明日の天気
「神様ってさーぁ、なんか、あの、チカチカしたのやりながら言ったことが本当になるって感じ?」
母親によって部屋に投げられた自分の服を畳みながら俺が言うと、神様は少し口を横に引いた。
『………語彙が貧困だな』
「うるせぇやい。で、どーなん、そのへん」
『まぁ、是か否かと問われれば是だが。どうした?』
「いや、神様なら俺んこと殺せるんかな、と思って」
言いながら、そっと彼の様子を伺うと、彼は少し口を開いた。それを半分くらい閉じて、また開いて、閉じた。そしてゆっくり首を横に振る。
「あ、やっぱ無理?」
『無理、ではないが……不可能なのだ』
「? どゆこと」
『私たちは基本、常世の者の生死に干渉することが許されておらんのだ。禁忌、というやつだな』
「ふーん?」
死にたいのか、と神様が言った。問うというより、どこか確認するような言い方だ。
俺はそれに気づかないふりをして、窓の外を見た。
「だって今日、天気いいじゃん」
『………は?』
「天気良い日って、なんか死にたくならない? 俺さ、死ぬ時くらい、自分の血とかじゃなくて綺麗なもん見ながら死にたいんだよね」
苦しいのは嫌だけど、こんな天気に溺れた日にゃ、日光が水面に反射してめちゃくちゃ綺麗なんだろうなと思う。苦しいのは嫌だけど。
明日も晴れだといいなぁ。
『………ならば、お前が万が一、お前の望む以外のかたちで死ぬようなことがあれば、私がお前を殺そう』
「え、いいよ別に。禁忌って、なんかヤバいんでしょ。やらかしたら消されるとかじゃないの」
『ほんの500年ほど封印されるだけだ』
「思ったよりガチじゃん」
500年てなにそれ鬱。
なんて軽くツッこむけど、なにやら琴線?に触れて?しまったらしい。これ使い方合ってる?
「………なーあ、明日からの期末、ヤマ当たるかな?」
『言霊はかけんぞ』
「無慈悲!!!」
大人しくプリントを広げながら、もう一度窓の外を見る。ふいと人差し指でマルを描いた。
「あーした天気になーぁれ」
次の日は見事に雨だった。
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