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ノンフィクション短編集  作者: BIRD


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9/25

前方50cmの事故

 飲み屋のバイト時代、仕事帰りに起きた実話です。

 具体的な場所や日時は伏せておきます。


 当時、僕はバイトかけもちで、昼間はアミューズメントテーマパークのイベントスタッフとして働き、夜は居酒屋で働いていました。

 深夜、居酒屋の仕事を終えた帰り道。

 他のスタッフと喋っていて信号が変わったことに気付くのが少し遅れて、横断歩道を歩き始めたところで事故は起きました。


 前方を歩いていた女性に、信号無視の乗用車が突っ込んだんです。

 女性は跳ね飛ばされて路上に転がり、車はすぐ後に急停車しました。


「なに? なんなの? いやぁぁぁ!」


 路上に倒れたまま、被害女性が叫びました。

 痛いとか苦しいとかは言わなかったから、パニック状態だったのかもしれません。

 車から降りてきた加害者も女性で、そちらは呆然としている様子でした。


「携帯持ってる? 110番に電話して」


 僕は、どうしたらいいか分からなくなっている様子の加害女性に指示して、警察に電話をかけてもらいつつ、自分の携帯で救急車を呼びました。


 深夜だったので後続車も対向車も全く通らず、パトカーと救急車はほぼ同時に到着しました。

 一緒に事故を目撃した仕事仲間は、加害者が警察に電話をし始めたところで帰ってしまったので、既にその場にいません。

 被害女性は救急搬送され、加害女性の事情聴取が始まり、僕は目撃者である事と自分の視点からの事故状況だけ警察官に伝えて、その場を立ち去りました。


 あんな至近距離で事故を目撃したのは初めてです。

 事故の瞬間、僕と車との距離は、50cmくらいでした。

 出遅れていなければ、僕や仕事仲間も巻き込まれていたでしょうね。

 以来、僕は青信号でも道路の横断時は警戒するようにしています。


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