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実験都市

ちょっとSF要素を取り込んでみました。

 カフェは結がオススメだと言う、ちょっと洒落たヨーロッパ風の店に入ることにした。


 店内に入ると左側の外が見渡せる壁ぎわのテーブルに案内された。


店内の灯りは明る過ぎず暗すぎずといった感じでレンガで作られたひんやり冷たい壁と店内を流れるジャズが今日の疲れを癒してくれる気がした。


 特に飲みたいものがなかった俺はアイスコーヒーを、結はカフェ・オレを注文した。



和「落ち着くね。この店」


結「そうでしょ?よくここに来て勉強してるの」


和「へぇ、ここで勉強か……」



確かに静かだし勉強場所には最適かもなぁと考えていると注文したアイスコーヒーとカフェ・オレが運ばれてきた。



和「じゃあ、いつも来る時は制服なの?」


結「うん。だから私服で来るは初めて」



微笑してから周りを気にし始める。



結「だから周りから浮いてないか不安なのよねぇ」



周りを見ると制服姿の学生や背広を着たサラリーマンなどが多くいて、私服の人たちはあまり見られなかった。


そういえば今日は尾行に集中してて、結の服装を全然意識していなかった。


見ると金色のラメで英語が書いてある白いTシャツに黒色のパーカーを着ていて上が白くて下がチェック柄になっているスカートに太ももの半分くらいまである黒いタイツという格好だった。


一方、俺は黒いTシャツにチェック柄の羽織を着て、下はジーンズというラフな格好で来ている。



結「夕日を見ると何だか懐かしい気がするのよね……」



唐突に話始めた彼女はビルの向こうに沈んでいく夕日を見ている。



結「…………」



一瞬、とてもつらそうな顔をした。



和「結?どうしたの?」


結「和也……ここからは、重大な話よ。よく聞いて」



ゴクっと唾を飲み込む。



結「今日、この市……いや、この県の半分の市が実験都市に指定されたわ」


和「? 実験都市って何?」


結「その名の通りよ。ここら辺の市である実験が行われるの」


和「ある……実験?」


結「そう……実験内容を簡単に言うと、脳の活性化よ」


和「? 全然意味分からないんだけど……」


結「まぁいいわ。今言ったことは頭の片隅にでも覚えておいて。さてと、帰りましょう?」


和「あ、ああ……」



残っていたアイスコーヒーを飲んで席を立った。


 会計を済ませ、エスカレーターに乗って一階に降りると後ろから誰かが走ってくる音がした。



立「ハァ……ハァ……もう!どこにいたのよ!」


結「ああ。ゴメンゴメン、ちょっとお茶してたの」



結が適当に返事すると水城もやってきた。



水「2人とも酷いぜ。俺たちは、ずっと探してたっていうのによ」


和「悪い悪い。今度、食堂でなんか奢るからさ」


立「ええと、じゃあ私はキツネうどんね」



俺は水城にだけ言ったつもりだったのだが立上が奢って欲しいものを言い出した。



和「いや、俺は水城に言ったつもりだったんだけど……」


立「ええ!?私の分も奢ってよ〜」


和「結に奢ってもらえよ」


結「いいわよ。私がメニュー決めてもいいならね」


立「……いえ、遠慮しときます」



立上は急に青ざめた表情をして拒否した。


前に何かあったのかなぁ?


 それから4人で寮まで一緒に帰った。


 寮に帰ると寮内にある大浴場に入り、それからベッドに寝転んだ。


『実験都市に指定されたわ』

『実験内容は脳の活性化よ』


一体、結はなにが言いたかったんだ?


