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ノンフィクション短編集  作者: BIRD


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12/25

小さなゲストのために

 とある遊園地でアルバイトしていた頃の話です。

 キッズコーナーの見回り清掃に行った僕は、2~3歳くらいの男の子に話しかけられました。


「今日はニックいないの?」

「ニックが来るのは土曜日と日曜日だけだよ」


 ニックというのは、遊園地のキャラクターの名前です。

 実際は違う名前ですが、それを書くとどこの遊園地かバレるので仮名でニックとします。

 キャラクターの着ぐるみが園内を歩いてゲストと触れ合うことをグリーティングといい、働いていた遊園地では土日祝日だけ実施していました。


「え~っ、いないのかぁ」


 ションボリする男の子は、ニックに会いたくて遊びに来たようです。

 パパとママはキッズコーナーに子供を預けてアトラクションを楽しんでおり、男の子はスタッフに見守られつつ独りで遊んでいるところでした。


「ニックを呼んでみようか?」

「うん!」


 僕の問いかけに、男の子は即答でした。


 平日の遊園地はガランとしていて、他にお客さんはいません。

 僕は見回り清掃が終わったので、ちょうど暇が出来ました。

 ニック役は特に専属スタッフがいるわけではなく、手の空いたスタッフが交代で演じています。

 僕も何度かニックを演じたことがありました。


「小さなゲストがニックに会いたがっていますが、会わせてあげてもいいですか?」

「いいよ」


 僕は掃除用具を片付けにバックヤードへ行き、インカム(トランシーバーみたいな物)で問いかけました。

 すぐに上司から許可が出たのは、みんな暇だったからでしょう。

 その遊園地は寂れていました。


「では〇〇(僕の名前)、ニック行きます」

「いってらっしゃ~い」

「頑張って~」


 モビルスーツでも乗るんかいって感じの発言に、みんなが応援する感じで応えるのはいつものことです。

 僕はニックになって、キッズコーナーに向かいました。


 キッズコーナーでは、男の子がワクワクソワソワした様子で待っています。

 ニックの姿が見えた途端、男の子は大喜びで駆け寄ってきました。


「ニックあそぼう!」


 そう言って抱きついてきた子をヨシヨシと撫でた後、ニックになった僕は男の子と手を繋いでキッズコーナーをお散歩しました。

 ニックは喋れません。

 でも、身振り手振りで意志疎通はできるんです。


 男の子は、大好きなニックを独り占めできて大満足でした。

 他にゲストはいない、ただ1人のためのニックでした。


 2人で過ごした時間を、男の子は大人になれば忘れてしまうかもしれません。

 でも、ニックは忘れません。

 小さなゲストと遊んだ思い出は、今も記憶に残っています。

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