつもりはなかったの。結果的にあなたにはとても怖い思いをさせてしまったけど……」


そうして目的の場所にまで来たのだろう。

彼女は立ち止る。私を抱えながら。


黒い影の人達が出てこない……。この子がいるからだろうか。

何の根拠もないけれど、そう思ってしまう何かが彼女にあった。不思議な雰囲気の子だ。


ぼーっと彼女のセーラー服のリボンの色を見つめていた。臙脂色のリボン。

リボンにかかるまで伸ばされた髪は三つ編みにされている。


どうしてこの少女は。前世の彼に馴染み深い服を着ているのだろう。


「このまま箱に閉じ込めるだけでは、きっとあなたは怖いままでしょう?だから彼らと話をしてみてほしいの。勇太の……いえ彼らがどうやって生きて、何を想って死んでいったのか。あなたが思い出した断片だけのものではない、それを知ってほしいの。……きっとこれは私のワガママなんでしょうね」


私の名前だけではない。前世の彼の名前を知っている。


「あなたは……だれ?どうして勇太を知っているんだ?」


「誰が忘れても私は勇太を覚えているわ、ずっと」


あなたは誰、という問いには答えないで。彼女は寂しそうに笑った……気がした。

顔がよく見えないので確かじゃないけれど。


「誰が忘れても?」


「ええ、そう。私にはそれができるから」


それは何だか寂しい響きだ。この人だけが取り残されているような気がして。


彼女はゆっくりと私の身体を水に横たえる。


「道を示すから。会って話してきて」


そうして黒い水の中に沈めるように、胸を優しく押された。


どうしてだろう。沈められようとしているのに。全く恐怖がなかった。


やはりまともな判断ができる状態じゃないのだろうか。今の私は。


水に沈める瞬間、彼女は言った。


――「愛しているわ」と。


「え?」と聞き返したかったが、既に顔は水の中。

こぽぽ……と泡が出るだけだった。


「生きている間は言えなかった。後悔したわ。……例えあなたが私を忘れてしまっても。私はあなたを……」


――愛してる。


黒い水越しに目が合ったような気がした。

透明度が低い水の中でのことで。こちらも確証は得ない。


けれど。


分厚いメガネの中の一重の目を細めて。

その少女らしい華奢な輪郭が。小さな唇が動いた気がしたのだ。

それだけで何故だろう。何故か泣けてくる。



――いつだって誇らしい。かつて私の弟だったあなた。



水音でかき消されるように呟かれた言葉を。


私は頭で上手く処理できなくて。もう一度言ってもらいたくて。


腕を水上に伸ばしてみたけれど、もう手も届かなかった。



*************

*******



暗い水底にゆっくりと沈む。

黒い水面がどんどん遠ざかる。私の身長の何倍もの深さまで落ちただろうか。

身体が鉛を飲み込んだように重くて。


ゆっくりゆっくりと落ちていく――その感覚に抗えない。

でも不思議と息苦しさがなかった。


音もない世界。


黒い水も。

全身浸かってしまえば。何故だか知らないけど妙に心地よくて。

ゆるゆると瞼を閉じて身を任せていれば。


その静寂を打ち破るかのように、音が鼓膜に届いた。


――よっ、元気か? と。


水の中なのに?


