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令嬢は生きるのがツライ  作者: 今谷香菜
~シャダーン編Ⅲ 竜との約束~
54/85

~ショッピングに夢中になりすぎてツライ~

ツッコミどころ満載過ぎて、そもそもが申し訳ない。

お茶会の後、ミラから外出許可を貰ったので早速出掛けることにした。


ついでに心配だからとアイサと他複数の護衛をつけられ、街に繰り出した私達。


目的は勿論、ミラのプレゼントである。


「オリヴィア様、殿下のプレゼント選び、喜んでいただけるよう私最善を尽くしますから!」


何故かアイサは私以上に気合が入っている。


「僕も男心とかなら多少分かりますからねぇ~。協力は惜しみませんよぉ」


と、これはゆるふわ茶髪門番の彼だ。

街に繰り出そうとしたら『僕も護衛としてお供しますぅ~』と言うもんだから、ついて来てもらった。


「頼りにしているよ、ふたりとも」


「ところで。何かお目当てはあるんですかぁ?」


ゆるふわ茶髪の彼に問われて私は頷く。

ここに来るまでにちょっと考えて目星をつけていたのだ。


「ミラは最近疲れているみたいだから。何かリラックスできる癒し系のものか、元気が出るようなものがいいと思うんだ」


ちょっと漠然としているけれど。

『出会った記念の品』という、もっとふわっふわしたコンセプトだしな、元々が。


プレゼントのテーマは具体的に!ちゃんとビシッと決めておかなければな。


これである程度は方向性が定まっただろう。


「リラックスできるモノ……」


「元気が出るモノ……」


アイサと門番の彼はそれぞれ考え込んでいた。


「そう、私としては『青竹踏み』はまず押さえたいところだ」


私はキョロキョロと辺りを見回し、すぐ横の天幕から『青竹踏み』を手に取る。


前にバイトへ行きがてらこの天幕を通りかかった時に、見つけたものだった。いやぁ、その時の感動ったらありませんよ。


前世の彼の家(脱衣所)にあった懐かしのアレがあるなんて!!ってね。


何でもこの国よりもっと東の国からの輸入品らしく、(そも、この国に竹はあるのだろうか?)前世と違いお値段が少々お高めなのが特徴です。


前世でも広く民衆に知られた健康法が、まさか今世でもお目にかかれるとはな。僥倖である。


「「青竹踏み……」」


「これなら忙しいミラでも短時間でリラックスでき、なおかつ健康になれちゃうアイテムだしな。しかもあいつ持ってなさそうだろ?青竹踏み」


「確かに持ってはいらっしゃらないと思いますが……」


アイサはちょっと微妙な顔をしているが、隣にいる門番の彼は「いいっすね!」と親指を立ててらっしゃる。


「絶対ウケますよ!それ!」


「そ、そうかな?」


その『GJ!』と言いたげな満面の笑みに勇気をもらい、私は青竹踏みを購入した。


**********


「青竹踏みだけじゃ足りないと思うから、まだ色々買いたいんだけど。何がイイかな?」


3人で並びながら歩きつつ(ちなみに他の護衛もちゃんと控えてらっしゃる)、私はふたりの意見を聞いた。


「僕、男が元気出るものってこれっきゃないと思うんすよね!」


門番の彼はそう言って突然タタッと駆け出した。

前方にある天幕の前に座り込む。

その迷いのない足取りに、恐らく彼の行きつけのお店だということが伺えた。


彼は「こっちですよぉー」と私達を手招きした。


急かされ私達も天幕を覗き込む。


「これ、何だ?」


売られていたのは、絵だ。

女の人と男の人の。バストアップの姿絵がずらりと並ぶ。


