尾行〜ショッピングモール
最初に言っておきます。
グダグタです(><)
藤「えっ?なに?」
図書館を出ようとしたところで朱鷺戸に呼び止められたので俺は振り返りつつ、そう言った。
朱「外に行くんだから私服着てきてね。それに…………なんだから……」
藤「? ああ、わかった」
途中、聞き取れなかったが大丈夫だろう。
でも、なんて言ったんだ?
俺は教室に戻りながらそんなことを考えていた。
放課後、男子寮に戻り私服に着替える。
俺の部屋にはルームメイトがいない、というかこの学校の寮は、そこらのマンション(中はホテルみたいだが)と変わらないくらいの大きさがあるのでルームメイトがいる生徒は1人もいない。
1人暮らしをしているような気分だ。
だから俺の部屋にあるのは趣味でやってるエレキギターとオーディオ機器とテレビと机と椅子くらいしかない。
うーん、やっぱり殺風景だよなぁ。
今度ポスターでも貼ろうかなと考えていると携帯の画面が光った。
朱鷺戸からの空メールだった。
藤「よし、行くか〜」
うーんと伸びをして女子寮に向かった。
女子寮に着くともう三人は先に着いていたみたいで、
水「遅いぞ、かずやん」
立「そうだよ〜。ほら結も寂しがってたし。ほら〜結、彼氏さんが来たよ!」
朱「う、うるさいわねー!!」
何やら盛り上がっていた。
俺は水城と立上が制服なのに疑問を抱いた。
藤「あれ?なんで制服なの?」
立「藤原君こそ、どうして私服なの?」
藤「俺は朱鷺戸に……」
朱「いや、制服だとすぐに見つかっちゃうじゃない」
立「そんなこと言って、本当は……」
朱「まぁまぁまぁまぁ、深く考えないで。それにもうすぐ小野寺さんが来ちゃうし」
かなり強引に話を反らされた矢先にタイミングが良いのか悪いのか、女子寮から私服姿の小野寺さんが出てきた。
こちらには見向きもしないでショッピングモールの方向へ歩いていく。
朱「追うわよ」
眼鏡を掛けながら小声で指示をだす。
藤「なんで眼鏡掛けてるの?」
朱「一種の変装よ。行くわよ」
ショッピングモールに着くまで俺たち4人は尾行しつつ、何か話そうということになった。
藤「そういえば朱鷺戸は普段勉強とかしてるの?」
朱「何の?」
藤「まぁ、色々……」
立「ハァ……ダメダメダメ!!結と藤原君は付き合ってるんだよ?そんな普通の友達みたいな会話はダメだよ!!」
急に立上がアドバイスし始めた。
立上ってこんなに恋愛事が大好きだったっけ?
もっとおとなしくて明るい女の子だと思ってたんだけどなぁ。
水「じゃあお前だったらどうするんだよ」
立「えっ?! それは……」
突然の質問にエヘヘと笑って誤魔化す。
それから間もなく彼女は、俺たちから白い目で見られることとなった。
ショッピングモールに着いた俺たちは、ここで二手に分かれることになった。
発信機を付ける係とそれをサポート?する係にだ。
朱「じゃあ私と藤原君は、なるべく近づいてチャンスを伺うから佳奈多達は何かあったらサポートして」
立「わかった」
水「了解」
朱「何か質問あるかしら?」
すぐさま立上がハイハイと手を上げる。
立「どうして付き合ってるのにお互いの名前で呼び合わないんですか?」
朱「私たちは正式には付き合っていないからよ」
立「えっ?でも今日の朝、水城君に『付き合ってるのか?』って聞かれて『そうよ!』って即答してたじゃないですか」
朱「あれは……」
藤「わかったわかった。呼べば良いんだろ。呼べば」
立「はい!」
じゃあ、行くからと言うと立上から黒い物体を渡された。
藤「何これ?」
立「発信機だよ!これで名前で呼び合ってるか確認出来るし」
藤「そりゃないよ。こっちだってプライバシーがあるんだから。水城も自分が作った物をこんな使われ方されたくないだろ?」
水城からも反対意見が出るはずだと思い、話を振ってみたが、
水「別にいいんじゃない?面白そうだし」
逆効果だった。
彼の一言でこの案が決定してしまった。
立「じゃあ頑張ってね!それと手ぐらい繋ぎなさいよね、お二人さん!」
朱「藤原君、急いで追い付くわよ!」
立上が朱鷺戸をジロッと睨む。