それが人の声らしきものだと認識するのに少し時間がかかった。


ぱちりと目を開けると。


逆さまの顔で覗き込んでいる彼と目があった。

私か彼か。どちらが上下逆なのか定かではないけれど。


――我が魂の妹よ、久しぶり


そう言って黒い水の中でやけにはっきりと見える、懐かしいかつての自分は笑った。


✳︎✳︎✳︎


「鈴木勇太……何故?」


彼の名を唱えた途端、黒一色の景色は一変した。

ドサッとどこかの空間に落とされたと思ったら、そこは赤い絨毯が敷かれたひとつの部屋だった。

暖炉には温かなオレンジ色の炎が揺蕩たゆたう。


「ここは……?」


「オッサンと俺の『箱』だ」


鈴木勇太は床にへたり込んでいる私に手を貸し立たせた。


「オッサン……って?」


「俺とおまえの兄さんみたいなもんだ」


お兄さん?何だそれ。

急な展開に頭がついていけない。


「……私は。夢を見ているのか?」


彼は笑って「どうだと思う?」と。質問に質問を返された。

私の手を引き、部屋の奥に備えられた応接セットへ。


フカフカの椅子に身を沈める。

正面に同じく腰を下ろした彼は私の顔をまじまじと見つめ、うむ、と頷く。


「やっぱりオリヴィアは美人だな」


「……自画自賛も過ぎるよ。目もつり目気味で、鼻も低いし。キツイ顔してるし。おまけにガリガリのチビで。全然美人でも可愛くもないよ」


「そうかぁ?同じ魂で出来ているとは思えない位、美人だぞ。この魂史上最高の出来だと思うんだけどな。コンプレックスってのは尽きないわなぁ」


「特に女の子はなぁ」とそう言って彼は、スポーツ刈りの黒髪をわしゃわしゃ掻いた。

その間も彼は私をじいっと見つめつつ。


「イヤイヤしかし……。マジで俺は生まれる世界を間違えたわ。あと性別も。こんな美人に生まれるならなぁ」


「はぁ……」


ブルーの作業着に身を包んだ彼であったが、この豪奢な部屋の雰囲気に何故だかしっくりと溶け込んでいた。


「……不思議だ。私たちは融合してひとつになったはずなのに、こうやって会話できるなんて」


以前はこういった話し相手はオリヴィアだった。女性性の象徴である自分。


やはりこれは夢なんだろうか。


彼は何か含むような言い方で「そうだなぁ…」と呟く。


「確かにおまえと俺は融合したと言えると思うが。じゃあここにいる俺はなんだと思う?」


「それは私が聞きたいところだ。夢でないのならあんたは一体誰だ」


「鈴木勇太だよ。この魂に住まう」


「だから、どうして……」


あんたは私と融合したはずなのに。なぜこうやって別人格のように姿を見せるんだ。

彼は唸りつつ。


「うーん、俺は絞りカスみたいなもんかな」


「絞り…カス?」


「いや?それとも今、おまえの中にある俺が絞りカスなのかな?」


「どういうことだ?」


さっぱり意味が分からない。

私の頭にはクエスチョンマークが飛び交っている状態で。


彼はえーと……と、分かりやすい説明をしようと頭の中を整理しているようだ。


「おまえは俺の記憶を思い出し、なんだかんだで俺と融合を果たした」


「う、うん」


「前世の記憶と人格に一時引っ張られたおまえだったが。今世で生きていれば、今世の記憶、体験、知識が上回るはずだ。要は前世のことなんて今生きてれば上書きされて少しずつ忘れていくもんさ」


「少しずつ…忘れて…」


「そ。人間なんてそんなもんだろ?前世はおろか、幼い頃の記憶だって曖昧になっていく」


「それはそうだけど」


いつだって覚えているわけじゃない。

人間は忘れる生き物だ。


「だろ?まして前世の記憶なんて。2人分の人生を思い出し、それをずっと保持していく程キャパはないんだよ。狂っちまう。だから今生きているおまえの記憶、人格が優先されるに決まってる。生きていりゃ今後もおまえの中から俺は抜けていく。そうやっておまえから抜けていった前世の記憶と人格がかき集められたのが、この俺。絞りカスってのはそーゆー意味」


勇太は得意げに「アーユー・アンダスタン?」と。


椅子に座って手をブラブラさせる彼。足も組み直す。……格好つけてるな。


英検5級だったくせに。恐らく文法的には間違えている。


って……んん?


「ちょっと待てよ。私の中の勇太が抜けて、その寄せ集めが今ここにいるおまえなんだろ?」


「そういうこった。ザッツ・ラ~イト!」


……こいつ。返答がいちいち鼻につくな。繰り返すようだが彼は英検5級である。履歴書の資格欄にいっそ書かない方が良いレベルだ。


私同様、お調子者なのはよく存じておりますが。


しかし今はそんなことどうでもいい。


「え。勇太が抜けていっているのに。私全然女らしくないんだけど」


な ぜ だ 


こ、これはおかしくないか?


私の愕然としている様子に。勇太は呆れたようだ。「そんなん知るか」と。


「確かに俺の記憶かこを思い出して多少は性格に影響が出たんだろうが。あくまで多少だと思うぞ。もう結構、おまえの中の俺、抜けてるし」


「ええ~~!!?」


ナンダッテー!!??


え?え?多少って。多少ってことはだよ、私元から大体はこんな残念な感じってこと?

そ、そうだっけ??


ふと思い出すのは勇太と融合する前に対話をした、もうひとりの自分。


「そ、そうだよ。あの『オリヴィア』はまだもうちょっとマトモだった……はず」


女子として。あの子はどこに行っちゃったんだ!?


勇太は眉を寄せる。


「それっておまえの女性性の象徴の『オリヴィア』だろ?おまえの中の『女らしさ』を一手に引き受けていた人格なんだから。多少は女らしいだろ。でなきゃおかしい」


「う……」


「女性性を司る『オリヴィア』もおまえの中にいる。で。『勇太』の俺はどんどんおまえから抜けていく。……今のおまえはむしろ生来の性格に近いんじゃないか?」


えええええ―――!!!衝撃の事実ッ!!