アイサが隣で説明してくれた。


「有名な女優や演技役者とか。あとは街でちょっと評判の看板娘とか。そういう人たちの姿絵ですよ」


つまりはブロマイドってやつだな。なるほど。


茶髪の彼はへらへら笑いながら一枚の姿絵を手に取る。


「僕の今一番の推しメンはこの子なんですよぉ。もう神推しっす」


「……男の人はやっぱこういうの好きだよなぁ」


姿絵の中の美少女はこちらを見て微笑んでいる。確かにカワイイ。


「私の好みはこっちのかなぁ」


おっとり垂れ目の黒目黒髪の女の子。癒し系だ。しかも谷間がくっきりと描かれている。きっとお胸も豊かなのだろう。

どうせ女に生まれ変わるなら私もこういう感じになりたかった……。


「こっちの子はシルヴィアちゃんにちょっと似ているかも」


ふわふわの緩いウェーブがかかった女の子。青いビー玉みたいな瞳は意思がはっきりしていそうな、利発な雰囲気がその子から醸し出されていた。


門番の彼はご満悦の様子だ。


「見ているだけでも楽しいですよねぇ」


「ほんとだな」


前世の『彼』もアイドルだかグラドルの写真集持っていたな。


「確かにカワイイ女の子って、見ているだけで活力が沸いてくるよな」


「そうでしょう?」


茶髪ゆるふわの彼もうんうんと頷く。


「……ミラもこういうのが好きだったりするのかな。あいつに贔屓とかいるのか?」


アイサは慌てたように、


「そんなもの、あるわけないじゃないですか。殿下はオリヴィア様一筋ですから!」


「えー、それはそれでちょっと問題だぞ」


友人一筋なんて重い友情は困る。

彼女ができても、友達ばかりを優先して遊んでいた前世の友人Aはそれが原因でフラれていたしな。


何事も程よく、だ。


むしろ私としては。あいつに彼女もとい恋人ができたらそちらを優先していただいて構わない。

まあその頃には私もさすがに帰国しているだろうけど。


「ふむ。2,3枚買うかな……他に推しメンはいるのか?」


「え?僕の推しメンでいいんですかぁ?」


茶髪ゆるふわの彼はキョトンとした。


「うん。ミラの好みってストライクゾーンがかなり狭いし。今流行りの子を教えて。あいつにはもっと多くのタイプの女性を知ってもらいたいしな」


以前聞いたミラの好きなタイプの女性を思い出す。


……実はあんまり覚えてないのだが。貧乳で寝汚い位しか。しかし他にそれはもう、ものすごーい条件がイロイロとあった気がする。


女の趣味は悪いなこいつ。と思ったことは確かだった。


しかしあんなガッチガチの理想像があったんじゃ、いつまで経っても恋人なんてできやしないし。


矛盾するようだがその一方で。とんでもないタラシの一面があるわけだしな。


自分の理想に見合う女性が中々見つからないからって、いろんな子に声をかけているようだ。

バイトしていた時分に、ナンパ目的でミラが来店したことは記憶に新しい。


きっと今でも兄王子と同じように、街にナンパ目的で忍び歩いているに違いない。


「やはり半分とはいえ血が繋がっていれば似てくるところは似てくるもんだな」


「? 何の話ですか?オリヴィア様」


「いや、こっちの話だ」


でもまぁ。最初こそ私としても、あいつのタラシストな一面を苦々しい気持ちで見ていたのだが。

自分の運命を追い求め探し歩いているのだと思えば、早くイイ娘が見つかるとイイな!と応援したくなる。


あんなハードルというよりむしろ棒高跳びじゃね?的な条件をクリアするような娘さんに出会うには、やはり出会いの絶対数を上げるしか方法はないのだろう。仕方がないといえば仕方がないことだ。

