ファンタジーショートショート:ちょろいよ魔王様!
『これより人間の国を侵略し我が物とする!』という宣戦布告を行ってすぐ、魔王の元にあるものが届けられた。
「なんじゃこの箱は?」
「どうも人間側からの贈り物だそうです。そんな怪しい代物送りつけて来るとはなんと短絡的な!」
怒りに声を荒げる側近を尻目にさっさと箱を開けてしまう魔王
「いけません!危険物かもしれませぬぞ!」
そんな側近の制止も聞かずあけてみるとそこにはケーキが置かれていた。手紙には『お手柔らかにね?』という謎の手書きのメッセージが添えられていた。
「こんな如何にも毒が入っていそうな代物!」
とそのケーキを捨てようとするのだが
「うん。美味いなこのケーキ!こんなもの出す店があるんなら少し攻撃は控えめにしてやろうか・・・?」
「魔王様!そんな事では侵略できるものもできませんぞ!」
側近はこの侵略に暗雲が立ち込めていることを感じ取った。
それでもどんどん人間の国に向かって侵略をしていく魔王達。しかし人間側の被害はほぼ無いに等しいものであった。
それもそのはず、行く所行く所で魔王達は歓待を受け『ここは通すから戦闘は勘弁して?』というお願いに魔王があっさり頷いてしまうからであった。
人間を殺し怯えさせ血塗られた道を行軍する。そんな事を夢見ていた側近は魔王の余りの人のよさ?に憤慨する。
「魔王様!これが本当に侵略と言えるのでしょうか!」
「いいじゃないか。お互いに被害の無い。しかもこっちは順調に進んでいるんだぞ?」
ぐぅの音も出ない側近にのほほんとした魔王の行軍は更に続いていく。
そしてとうとう国王の住む城にまで進むことが出来た。
「王よ。貴様を殺してこの国を我が物としてくれる!」
魔王が宣言する中、城より1人の人物が現われた。
「私、王の娘でございます。魔王様この行軍に一体何の意味があったのでございましょう?誰も魔王様に攻撃をした者は居ないはず。我々は魔王様方に敵対する意志等ございません。それを侵略するなんて余りにも酷いではございませんか!」
涙も交えて魔王に話しかける王女。それを聞いていた魔王は
「それもそうだな!よし帰ろう!」
側近はずっこけました。
「魔王様!?いくらなんでもあんな戯言で帰るというのはどうゆうことでございますか!」
「いや、女の涙には勝てん!さぁ帰るぞ!」
有無を言わさず、側近を連れ魔王は自分の国へ帰っていきました。
側近は1人
「なんで今の魔王様から先代、先々代とどいつもこいつもちょろすぎるのだ!」
1人嘆くのでした。