自分が貴族のお嬢様としてトンデモ物件なのは自覚している。一応。


しかしそれらは全て「勇太ぜんせの所為だよね☆てへぺろ」と甘えていた部分も……。多少に。いや、大いにあった。


勇太は人の悪い笑みで。ニヤリと笑う。

恐らく私の考えていることなんてお見通しなんだろう。


「これでおまえは俺の所為になんてもうできないぞ。おまえが女らしくないのも。ガサツなのも。お転婆なのも!これからはみーんなおまえの所為なんだからな!」


「う……」


「ついでに鈍感なのも、アホなのも、チチが貧しいのも、ぜーんぶおまえの責任だ。俺は知らないね」


「ううう……ひんにゅ……胸は関係ないぃぃ」


くそう、とこれまたお嬢様らしくなく私は吐き捨てる。

彼の妙に勝ち誇った笑みが憎らしい。


えーと。つまりはだよ。

つまり……あれ?


「私がモテないのは……あんたの童貞の呪いの所為じゃないのか……ッ!?」


彼は目を剥いて驚く。


「そんなことまで俺の所為にしていたのか!?冗談じゃねえぞ!」


「だって……」


例えば。モテ男のミラが生まれ変わったとして。

来世でもあいつモテそうじゃないか。どっちの性別に生まれ変わっても。


『モテ男は来世でもモテる説』である。

立証は出来ないが……、なんか変な自信があるんだよな。


あいつは来世でも。どこに生まれてもモテまくりだ。うん。


その逆もしかり、ではあるまいか?と。


私としてはだよ。勇太のそんな『非モテ根性』が魂に染みついているもんだと思っていたのに。


まさかこの説まで覆されるとは……!!くぅ……結構有力説だったのにッ!!


私がまだ疑いの目で勇太を見ているのに。

彼は心証を悪くしたようだ。まぁそりゃそうでしょうね。


ええ。これも前世男だったことを思い出したモジョの言い訳もとい甘えデスヨ。

分かってるさ、ホントは。ちぇっ。


彼は「大体なぁ」と後頭部を撫でつつ、ため息をつく。

じとーっと私をねめつけながら。恨みがましい目つきだ。


「……おまえがモテないだなんて言わせないぞ。本当にモテない非リアの辛さがおまえに分かるもんかっ」


何故かそんな風に決めつけでモノを言う。


でも彼の気持ちが分からないだなんて。そっちこそ、そんなこと言わせない。


「何言ってんだ、あんたの気持ちは痛いほど分かっているつもりだぞ。言っただろ?私だってモテないんだからな!!」


胸を張り断言をした私に。


ストイックにその生を童貞として貫き通したプロフェッショナルな彼は。


「なんだとー!んなワケあるか!!」と。


ガターンと勢いよく立ち上がる。


私もそれにつられて「ある!そんなことあるぞ!!」とガターンと立ち上がる。


お互い沸点が低い。すぐにカッとなる性格だ。


指をビシッと指して彼は『いかに前世俺がモテなかったのか』を唐突に語り出す。


「いいか、自慢じゃないがな。俺はおまえと違って本っ当にモテなかったんだぞ!20歳ハタチで死ななかったら絶っ対、魔法使いになっていたからな。違いないね!」


……だから『おまえと違って』って。私だってモテないって主張しているのに。


だが、そんなことよりも。


「異議あり!そんなの分からないだろ!?生きていたら魔法使える歳になる前に童貞卒業……」


彼は私が言い終わらないうちに「ないね!」ときっぱり断言した。


「『ハジメテ』はカワイイ彼女かエロい人妻に手ほどきを受けたかったんだ!でもその『カノジョ』も『エロい人妻』もハイファンタジーの存在だったんだよ!!日常生活で全く出会える気がしなかったね!」


彼の性的嗜好のひとつに。『人妻モノ』の趣味があるのは……まぁ知っていた。

というかこいつの守備範囲は広かった気がする。投げられた球全てストライクゾーン的な。

あくまで『おっとり巨乳』好きではあったが。


……ミラとは正反対である。


うん。今はそこにツッコミは入れない。入れないけど。


「なーにがハイファンタジーだ!!『エロい人妻』はともかく!『カノジョ』だったら合コンとかいっぱい誘ってもらっただろ!おまえ男友達は多かったじゃないかっ!」


可愛い女の子との出会いの場がなかったとは言わせない。

出会いはお節介な友人たちにより、ちょくちょくあったはずだ。


「ああそうでしたネ!合コンはそりゃたくさん行かせていただきましたともっ!お陰様でねっ」


「そうだな!ほらな出会いはそこらにあったろ?女は伝説の生き物ファンタジーじゃなかっただろ!?」


「出会いがあってもカノジョができなかったってことは、もうこれは本当に純粋に本格的に俺がモテなかっただけって結論でよろしいですかね!?もうヤダ……ほらやっぱコレ超お察し案件じゃん!」


