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私の命日  作者: たろう
2/5

占い

私はその日、親友のユキに連れられてよく当たると評判の占い師の店に行った。

店には長い行列ができており、私達は2時間並んでようやく順番が回ってきた。

まず、占いが大好きなユキから占い師と一緒に暗い部屋に入っていった。

私はその間店内を見回した。

壁や天井にはうさん臭いお守りやらお札が貼られていた。

私が占いを信じないのにはきちんとしたわけがある。

まず、占いはどうにでも捕えられるあいまいな言い方しかしない。

そして占い師はそれを話術でさらにうまくごまかしているものだ。

例えば、私のような女子高生が占ってもらうところを考えよう。まず占い師は尋ねる。

「あら、あなた最近お父さんに一大事があったわね」


決して

「何があったの」

とは聞かない。

あくまで自分は神のような存在でなくてはならない。

神はなんでも知っているものだ。

女子高生は答える。

「そうなんです。この前財布を落としたとかで大騒ぎしました。」


占い師は、しめた、と思う。

「最近」

「一大事」

なんて、聞き手によって捕え方はさまざまだ。

3日前風邪をひいたことだと捕えるかもしれないし、2週間前の宝くじ当選だと捕えるかもしれないし、もしかすると一年前の交通事故なんて考える人もいるかもしれない。

父親にそういったことが全くない人なんてそうそういるものじゃない。

占い師は続ける。

「そうね、あなたのまわりは今金運が悪いから気を付けなさい。でもあなたの悩みはそれではないですね」


今どきの女子高生が父親の財布でそれほど悩むなんて考えにくい。女子高生は答える。

「実はクラスの男子に恋をして……」


女子高生は詳細を話し、占い師は最後にこう言う。

「その男子とあなたの縁は薄いです。しかし、それは今現在の話であって、これからどうなるかはあなた次第です。あなたがその男子によせる想いが強ければおのずと縁は深くなるでしょう」


女子高生から見れば、父親の財布のことや悩みを見透かされ、悩みまで解決してくれた、そんな風に思えるだろうが、占い師は何一つ大したことはしていないのだ。

だが私は占いを信じる人をばかにしたり見下すつもりはない。

実際、占い大好きのユキは私の一番の親友である。

ついに私の番がやってきた。

私はあまり気が進まないながらも占い師のいる暗い部屋に入った。

と、そこで名案が頭に浮かんだ。

─この占い師を困らせてやろう─ 私はさっそく実行に移した。占い師と向かいあった席に座ると、彼女はすぐ話しはじめた。

「あなたは最近学校で変わったことがありましたね」


そらきた。私はこの質問にでっちあげの話を返した。

「そうなんです。今朝も上履きがなくなっていました。毎日毎日、私の持ち物が消えていくんです」


我ながら苦しむ少女の芝居はうまくできたと思う。占い師は

「それが悩みなんですね。わかりました」

といって、目を閉じて何かをぶつぶつ言い始めた。どうせ目を開けてから

「それはあなたの中の暗い心が呼んだ心霊現象です」

なんて言うのだろう。はっきり

「いじめですよ」

なんて言わないだろうな。と私は予想をたてた。

だが、しばらくして目を開けた占い師はなかなか言葉を発しようとしない。

言うか言うまいか悩んでいるように見えた。

数分にも渡る沈黙が続いたあと、彼女はようやく口を開いた。

「あなたは私を試そうとした」


私は驚いた。

いや驚いたなんてもんじゃない。

心臓が弾けたかと思った。

だが、占い師は怒るのでもなく嘆くのでもなく、静かにこう言った。

「しかし大切なのはそれではありません。言いにくいことですが、あさっての夕方、あなたはこの世から消えるでしょう」

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