~俺の妹が可愛すぎてツライ~
テンプレ作品を一度書いてみたかった…。
あと一人称にもチャレンジしたかった(ときどき3人称)
***
俺の名前は、鈴木勇太20歳…
自動車部品メーカーの工場作業員という平凡な人生を歩んでいた、ついさっきまで。
遠ざかる意識を保とうと俺は必死に考えるーー
ざあざあと風が吹いて、桜の花びらが舞うのが見えた。
視界は一面真っ白だ。
俺は道路のど真ん中で仰向けになっていた。
温かい血がどくどくとアスファルトに流れている。
まるで命が流れ出てるようだ。
その血だまりの上に花びらが落ちる。
キレイだな…。さすが国花。やはり日本の四季は春が一番だ。
視界の隅では俺を撥ねたトラック運転手が慌てふためいている。気の毒な位顔が真っ青だ。
おっさん、ごめんよ。
俺が赤信号を無視して道路を横断したから悪いんだ。おっさんは悪くない。
夜勤明けでぼーっとしていたらしい。
歩行者信号が赤なのに気づかずそのままフラフラと道路を渡って…この状態なう。
遠くでサイレンの音が聞こえた。誰かが救急車を呼んでくれたのだろう。
あーでもこれ間に合わないよなぁ。
もうどこから血が出ているのかも分からない。それにこれ以上ないってくらいに血を流した自信がある。
あと痛みも感じないのだ。どっかで聞いたことがある。
人間が痛みを感じるのはその個体に生命の危機を知らせる為なんだって。
俺の体はもうそんな次元を通り越しているんだろう。
意識があるのが不思議なくらいだ。
今思えば、漢くさい人生だった。
男子校に通って卒業して、そのまま工場の現場作業員になったのだ。
周りは男ばっかで、彼女のひとりもいた試しがない。
人生卒業する前に童貞卒業をしたかったぜ…ははは。
本格的に意識が遠のく中でやはり家族の顔が浮かんだ。
4つ違いの姉がいたが、自分が小学生の頃に亡くなった。姉は14歳だった。
その時の両親の嘆きようったらなかった。毎日が御通夜のように沈痛で楽しいこと嬉しいことをするのが後ろめたいみたいな雰囲気だったのだ。
でもやがて――そう、俺がいたことによって少しずつ家族は元通りの生活に戻っていったのだ。
それなのに。ああ――…
鈴木家の子供は自分だけだ。このまま俺が死ねば父さん母さんが――…
ごめん。ほんと。親不孝な姉弟を許してほしい。
ぼーっとする頭の中で俺はねえちゃん、とつぶやいた。
ねえちゃん何で死んじまったんだよ。
多分声に出ていたか分からない。
でもその俺のつぶやきにねえちゃんが返してくれたように、声が聞こえたんだ。
――バカ勇太。あんたまで死んじゃってどうするのよ
ってね。
マジごめん。って心の中で謝って、俺は意識を手放した。
***
――ほんと、あんたって昔っからどんくさい子だったけど。まさかここまでとは思わなかった。
あー姉上のおっしゃる通りでございます。
ほんとフォローのしようがないくらいっすね。クソっすわ自分。
――でももうしょうがないのよね。死んじゃったんだもの。
あーやっぱお亡くなりあそばしたんっすね、自分。
――だから…次は幸せになって。勇太。
次ってなに。次って。
え、リベンジあんの。
――魂は巡るものなの。私はそこから…外…れ…しま…けど…
ねえちゃんは俺に背を向けて歩き出してしまう。
待ってくれ、ねえちゃん!行かないでくれ!!
******
「もう置いていかないでくれ!!」
手を必死に伸ばしたままの姿勢で俺はベットに横たわっていた。
ふっと力を抜いた瞬間に自分の手がおでこに落ちてきた。ぺちんと音がする。
「ここは…?」
自分の部屋の天井ではなかった。――まして鈴木家の天井ではなかった。
たくさんの天使の絵が描かれた天井――いや天蓋付きベットの天井か。
ん――?