だが、そんなことを考えていると段々視野が狭くなっていき、俺は深い眠りについた。



 朝、起きるととくに変わった様子はなかった。


いつも通りに弁当を作って朝飯を食べ、歯磨きをしてから制服に着替えた。


教室に着いても、みんないつも通りに話したり勉強したりしている。


なんだ、いつも通りじゃないか。


実験都市に指定されたからって何も起きないじゃないか。


ふぅ心配して損した。



和「おはよう」


水「おはよう。かずやん」

立「おはよう。藤原君」



とくに話すこともなかったので、それだけ言うと席に座り、読みかけていた本を読むことにした。


 しばらくすると担任が入ってきて、朝のホームルームを始めた。



「ええと、今日は授業をやらずに校外学習に行くことになった。全員荷物をまとめて9時に昇降口に集合すること」



それだけ言うと担任は出ていってしまった。


突然の出来事に教室がざわつく。


もしかしてこれが昨日、結が言ってた実験都市のせいなのか?



水「かずやん、何難しい顔してるんだよ」


和「いや、ちょっと納得いかなくて……」


水「授業が無くなったんだぜ?もっと喜べよ」


和「でも……」


水「さっさと荷物まとめて行こうぜ。遅れると迷惑だし」


和「……ああ」



俺は水城の後に続いて教室を出た。



 昇降口に集合すると人で溢れかえっていてとても動ける状態ではなかった。


どうやら全学年、授業が中止になって校外学習になったみたいだ。


どう考えてもイレギュラーな事態だったが、どうこう言ったところで何も変わらないので黙っておいた。


 やがて人の流れが出来始めた。


流れの先はグラウンドだった。


 そこには何十台ものリムジンバスが止まっていた。


止まっているバスは会社もバラバラで、まるでパーキングエリアに来たのかと思ってしまう。


とりあえずリムジンバスに乗ると適当に席に座った。

これが実験・・の前触れなのか?


なんとなく嫌な予感がした。


 バスは列を作りながらどこかへ向かっていた。


周りから見れば、すごく不思議な光景だっただろう。


何十台ものバスがずっと連なって走っているのだから。



水「なぁなぁ、どこへ行くのかな?」



俺の隣の席の水城が話しかけてきた。



和「さぁな……でも、なんか嫌な予感がする」


水「確かに……俺たちの学年だけならともかく、全学年が校外学習だもんな。しかも目的地同じだし」



俺も不自然に思って先生にどこへ行くのかと質問してみたのだが、サプライズだから教えられないと誤魔化されてしまった。


 バスが走りだして二時間くらい経っただろうか。


高速道路を走っているので周りの景色はフェンスで見えない。


するとバスが速度を落とし始めた。


外の景色を見えなくしていたフェンスは途絶え、緑色の木々で覆い茂る森と田んぼが目に飛び込んできた。


おそらくここで高速を降りるのだろう。



 高速を降りて田舎道を走ること10分、窓から見えたものは近未来的な形をした東京ドームくらいの大きさの白い建物だった。


バスはその建物の地下に入っていく。


そして地下駐車場みたいなところでバスは停車した。


 バスから降りると担任が説明を始めた。



「ええ、今日ここへ来てもらったのはお前たちに国のプロジェクトに参加してもらうためだ」



ええ!と、どよめきが起こる。



「そんな訳なのでこれから申請用紙を配るから自分の名前と住所を書いてくれ」


和「あの、先生。これは強制ですか?」


「まぁ、なにせ国からの命令だからな。嫌なのか?」


和「いいえ、そういう訳ではないのですが……」



なんとなく嫌な予感がしただけだ。



「そうか、じゃあ集めるぞ。出席番号順に持って来い」



自分の名前と住所を書いて、担任に渡した。


 クラスの全員が渡し終えると白衣をきた三十代くらいの男の人がやってきて、担任と少し話していた。



「……この子たちですか。……を受けるのは」


「はい。よろしくお願いします」


「いえいえ、こちらこそ」



耳を澄まして聞いていたが、俺にはその部分しか聞き取れなかった。



「よーし、じゃあこの白衣をきたお兄さんについて行ってくれ」


「はーい、じゃあ案内しますね」



そうして俺たちは、笑顔でそう言った白衣をきた人を先頭に施設の中へと入っていった。

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