度が過ぎれば窘めてやりたいところだな。


そんな運命に出会う為、日夜努力しているだろう彼の姿勢はよく存じておりますが。さすがにあいつのお眼鏡に叶う女の子を連れてくるなんて、私には至難の業だ。


しかし。


「ブロマイド位なら買ってあげられるしな。あいつもカワイイ子の絵を貰って悪い気はしないはずだ」


何故か門番の彼は感心したようだ。


「へぇぇ。オリヴィア様は人間が良くできた方ですねぇ!殿下が他の女性の絵を持っていてもお怒りにならないだなんて!でも寛容で包容力がある女性っていいですねぇ!」


「ん?そうか??」


私は別にあいつが女の絵を持ってようが、エロ本持ってようが全く咎める気はないのだが。

むしろあいつが持っているエロ本をちょっとだけ見せて欲しい位だ。


……以前部屋を捜索した時は見つからなかったけど。

御本尊は巧妙な場所にお隠れあそばしているとみた。


「オリヴィア様……、これ本当に殿下に差し上げるおつもりですか?」


アイサはおずおずと私に訊ねる。


「うん。まぁタイプの子じゃなかったらゴメンって感じだけど」


「素敵な女性の絵を贈りたいのなら……、オリヴィア様の姿絵を描いていただいて、それを殿下に差し上げたらよろしいのでは?」


「え。なんだそれ。気持ち悪いよ」


「……」


とんでもないナルシストだと思われるじゃないか。私が。

何処の世界に自分のブロマイドを友人に贈りつける奴がいるんだ。



結局。彼から『神推し』『激推し』『推し』の女の子を教えてもらい、私はそれぞれ3人のブロマイドを購入した。


アイサは微妙な顔でその様子を見守っていたような気がする。


*********


前世でプレゼント選びに迷ったならば。


商品券とか図書カードとかをあげておけば、まぁ、妥当というか、及第点は得られたのだろうけど。


「ここでは商品券ってのはないからなぁ」


あるところにはもしかしてあるのかもしれないけれど。少なくとも私は聞いたことがない。


そも。王子に商品券っていかがなものか。


やはり贈り物を選ぶのは難しいな、と思いつつ通りを進んでいると。


前方でこれまた茶髪ゆるふわの彼が、ブンブンと勢いよく手を振っている。


「どうかした?」


「オリヴィア様、このドリンクなんていいんじゃないっすか?」


「ええと、なになに『元気が出るドリンク』――いいなこれ!」


「でしょう!?同僚に聞いたんすよ。効くらしいんすよ、これ」


「ほんとうか!?」


薬草を量り売りしているお店の片隅に。

そんな触書のドリンクが置いてあった。


ぱっとその瓶の中身を凝視する。


薄黄色の液体に鎮座されてらっしゃる蛇と目が合いました。イヤ、合うわけないけど。


「こ、これ……いわゆる……」


マムシ酒。ドリンクというよりも。


「ほ、ほんとうにいいのか?これぇ……」


しかも結構お値段が張る。


茶髪の彼は大きく頷き、力強く拳を握って見せた。


「イロイロ元気がなくて悩んでいた僕の同僚も、これを飲んで自身の自信?を取り戻したそうです!」


「そ、そんなに言うなら……」


「オ、オリヴィア様。これはちょっと!これはちょっと……っ!」


アイサは私の肩に手を置き、ぶるんぶるんと激しく首を振る。

全力で否定されてらっしゃる。そのあまりの必死さと力強さに私もちょっと冷静になる。


「そ、そうだよなぁ。やっぱりこれはちょっと……」


門番の彼は、私の――アイサがすがりついている、反対の肩をポンと叩く。


「オリヴィア様、アイサ様。ダメですよぉ。何事も見かけで判断しては」


「し、しかしだな……」


「良薬は口に苦し、と言うでしょう?クソ不味くて見た目グロテスクなモノ程、体に良いor美味い説があるんですよ~」


た、確かにな……。それは言えてる。


「殿下に元気になってもらいたいんですよねぇ?オリヴィア様。でも恐れながら。貴女様のそんなちょっとした躊躇と偏見が、その大事な機会を殿下から奪うことになっているのかもしれません」


