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ノンフィクション短編集  作者: BIRD


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19/25

寮生活は味覚が麻痺する?

 みなさんの学校の食堂は、ごはん美味しいですか?

 僕が暮らした学生寮の料理は、いずれも残念なお味でした。

 新入生たちは寮生活初期、美味しいとは言えない微妙な味付けに戸惑うことになるのです。


「今日は麻婆豆腐らしいよ」

「お! いいね~」

「ごはんにかけて食べよう」

「辛さ、どのくらいのレベルかなぁ?」


 学食を訪れた新入生の僕たちは、献立表を見てそんな会話をした後、料理を渡されるカウンター前に並んで待っていました。


「はいよっ、おまたせ~」


 って料理人のおばちゃんが差し出す料理は、思ってたのと違いました。

 軽く困惑しつつそれを受け取り、カウンターから離れた飲食スペースで席についた後、僕たちは顔を見合わせて囁き合いました。


「これ、麻婆豆腐?」

「麻婆豆腐って、もっと赤くなかった?」

「確かに豆腐は入ってるけど」

「全然辛くない」

「これ、豆腐の野菜あんかけじゃない?」

「っていうか、味薄すぎない?」


 それは、一般的な麻婆豆腐とは違い、辛味やコクを出すための豆板醤も、甘みと深みを加える甜麺醤も、全く使われていないと思われる豆腐料理でした。

 炒めた豆腐と野菜を塩胡椒で薄く味付けして、片栗粉でトロミをつけただけと思われます。


 麻婆豆腐とは……

 中華料理(四川料理)。

 挽肉と赤唐辛子・花椒・豆板醤などを炒め、鶏がらスープを入れ豆腐を煮た料理。

 ……だった筈。


 豆腐や野菜の味がよく分かる、学生寮の食堂の「麻婆豆腐」。

 かなり薄味だけど、鶏がらスープくらいは入っていたかもしれません。

 それはもはや「調味料をほとんど使ってない豆腐のあんかけ」でした。

 僕たちが腹を満たすために完食した頃、3年生の寮生2人が食堂に入ってきました。


「あ、麻婆豆腐だぁ」

「おばちゃん大盛お願い!」


 きっと何度も食べたであろうそれを、大喜びで受け取る先輩たちがいました。

 その言葉に密かに驚く新入生一同。

 超薄味の「麻婆豆腐と呼ばれるモノ」に対する反応が、寮生活の長さによって変わることを知った瞬間でした。


【寮生活をすると味覚が麻痺する】


 当時は、そんな噂が学生たちの間で広まっていました。

 微妙な味付けの料理を長期間食べ続けると、なんでも美味しく感じるようになるのかもしれません。

 僕や同期の寮生たちも、1年後には薄味あんかけ豆腐を美味しいと言い始めていましたからね。

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