女子寮にて
言い忘れていましたが、僕はこの作品を書くまで小説なんて書いたことがありません。なのでおかしな点があれば教えて下さい。
あと、読みにくいという意見がありましたので間隔をより開けてみました。読みやすくなったら幸いです。
息が荒い。
心拍数も上がっている。
俺は現在、女子寮の二階にいる。
「ちょっと大丈夫? 息上がっているわよ。」
朱鷺戸 結は呑気にそんなことを言っている。
「こっちは見つからないように必死になってるんだよ! そんな意味のないこと言わないでくれよ!」
「ハイハイ。 で、あなた今何が見える?」
「場所は二階の階段付近。 後ろに自販機、十メートルくらい先にエレベーター」
「あっ、そこはまずいわ。 寮監は基本的にエレベーターで移動しているから、そのまま上の階に上がって」
このようにして一分に一回のペースで現在いる場所を説明して指示をもらうというスタイルを取っているわけだが……早く発信機と受信機を作って欲しいものだ。
他人から見たらただの中二病の変なやつではないか!
発信機と受信機を作ってくれれば俺がどこにいるのか、寮監がどこにいるのかリアルタイムでわかるのに……。
「藤原君? 何をぶつぶつ言っているの? 何階まで上がった?」
気付けばさっきよりも息が上がっていた。
無意識に登っていたのか。
ここは…見渡すと6の数字が目に飛び込んできた。
「ここは…6階!?」
驚いたような声を上げてしまった。
でも良かった…ここまで来れて…。
「OK。 じゃあ左に曲がったらすぐに603号室があるから入って」
ホッとしながら左に曲がると背の高いスーツを着ている女性を見つけた。
なにやら一つ一つの部屋にノックをしては何か言っている。
もしやあれは…寮監!!
冷や汗が流れた。
どうしよう。
見つかれば指導だ…。
そんなときこちらの空気に気付いたのか朱鷺戸が無線で声をかけてくれた。
「どうしたの?!」
「寮監がすぐそこまで来てる。 どうしよう…このままじゃ見つかっちゃうよ」
「……わかったわ。 とりあえず階段を下に降りて、五階で待機。 おそらく寮監は七階に行くはずよ。 足音が聞こえなくなったら部屋に来て」
「了解」
コンコン
無線先でノックの音が聞こえる。
「寮監が来たから一度切るわよ」
それからブチという音を最後に何も聞こえなくなった。
とりあえず指示どうりに五階に降る。
緊張の連続で喉が乾いたので、五階の階段の近くの自販機でジュースを買うことにした。
ジュースを買い、自販機の前で飲んでいると…。
「あの〜」
ヤバイ!
見つかった……。
そっと、振り返って見ると茶髪で短髪の女子生徒が私服姿で立っている。
「あの、女子寮に何のようですか?」
しょうがない…ここはマニュアルどおりに。
「えっと、朱鷺戸さんに会いに来たんですけど…」
「朱鷺戸さんから誘われたんですか?」
「ええ、まぁ…」
「えっ!? 本当に結から誘ったんですか!!」
「は、はい……。」
「あの…お名前は?」
「藤原です…」
女子生徒は両手で俺の肩を掴み、真剣な眼差しを向ける。
「藤原君、朱鷺戸 結をよろしくお願いします」
それから嬉しそうに自分の部屋に戻って行った。
なんだったんだ?まぁ誤魔化せたからいいか…。
俺はそれから6階に行き、603号室のドアに手をかけた。
ガチャ
ドアを開けると同時にこめかみに金属が押しあてられた。
「藤原君、あなた一体何をしたの?」
冷酷な口調で朱鷺戸は言う。
「あなた、さっきの5分間で何をしたの?」
「ちょっと待った!銃を…拳銃をしまって下さい!」
「何もかも話す?」
「はい、話します話しますから…」
ようやく拳銃が下ろされ、ドアが閉まった。
「さて、じゃあ説明してもらおうかしら。このメールの意味を!!」
朱鷺戸は凄い勢いで白い携帯電話を突き出した。
「えっと、なになに? 結ついに彼氏出来たんだね!ていうか女子寮に連れてきて何をするつもり?(笑)本当にラブラブなんだね!今日は藤原君と素敵な夜を過ごしてね!!明日詳しい話聞かせてね! 千明より
って、ええー! なにこれ?! なんでこうなってるの?!」
「そんなのこっちが聞きたいわよ!!」
