1.11 夢から覚めて
苦しみの中で、私は目を覚ました。ぼんやりとした視界の中で、男が私の首を締めているのが見えた。私は瞬時に、それが父を殺した一味であることを理解した。怒りが湧く。苦しみの中で、相手を睨んだ。薄れる時の中で、復讐を誓った。もう一度、機会があれば、絶対に殺す。父の恨みを絶対に返す。
「殺す」
そういった私の声は男には届かなかっただろう。男は微かに笑っているように見えた。
私は、そこで意識を、そして命を失った。
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「――お嬢様、お嬢様?」
ハッとした。眼の前にはエリオットがいた。
「すみません、なんでしたっけ?」
「ですから、物体には情報があります。こうとは言えないですが、物体はそれぞれ何か成分のようなものがありまして、それを書き換えることで、物体を変質させるのです。」
「はい?」
「すみません。難しかったかもしれません。私が言いたいのは石も炎も、料理みたいなもので、何かの素材の組み合わせのようなものではないかと、そう考えるのです。」
「はい?」
「ええと、つまりですね…」
私は思わず、彼に訊いた。
「それ、だいぶ前に教えてもらったと思いますが、、」
そう言うと彼は少し戸惑いながら、「いいえ、これをお嬢様にお話するのはこれが最初です。」と彼は返した。
何を言ってるのか、さっぱりだった。
「まあ、誰かに話したのも初めてなんですけどね。私はそう確信しているのですが、どの本にもそんなことは書いてなくてですね、教授に言ったら怒られるかな、なんて思っ――」
私は瞬時に考えを巡らせた。
「まさか、ここにもう一度戻ってきた…?」
エリオットの戸惑った表情、そして彼が口にした言葉。それは、確かに私が一度聞いたことがある内容だった。あの日、私が殺される直前に、エリオットは私にこの話をしていた。
私は全身に鳥肌が立った。まるで悪夢を見ているようだ。しかし、これは夢ではない。私は確かに、あの日から時間を遡って、ここに再び戻ってきたのだ。
「お嬢様?どうかしましたか?」
エリオットの声が私を現実に引き戻す。私は深呼吸をして、彼に笑顔を向けた。
「いえ、大丈夫です。エリオット先生の話、とても興味深いです。続きを聞かせてください。」
私は心の中で決意を新たにした。今度こそ、私はこの運命を変えてみせる。父を救い、そして私自身もあの男たちから守る。二度と、あんな思いはしたくない。
エリオットは私の笑顔を見て安心したように、話を再開した。私は彼の言葉を一言一句聞き逃さないように、真剣に耳を傾けた。それは、未来を変えるための、最初の一歩だった。