土下座する理由
高校の同級生の友人と駄弁りながら帰宅する途中、同級生の家の前で中学校の制服を着た2人の男女が、友人宅で飼われているラブラドールレトリバーの前で土下座していた。
「あの2人何やってるんだ?」
「あぁアレ、犬に謝罪してるんだよ」
「どういう事だ?」
「あの2人の関係は知ってるだろ?」
「ああ」
此の近辺であの2人を知らない者はいない。
男の方は友人の弟で一緒に土下座している女の子は、友人宅の隣の家の娘で偶々弟と同じ日に生まれた幼馴染で恋人同士。
そして2人を有名にしてるのは互いの部屋が向かい合わせだった事もあって、幼稚園児の頃アニメだったか漫画だったかの夫婦喧嘩のシーンで物が飛び交うのを見て、真似するようになったからだ。
毎日毎日、お互いの部屋と部屋の間を物が飛び交う事になる。
最初はヌイグルミやシューズなどの投げ合いだったのに段々とエスカレートして、小学校に入学した頃からは爪切りや筆箱など小物だけど取り損なうと危ない物になり、高学年になると椅子や目覚まし時計などのような窓ガラスを割ったり壁を凹ませたりする物に変わって行く。
此処らへんで親たちにカミナリを落とされ飛び交う物は幼稚園児の頃のように、ヌイグルミやシューズに戻っていた筈。
「あの2人、ヌイグルミやシューズじゃ面白みが無いと、半年前に生まれたばかりの子犬の投げ合い始めたんだよ、怯えてキュンキュン鳴く子犬をだぞ、ただ最初は怯えてキュンキュン鳴いてた子犬も慣れてくると、空を飛ぶのを楽しむようになって投げられるのを自分から催促するようになったんだ」
「あ、分かった」
それを聞いて2人が飼い犬に土下座している理由が分かった。
「もしかしてだけど、あの大きさになってからも2人に投げろって催促してるんと違うか?」
「当たり、流石に成犬並みの大きさになった犬を投げるなんて無理、オヤジたちに自分たちが始めた事だから自分たちで解決しろって言われた結果が、アレなんだよ」