「おねえさま!よかった気が付かれたんですね!」
横を見ると俺の手を握って、その大きな青い瞳に涙を溜めている少女がいた。
ピンク色がかったベージュのふわふわした髪を、高い位置でふたつに結んでいる。
髪を縛る黄色リボンとおそろいの、レースとフリルがふんだんにあしらわれた黄色のドレスの少女は、12.3歳くらいだろうか。
ええと、この少女の名前は…
「シルヴィア…ちゃん?」
「はい、おねえさま!」
あれ、なんで俺この子の名前知ってるんだろ。
ていうか、今の可憐な声…
変性期が済んだ20歳男の声では…な…いぞ?あれ?
「オリヴィア大丈夫か?自分のことがわかるか?」
逆方向に視線を映せば、気遣わし気にこちらを伺っている青年がいた。
黒髪黒目の精悍な顔だちに、カーキの軍服のようなものを着ている。腰には剣を差している。
えーとこの人は…
「シオン…?さん…?」
さん付けで呼んだ俺がおかしかったのだろうか。
シオンさんは眉をひそめていた。
「ゆっくり聞かせてくれ。ここはどこで、おまえは誰で、どうしてこの状況にあるのか――思い出せるか?」
「えっと…ここはサイラス国で、俺の名前はオリヴィア・アーレン。家柄は公爵家。貴族の父と母と、妹のシルヴィアちゃんと従兄で義兄のシオンさんと暮らしていて―――ええとそれから…」
義兄の質問にするすると答えれた自分がいた。
ああ、そうだ俺の名前はオリヴィア・アーレンだ。
なんだか不思議だけど、そうだったんだ。
「ねえさまは、屋敷の階段から落っこちたのよ。ごめんなさい。私がいきなり抱き着いたせいで
足を踏み外したの」
シルヴィアちゃんはの頭はしゅんとうなだれてしまう。
「ところどころおかしなところはあるが…まあ意識も取り戻したことだし。問題はないだろう?先生」
気づかなかったがシオンさんの隣には医者らしきおじいちゃんがいた。
おじいちゃんはこくり、と頷いてシオンさんに応える。
「シルヴィ―、医者もこういっていることだし、義父上と義母上へ早馬を出そう。先ほどの連絡を取り消さねば。旅行中に余計な心配をかけたくないからな」
シルヴィアちゃんは「はい」と頷いてシオンさんと部屋を後にする。
「おねえさま、ちゃんと休んでらしてね?」
にっこりと笑って、扉はばたんと閉められた。
ひとりになった俺は頭を抱える。
―――ひょんなことから俺は前世らしき記憶を思い出してしまった…のだ
うーんどこのラノベだ。
****
姿見で自分の顔を確認する。
腰に届く位のストレートな赤毛に、はしばみ色の大きな瞳。
唇は熱をもったかのように赤く、頬は上気したかのように薄いぴんく。
年齢は16.7歳ってところだ。
鏡と自分の顔を行ったり来たりベタベタ触って感触を確かめた。
我ながらなかなかの美少女だ。
さて…うん、確かめなければならない。
俺はおもむろに自分の――ふくらみかけた2つの盛り上がりに手を置いた。
ぽよん、と音がしそうな弾力だ。
う、や…やわらかい。
大きすぎず小さすぎず…、
手のひらにちょうど収まっていい感じだ…。
モミモミモミモミモミ…
あれ。なんか止まらないぞこれ。
前世童貞だった俺の名残だろうか。
手が離れない。
なんという吸引力…。
モミモミ…
「おねえさま…何してらっしゃるの?」
びくっっ
ばっと振り返れば、怪訝な顔をして俺を見ているシルヴィアちゃんの姿が。
姿見で自分の姿を見つめながら胸を揉みつつ――しかもはあはあ言っている、
そんな状況を妹に見られました。
ア、ア、ア、アウトォォォ---!!!