「――!!」


「大丈夫です。僕の同僚が効果・効能を保証しますんで!」


おまえじゃなく同僚が保証するんかい!というツッコミはあったけれど。


「そうだな。何事も試してみなければ分からないよな」


「オ、オリヴィア様……」


アイサはやはりまだ反対のようだ。

瓶に伸ばしかけた手を掴まれた。


「アイサ。普段自分では購入しないようなものを、プレゼントで貰う――……それがやはり一番貰って嬉しいプレゼントだと思うんだ」


「オリヴィア様!それ名言っすね!!」


門番の彼は指笛を鳴らす勢いだ。


「オリヴィア様……でもこれは殿下との『出会った記念品』なんですよね?そんな実用的なものでなくとも。カフスとかタイとかを差し上げれば……」


アイサはそれでも抵抗する。どうもこのマムシ酒は許せないらしい。


「? あいつそんなのいっぱい持っているだろ?ああいう身に着けるものって好みと違うモノ貰ったら困っちゃうだろ?」


しかも彼が持っているものはオシャンティが過ぎる。

私がバイトで貯めたお小遣いで買えるような品物なんて、身に着けるのも恥ずかしくなっちゃいそうだ。

あと絶望的にそういったモノを選ぶセンスが私にはない。


大体そういうのは恋人や奥さんから貰った方が嬉しいだろうし。そちらの方々の役目だよな。


『出会った記念の品』と固く考えずとも。

贈った品で、日頃お世話になっているミラが元気になれればと思う。


「……そう考えればこれは打ってつけの一品だ」


「……」


飲めば元気になるし。

飲まない時はインテリア……もとい魔除けになる……かもしれない。


とにかく。あいつの生活感のない部屋にこれは刺激的なアクセンツになってくれそうだ。



アイサは私の固い決意表明に、もう何も言わなかった。


ミラも言っていたよな。

彼の為を想って選んだものが欲しい、と。


これ以上に彼の為を想って贈るプレゼントはない!……気がする。




というわけで。ひと瓶購入。




***********


――王宮に帰ってリボンとカワイイ包み紙でラッピングをしようと試みる。


「うーん。あともうひと捻り欲しいところだな」


青竹踏み、ブロマイド、マムシ酒……


アイサにはああ言ったけれど……。


『出会いの記念品』ってこんな感じでいいのか。果たして。


イヤイヤ。


今回、男性サイドの意見をかなり取り入れたからな。多分間違ってない。これでいいはずだ。

私の選んだものは青竹踏みだけだ。


正直前世男だったのに、ミラの考えていることなんてさっぱり分かんないし。

昔男だった私の感覚よりも、現役・男の意見。これ以上聞きしに勝るものはないだろう。


私の男としての感性なんてもはや、化石のソレに近いのかもしれない。

今回得てして瑞々しい若者の感性に触れて、目からウロコしか出していない気がする。


――そう。ここは門番の彼のいう事を、全面的に信じてみようじゃないか。


それに私のバイト代で買えるモノなんてこんなもんだしな。タカが知れている。


すると部屋の隅で丸くなって寝ていたルークが私の方へのそりとやって来た。


「ルーク、起こしちゃったか。ごめんな」


私がガサゴソやる音で起きてしまったらしい。


彼は緩く首を振って応える仕草をしつつ、私の手元を覗き込む。


広げてあったプレゼントの品々を見て「んん?」と首を傾げる。


「これらはだな、ミラへのプレゼントだぞ」


「………」


何故か茫然と黙ってしまった。

その赤い瞳が戸惑いで揺れているように見えた。「マジかよ……」と言いたげな瞳だ。


「このマムシ酒が今回の買い物の中で一番の成果なんだぞ。喜んでもらえるかなぁ。是非みんなの前で飲んで貰いたいな」


「………」


ルークはやはり黙って、本日購入したものをぐるりと確かめるように見回していた。

またまた首を傾げるようにして黙り込む。


やはり私の考えていることと同じことを彼も考えいるのかも。


「そうだよなぁ。これだけじゃ物足りないよな?」


何となくリボンで誤魔化せないかと思ったのだが。


でもなあ。青竹踏みとマムシ酒が結構値が張ったんだよ、これでも。


他に何かあげられるモノと言えば……うーん。


――ふと、お茶会の時に肩をしんどそうに揉んでいた彼を思い出した。



「肩たたき券……つけておくか」



ダメ押しで。




********************

****************

********


ルークはガサゴソと部屋で何か作業をする音を聞いて、目を覚ました。


『街へ行ってくるぞ』と意気揚々と出掛けて行った『彼女』がもう帰って来たのだろう。

思ったより早い帰宅である。


(それとも僕が結構寝ちゃってたのかな……)


自分もついて行きたかったのだが、流石にこの姿で街へ行くのは目立つので、大人しく帰りを待つことにしたのだ。護衛も複数いるというし。


(何してるんだろう……?)


