1.8 事件のあとで
知らない天井があった。ベッドにいる。しかし体が動かない。声すらも出せない。どこから出ているのかわからない声がやっとだ。なんとかアンジーを呼ぼうとしたが、いない。
しばらくすると、医者らしき女性が出て、私に状況の説明を行った。私は自身の放った炎で父を殺した犯人もろとも燃えたらしい。そんななか、全身やけどを負ったものの、命は助かったが、これまで通りの生活は送れないらしい。魔法なんてもってのほかとのことだ。
体の節々が痛い。焼けるような痛みがあるかと思えば、じくじくしてかきむしりたくなるほどの痒さもある。こうして現状を考えると、無力感とやるせなさが頭に浮かぶ。一体これからどうするべきなのだろうか。何ができて、何のために生きる存在となり得るのだろうか。家族への貢献どころかこれではお荷物かもしれない。母は私を見るなり泣き崩れた。当然だ。夫を失い、娘もこのあり様なのだから。母には名家の長としての重圧がのしかかる。資産は大してないが、それでも歴史とそれに裏付けられた王家へのコネクションもある。狙い所と考え襲ってくる者もいるだろう。そして、この前の事件はこのどうしようもない状況をを決定的に作り出した。結局、嵌められたのだ。
とりあえず今できることは殆どない。時の経過を待ち、一寸の望みが絶えてなくなるその時まで。