俺は混乱する頭をフル回転させた。
「ここここれは、揉むとおっぱいが大きくなると聞いて…
それであの…っっ」
「あら、それなら私も知ってますわ!」
シルヴィアはぽん、と手を叩いた。
*****
「えーとシルヴィアちゃん?これは一体…」
モミモミモミ
「おねえさま知らないんですの?人から揉まれる方が効果があるらしいんですの」
そ、そうなんですか。
前世でおっぱいを持たない・さわらない・見つめない、の非パイ三原則で暮らしていたので
あんまり詳しくないんです、はい。
モミモミモミ
な、なんか変な気分になってきたぞ…
心なしかシルヴィアちゃんの息も荒いような…いや、これは俺の胸を揉んでいるという、握力運動のせいなのは分かるんだけれどもね!?
「うふふ、おねえさまのストロベリーベージュの髪ってキレイ。…それにいい匂いもする…」
俺の髪に顔をうずめて、シルヴィアちゃんはスンスン匂いを嗅いでいる。
そう、俺の髪ってストロベリーベージュっていうんですね。
女の子がする物の例えってやつは甘ったるくて可愛らしいんだな。
髪の匂いを嗅ぎながら、胸を揉まれ…
シルヴィアちゃんの吐息がうなじにあたる。
ううう…なんかやばい!これは…やばい!
「シ、シルヴィアちゃん!もうここらへんで大丈夫だから!!」
俺は彼女の手を胸から外して笑顔をつくった。
「あら、もういいんですの?おねえさま」
「う、うん。なんかイケない世界に行ってしまいそうだったし」
「? そうですの。…じゃあ次はわたしの番ですわね」
「へ?」
「私の胸ももう少し大きくしたいんですもの。おねえさまが揉んでくださいな?」
ええええええええええ!!!!!
「そそそそそれはちょっと…やっぱり初めては好きな男性と…」
「?おねえさまは男の人じゃないんだからいいじゃないですか」
俺に揉まれたところでノーカンですよね。ああ、はい。わかります。
「ささ、早く。おねえさま」
そう言ってシルヴィアちゃんは胸を張る。
黄色いドレスの胸元には、ピンク色のリボンが揺れていた。
これはあれだ、俺はやましい気持ちとかなんにもなくて。
シルヴィアちゃんはこのつつましやかなおっぱいに悩んでいるからだな、うん。
大体俺は童貞特有のアレか、大きなおっぱいに顔をうずめたいという願望が前世からあってだな――別にこの子を性的な目で見れるはずもないっていうか。
つか俺は今女で、この子のおねえさまであって。これは姉妹のスキンシップの一環ってやつで。
俺は頭の中がぐるぐるしつつも、誰に言い訳をしているのか分からない言い訳をしていた。
もう一方で「合法ロリキタ――(゜∀゜)――!!」という言葉が頭を駆け巡る。
手の形を胸のサイズに合わせた変なポーズで固まっていた俺の額からはもう、たくさんの汗がだくだくと流れ落ちていた。
にじりにじり、とシルヴィアちゃんの胸元に手を置こうとした――そのとき。
「おねえさま?」
俺への純粋な好意の詰まった、その邪気のない瞳と目が合って―― 一拍。
俺は奇声をあげながら部屋を飛び出していった。
***
「シルヴィ―どうしたんだ?」
後に取り残されたシルヴィアはぽかんとして床に座り込んでいた。
「オリヴィアはどうした?」
部屋の主がいないことを不審に思った義兄は、部屋の中にゆっくりと入ってきた。
きょろっとオリヴィアを探すような仕草で。
「さあ…『俺は汚い人間なんですぅぅぅぅぅぅ!!』って叫びながら部屋を飛び出していきましたわ」
「えー…あいつ。本格的に頭の打ちどころが悪かったんじゃないか?
もう一度医者に診てもらったほうがいいかな?」
――そんな会話があったことを、俺は知らなかった。
***