自分に背を向けている彼女は、あーでもないこーでもないと床に座って何か作業している。

足元には色とりどりのリボンだ。


のそりと起き上がると、その気配で彼女は振り返る。


「ルーク、起こしちゃったか。ごめんな」


緩く首を振ってそれに応え、手元を覗き込む。


(こ、これは……)


酒瓶に蛇が入っている。その蛇と目が合った。イヤ、合うわけないけど。

不覚にもそれに一瞬ぎょっとしてしまった。


しかし良く良く見るとこの母は、その瓶にカワイイリボンを巻こうとしている最中だ。


水色レース付きの大きなリボンが、大きな口を開けて固まっている蛇の前でゆらゆら揺れている。


(うげっ!き、気色悪っ!!)


絶妙なキモさだ。いっそそんな乙女チックなリボンを付けない方がイイ。ギャップがありすぎて、妙な世界観が構築されている。


「なあ、どの色がイイと思う?ミラは青が好きらしいんだけど、やっぱこの薄黄色の薬酒には赤いリボンの方が映えるよな?」


『ミラは青が好き』って……もしかして。


蛇入り瓶以外にもよくよく見れば、何だか珍妙なモノをその足元に広げていた。


――何かの植物をぶった切った用途が良く分からないモノに、人間の女の絵。


(んん……?)


自分が首を傾げていると。


「これらはだな、ミラへのプレゼントだぞ」


「わぁー……や、やっぱり!」という妙に納得してしまった気持ちと。

「ええー?こ、これが?」という信じられないというか。戸惑いの気持ち。

相反するふたつの気持ちが一瞬にして自分の中に爆誕した。


ちなみに『戸惑い』の方が占める割合が大きい。もう圧倒的だ。


(なんという混沌カオス……)


『ミラは青が好き』という結構重要な情報というかヒントになりそうな話を、ラッピングのリボンにだけ取り入れて活かすなんて。


その発想は逆に新しい。斬新である。流石我が母と言うべきか。

彼女は芸術家並みの、凡人にはおおよそ測り知れぬセンスを持っているようだ。


「このマムシ酒……ミラ飲んでくれるかなぁ。実は今回のプレゼントの中で一番自信があるんだけど」


「見た目がコレだから、ちょっと心配だなぁ」と彼女は瓶を持ち上げ、中に入っている蛇に向かって「なー?」と同意を求めていた。シュールというか怖い絵面だ。


赤地にハートが沢山描かれた可愛らしいリボンが、傾きに合わせさらりと瓶の肌を撫でる。



(リボンの色も、結局赤にしたんだね……)


いつの間に……。


もはや『ミラは青が好き』という情報は、どこに行ったんだ……?クソの役にも立たなくなってしまった。


「うーん。今度のティーパーティで是非、皆の前で飲んで貰うようお願いしてみようかなぁ」


(そ、それなんて罰ゲーム……ッ!)


流石にあの王子が不憫になってきた。

多分彼はこの母のお願いなら無下にできなさそうだし。


というか、これが本日の買い物の中で一番の成果だなんて……


思わず他の品々をもう一度見回す。


(ダメだ、どのプレゼントも母上の意図を汲み取ることができない……)


あの木?のような青い植物を真っ二つにしたものや、女の絵姿も。


一体どんな経緯があって。なにゆえあの王子に買い与えようとしているんだ?


全く分からなくて、首を傾げたまま絶句していると、「だよなぁ」と自分の反応を至極当然、とばかりの態度で彼女はうんうんと、受け止めていた。


「これだけじゃ物足りないよな?」


「……」


ちがう。

論点はそこじゃない。


彼女はうーむとしばらく考え込んだ。


ぽん、と手を叩く。何か閃いたようだ。



「肩たたき券……つけておくか」



(あ。それが一番喜ばれる気がする……)


しかもこの中でそれを見つけると何となくホッとしてしまいそうだ。癒し効果抜群だ。


(しかし……)


彼女が肩たたき券を作成しているのを尻目に、ルークは他の2品の用途をずっと考えていた。



――この母の考えは、これら品々以上に珍妙だなと思いながら。





アイサ:(殿下……申し訳ありません。私の力不足です)


茶髪門番と一緒に買い物をすると、修学旅行で木刀買っちゃうDKになるオリヴィア。

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