「……た、たしかに」


何も言えぬ。ぐうの音も出ない。


彼は両手で顔を覆い、「結局俺がモテなかったの再確認しただけじゃん……」としくしくと打ちひしがれている。


「ゆ、勇太……なんかごめん」


何だか悪いことをした。


私はぽん、と彼の肩を叩いて謝った。

何に対して謝罪すべきなのか分からないが、とりあえず謝った。


「で、でもほら。おまえは確かにモテなかったかもしれないが。私も同じだぞ?気持ちは同じだ」


結局振り出しに戻るが。


私は彼を慰めがてら、最初から一貫している自己主張をしておいた。


聞いているのか、聞いていないのか。

しかしその肩がぶるぶると震え始める。


「勇太……?」


「……みたいな」


「え?」


何だ、よく聞こえなかったぞ。


「おまえみたいなリアル逆ハー娘に!俺の辛苦が分かってたまるかぁぁ――!!!」


ここにちゃぶ台があったら、ガッシャーンとひっくり返されていただろう。

魂の叫びである。まさしく。彼の見開かれた瞳から血涙を流しそうな勢いだ。


「はあああ???逆ハー!?」


「この行く先々で男引っ掛けるナチュラルボーン・ビッチが。なんで同じ魂のおまえによってここまで傷口ぜんせに塩を塗られなきゃならないんだよっ。ちょー惨めじゃん、俺!ちょーカワイソウ!!魂史上ここまでモテなかったのって何でか俺だけだしッ!!」


私は頭を抱えた。

正直勇太のいう事は何から何まで見当違いだ。何言ってるのかわけが分からない。


童貞こじらせると被害妄想まで激しくなるのか?


「勇太、おまえなぁ。逆ハーとかビッチって。それこそ何言ってんだ。言っとくけど私だって今世かなりモジョってるんだから。しかしこれから婚活という名の、人生において出口の見えない暗いトンネルの中を歩かなければならないんだからな!」


ビッチなんてとんでもない。

結婚を前提としたお付き合いをしてくれる男性を大真面目に探さなければいけないのだ。これから。

私は身持ちの固さには自信があるぞ。もはや自信しかない。


しかし。


「はぁ~~?こんかつぅぅ??」


彼は素っ頓狂な声を上げただけだった。


その、「あんた頭おかしいんですか」みたいな言い方にまたしても私はムカついた……のだがやり過ごす。

大人になるんだ、私。


「そうだぞ。息子ルークにはやはり男親も必要だしなっ!でも全く結婚できる気がしないんだぞ!!モジョが婚活だなんて無理ゲーすぎるだろ!!」


「だからっおまえなんてイケメンが周りに腐る程沸いてる状態だろうが!なんでそこからして。そんな状態でまた婚活する必要があるんだよっバカか!贅沢言ってないでその中から選べ!!」


これにはカチンときた。

『選ぶ』だなんて。それこそ上から目線の贅沢発言だ。


「確かに周りにイケメンは多いけどな!兄貴は兄貴だし、ミラは友達だし、ルークは息子だ!あとセスは……うんまぁ?……セスだからなっ!!」


仮に私が『あなたを選びました!』なんて一方的に通知したところで。

上記良い感じに私との関係をそれぞれ築いてる彼ら(セスはまぁ…、セスだしな?)は戸惑ってしまうに違いない。


勇太は頭を抱えた。


「うわぁぁ~!!もうほんっとイヤ!何でこんなにこいつアホなんだろ。いっそホラーだわっ!こわー」


「アホって言う方がアホなんだぞ!おまえも同じ魂なんだからなっ!!」


そうしてギャースカとふたりで喚き散らす。


冷静に考えれば。何ともアホらしい光景だ。



なんで同じ魂の人間同士でこんな低レベルな争いをしなければ……。


――イヤ、そうか。同じ魂の人間同士だから争いも低レベルなんだ。


……納得である。





この作品『TS』タグを→『一時的TS』or『TS?』or『TS要素あり』に変更しよう思います。

何だか完全な『TS』作品でもないでしょうし。。。

もはや何を指して『TS(性転換)』なのか……??定義が難しいですね。



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