「ところでこの千明って誰?」
「あなた私が無線の電源切ってからここに来るまで人に会わなかった?」
「……あっ…」
「そいつよ。……ハァ、あいつお喋りだからな……もう明日には……」
朱鷺戸は頭を抱えながら、何やらブツブツ独り言を言っている。
「あれっ?そういえば立上の姿が見えないけど…」
「ああ……それなら……ハァ………」
相当ショックだったのか、テンションが低くい。
ガチャリ
突然部屋の窓が開き、立上が入ってきた。
「うわっ!どうしたんだよ!そんなところから!」
「これなら寮監に見つからないかな、と思ってさ」
「今、寮監はこの階にはいないんだから普通にドアから入ってこいよ! なぁ、朱鷺戸もそう思……」
「立上さんあなた、なんでそんなこと出来るの?! 窓だって鍵が掛かっていたはずよ!」
俺の言葉を見事にスルーして、朱鷺戸は立上に問いかけた。
「ああ、朱鷺戸さんには言ってなかったっけ。 私ね、実はスパイの子供なんだ。 だから昔からこういう訓練されてたの。 訓練と言っても私に気付かれない様にしたのか知らないけど、自然を装ってさせられたから訓練なんて思わなかったんだけどね」
ハハハと笑いながら立上は話した。
衝撃的な事実に驚いていた朱鷺戸はなんとか冷静さを取り戻しながら言った。
「そっ、そっか。 じゃ、じゃあ本題に入るわよ。 今からこのパソコンを使ってハッキングの手順を覚える。 それが理解できたらこのパソコンのパスワードを解いてみて」
そう言いながら朱鷺戸はデスクトップのファイルをクリックした。
しばらくして画面にアルファベットで記号化されたプログラムが出てきた。
「これがパソコンのパスワードのプログラムよ。ここにパスワードの情報は全て載っているわ」
「じゃあ、この意味不明なアルファベットの中に答えがあるってことか…」
「そうね…。でも結果としては、藤原君か立上さんのどちらかが出来ればいいわ」
「多分俺は無理そうだから立上に期待だな…」
ふと、立上に目をやると熱心に「簡単に出来るハッキング 入門編」をパソコンで読んでいる。
説明の手順どうりにプログラムを解析していく。
説明を見てみたが最初の二行しか理解出来なかった。
「どう? 出来そう?」
「ちょっと待って………わかったよー!」
最後にエンターキーをパシッと打った。
画面には「OK」の文字が表れた。
「えっ!? もう!? ちょっと立上さん! あなたが来てからまだ30分経ってないわよ!?」
「いやいや、ただ説明どうりにやっただけだよ」
「そんな馬鹿な……あのソフトは専門用語とか沢山あって、その意味とか知らないかぎり調べないと分からないはずなのに……」
「知らないかぎり……でしょ?」
「うそ……知ってるの? それにしては量が多すぎるわ。 あなた……一体…」
「朱鷺戸さんは日本の都道府県全て覚えてるよね」
朱鷺戸の声をさえぎる様に立上は言った。
「えっ、ええ勿論……」
「いつ覚えたの?」
「それは…幼い頃に」
「朱鷺戸さんは幼い頃から都道府県を覚え始め、私は専門用語を覚え始めた。 それだけの違いだよ……それだけの……」
「じゃあ、あなたがEクラスにいる理由って……まさか…」
「朱鷺戸さんが思っていることで大体あってるよ。 私は……みんなのやっている勉強が理解出来ないの。 小さな頃からずっと…両親が出す課題を…みんなと違うことをやってきたから、私の学力は中学生以下なのよ。 先生に質問したところで知らない公式や知らない単語やらでお手上げなの。 私は中学受験で補欠合格でここに入学したの。 中学に入ってから課題の難易度も上がったから普通の勉強なんて手が付けられなくなった…。 だからEクラスなんだよ」
気まずい空気が流れる。
俺はどうしたら良いのか分からず、下を向いていた。
「ああ! ごめんごめん! なんか暗くなっちゃったね! 朱鷺戸さんこの後どうする?」
「うん。 大丈夫だよ。 そうねぇ…とりあえず立上さんが手順を理解出来たみたいだから……今日は解散! また明日にしましょう」
こうして俺は結局何もやらずに男子寮に帰った。
読んでくれてありがとうございます。アドバイスや感想等などあれば幸いです。




