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第一回作戦会議

今回はほとんど会話です。

 王陵高校は広い。半径5kmから成る広大な土地を利用して校舎以外に体育館が二つと巨大な食堂。さらに学生寮が男子寮と女子寮の二つ、さらに図書館まである。これだけ建てても土地は余っていて、余っている土地は森になっている。


「さてと、二人とも居るわね」


俺と立上を図書館の隅の席に座らせてから自分の金色の髪をひらりとさせて朱鷺戸 結は話し始めた。


「まずはミッション内容から…と言いたいところだけど、あなた達はまだハッキングのやり方を知らないから今日中にマスターしなさい。ここにハッキングが簡単に出来るソフトウェアがあるわ。入手方法は教えられないけど、これを今日中に完璧に使いこなせるようになるのよ」


ソフトウェアには「簡単に出来るハッキング 入門編」と書いてある。


「えっ?!ハッキングって、なんでそんなことする必要があるんだよ」


ハァ、とため息を吐いて朱鷺戸は言った。


「まず、あなた達がいるクラスは学年最下位レベルのバカが集まるEクラスよ。このクラスの連中が騒いだところで相手にされないわ。だから逆らうためには、あなた達は次の期末テストでAクラスに行かなければならない。ねぇこの学校のテスト特徴って知ってる?」


「確か絶対にテスト問題の訂正がない完璧なテストを作っています。って学校説明会で言ってたわ」


珍しく立上が話した。声も小さいわけではないから、そこまでおとなしい人ではないんだな。



「その通り。なぜそんなことを教師は言ったか…。それはこの学校のテストは絶対に教師側の責任で生徒に点数はやらないという意味で言ったのよ。そしてこの教師の発言はもう一つあることを表している。なんだかわかる?」


……訂正が絶対にない完璧なテスト……作る……あっ。


「…もしかして」


「その通り、この学校の期末テストはもうすでに完成しているということよ」


しばらくの沈黙があり、立上が口を開いた。


「でも、そんなの分からないじゃない。もしかしたら期末テスト前に一つのテスト何人かの先生が何度も見直すのかもしれないじゃない」


「それはないわ。第一に期末テスト前にそんなことしてたら自分の作るテストの問題がおろそかになってしまうわ」


「なんで?」


「なんでって、あのねぇこの学校は中高合わせて1200人以上の生徒がいるのよ。それに比べると教師の数は圧倒的に少ないわ。何度もテストを見直す暇なんてないはずよ」


なるほどな。そういう事か…。でもなんでここまではっきりと言えるんだ?


「なぁ朱鷺戸。それは本当に推測なのか?」


「ふっ。面白い映像があるわよ」


朱鷺戸はポケットから携帯電話を取り出し、俺たちにある映像を見せてくれた。 映像に映っている場所はおそらく職員室だ。机の上から教師のパソコンの画面を撮影している。


「この隠しカメラばれなかったのか?!」


「教師が使っているペン立ての中に、カメラ付きのボールペンを仕込んでおいたの」


「すごいな…お前」


「こんなの楽勝よ!」


朱鷺戸は得意気に言ってみせた。

 やがてパソコンの画面に文字が表示された。

「第一回期末テスト数学」


「えっ。でもこれ…」


パソコンの画面にはその文字しか表示されていなかった。


「その映像は振り分け試験の結果が貼りだされた直後の映像よ。そしてこれが…」


違う映像になった。そこには「試験は以上です。お疲れさまでした。」の文字が…。


「昨日の映像よ」


………。


「つまり、期末テストはもうすでに昨日の時点で完成しているということか…。」


「まぁ全部とは断定出来ないけど、数学は完成したということよ。他の学年の教師にもカメラを仕込んでみたけれど、どの教科も大体同じようなペースで問題が出来ていってるわ」


「本題に入るわ。私が調べた結果、完成した問題はパスワードのかかったファイルに保存されることがわかった。このファイルをハッキングして寮にある私のパソコンにコピーする。それからそのファイルを使ってお勉強会よ」


「ちょっと待った!立上はいいかもしれないが、俺は男子だぞ!女子寮に入れって言うのか?」


「そうよ。大丈夫、もし見付かったら私に会いに来たって言えばいいから」


「わかったよ。でお前が住んでるのは女子寮の何号室だ?」


「603号室よ。じゃあ今日の20:00に女子寮の603号室に集合ね」


「オッケー」

「わかったわ」


「じゃあ、また夜に会いましょう」


図書館から出ていく朱鷺戸の後ろ姿を見送りながら、こんなことして良いのか?という疑問が浮かんできた。そうだ立上ともまだあまり話してないし、どう思っているのか聞いてみよう。


「あのさ、立上。お前は…その…こんなことをすることに抵抗はないのか?」


立上は、俺に話しかけられたことが意外だったのか少し驚いた表情を浮かべた。


「そっ、そりゃあ悪いことだってわかってるわよ。でもね私、もういじめとか受けたくないの。それに…」


「それに?」


「私の両親少し変わってて、私がまだ小さいころから色々な道具の使い方の暗記とか運動神経を鍛えるトレーニングとかをやらせてたの」


えっ?まさか…いや嘘だろ。


「朱鷺戸さんに言われて初めて気が付いたわ。私の両親ってスパイだったのよ…」


ええー!そんなことが現実にあるのかよ!


「でも…そんな重要なことを俺なんかに話していいのか?」


「一応、あなたもスパイだからね。それに仲間だし、知っていてもらいたかったのよ。じゃあまた後でね」


そう言ってさっさと図書館を出ていってしまった。一人残された俺は、これから自分がこのメンバーの中でやっていけるのかという不安で頭がいっぱいになった。

 夕食を食べた後は自由時間になっている。自分の部屋に戻る者もいれば、友達と食堂で談笑する者もいる。俺は夕食を食べ終えるとすぐに女子寮に向かった。行く途中に食堂で朱鷺戸に言われたことを思い出した。


「藤原君、これを着けて女子寮に潜入しなさい」


どこかで見たことのある形だ。耳に着けるらしい。これは確か水城が作っていた物と同じ物だ。


「これはトランシーバーよ。私がオペレーターになって藤原君を誘導するわ。藤原君は指示に従って移動して、これも活動の一部よ」


「えっ見つかっても良いって話じゃ…」


「生徒にはね…でも寮監に見付かったらアウトだから気を付けて」


寮監とは寮を監督する先生のことである。男子寮の寮監はそこまで厳しくないのだが女子寮の方は厳しいらしく見つかると指導になるという。

 ハァ、気が重いな…。一人で落ち込んでいると無線が入った。


「もしもし、藤原君?あなた今どこにいる?」


「えーと、今は…」


辺りを見渡すと近くに女子寮があった。


「女子寮付近」


「了解。ではミッションスタート!」

読んでくれてありがとうございます。これからも頑張って書きますのでアドバイスや感想等など、ありましたらよろしくお願いします。

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