朱「か、和也、急いで追い付くわよ///」
藤「あ、ああ……」
ちらりと立上を見ると満足そうにうなずいていた。
ようやく小野寺に追い付いた俺と朱鷺戸……じゃなかった結は、化粧品売り場で小野寺を観察しているところだ。
女物ばかりがならぶ店内は、男性の俺にとって居心地の悪いところにしか思えない。
結は欲しいものがあったのか、観察も忘れてその商品に夢中になっていた。
よくリーダーやってるよ、なんて思いながら小野寺に視線を戻すとレジに並んで会計していた。
和「おーい、結」
結「な、なに?か、和也///」
まだ呼び慣れないせいか頬が真っ赤になってしまう女の子。
ちょっとドキッとしてしまった。
和「あの、急がないと行っちゃうよ」
結「あ、うん…………」
結は、名残惜しそうに紫の香水を見つめてから任務に戻った。
途中、小野寺がトイレに入った。
その時は小野寺との距離はほとんどなく、結も続けてトイレに入る形になった。
小野寺の姿が見えなくなった瞬間、小野寺がトイレから出てきた。
つまり、Uターンしたのだ。
結「!!」
結はとても驚いただろう。
だが、そのチャンスを見逃しはしなかった。
すれ違うと同時に相手の盲点からキーホルダーを、先ほど買ったと思われる化粧品店のビニール袋の中に入れた。
しばらくしてトイレから結が出てきた。
和「お疲れさま。にしても驚いたね。まさかUターンしてくるなんて」
結「そうね。あれは尾行してる人がいないかを探るよくあるテクニックよ」
和「ってことは尾行がバレてたってこと?!」
結「そうかもしれないし、感付き始めたのかもしれないわね。私としては後者の方がいいけど……」
結はうーんと伸びをしてから、
結「さてと、じゃあこのまま2人でどこか行きましょ?」
和「えっ?他の2人はいいの?」
結「いいのよ。私たちが尾行してる時に蒔いちゃったから」
どこまで凄いんだよ、この人は。
結「和也は、どこか行きたいところある?」
和「うーん。楽器屋とかかな」
結「えっ?何か弾けるの?!」
和「エレキを少しね」
結はとても意外だという表情をした。
楽器屋に着くとまず右側にピアノがいくつか並んでおり、左側にはDJが使うと思われる機材があった。
さらに奥に進むと右側にエフェクターやアンプなどエレキ関係の機材がずらっと並んでいて左側にはギターコーナーと書かれた空間があり、その中には数十本ものギターが所狭しと並んでいた。
俺と結が並んでいるギターを見ていると中年の店員さんが話しかけてきた。
店「何か弾いてみますか?」
和「ああ、はい。結、なんか弾いて欲しいギターある?」
結「これ!」
指を指す方向には赤いボディに白と黒のストライプがシグザグに塗装されてあるストラトタイプのギターだった。
これって明らかに〇ァン・ヘイ〇ンモデルのギターだよね。
和「あの……結?どうしてこれがいいの?」
結「えっ?だってこのデザイン、カッコいいじゃない!」
まぁ、それは認めるけど世界的に偉大なギタリストの彼のギター(本物ではないが)を俺みたいな一般人が弾いていいのだろうか?
店「あの、どうしますか?」
和「じゃあ、これで」
結局、流れでそれを弾くことになってしまった。
ギターをチューニングしてもらってからギターをアンプに繋ぎ、結構歪ませて音を出した。
ギターが良いせいか寮で弾いている何倍も上手い気がした。
知っている限りの彼のバンドの曲を弾く。
10分位弾いてからありがとうございましたと店員さんにギターを渡す。
店「いや〜君上手いね〜バンドとか組んでるの?」
和「いや、組んでないです」
店「バンドは組むと楽しいよ〜。そのうち組むといい」
和「はい。考えておきます」
結局、楽器を弾いただけで店を出ることになった。
結「和也って凄かったのね」
和「そんなに凄くないよ。あれくらい」
結「それでも私は凄いと思ったわ」
和「ありがとな。結」
結「///」
和「結は、どこか行きたいところある?」
結「そうねぇ。カフェ……がいいな」
和「じゃあ、そこに行こうか」
エレベーターで三階のカフェに向かった。




