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星 暁③

暁視点です。

 佐藤の連絡を受けて俺はヒカリが搬送された病院へと向かった。

風邪でフラフラだけど、ヒカリの生死がわからない今……家に戻るなんて選択肢は俺にはなかった。

道中、タクシーを拾えたのは幸いだった……。

さすがに家から病院まで走ってしまえば、マジで俺の命に係わる可能性があるからな……。


--------------------------------------


 病院前に到着した俺はタクシーに料金を支払い……お釣りも取らずに病院へと入った。

受付で聞いたヒカリが治療を受けている手術室へと走った……。


「おぉ、暁君!」


 そこにはすでにヒカリの両親がいた。

2人とはすでにヒカリ経由で面識があるし、俺達の交際のことも認めてくれている。

俺を迎えてくれたお父さんの顔からは血の気が引いていて、お母さんの方は顔を手で覆ったまま泣き崩れている。

無理もない話だ……。


「ヒカリは!? ヒカリは大丈夫は大丈夫なんですか!?」


「わからない……俺達も病院から連絡を受けてさっき来た所なんだ……」


「そう……ですか……」


※※※


 俺はヒカリの両親と共に手術室の前でヒカリを待つことにした。

待っている間、俺はヒカリの無事を天に祈った……。

俺にできることなんて祈ることくらいだから……。

無情に過ぎていく時間が俺の胸をチクチクと突いてくる。

何度も頭によぎるヒカリの変わり果てたイメージ……そのたびに俺は頭を振って沸き上がる不安を押し殺した。

ヒカリは生きている……もう1度俺に微笑んでくれる。

根拠などなくとも、俺はそんな希望にすがりたかった……。

ヒカリが俺の前からいなくなるなんて……想像もしたくない!!


--------------------------------------


 それからどれだけの時間が過ぎたか……手術室のランプが消え、中から執刀医らしき医者が出てきた。


「先生! 娘は!?」


「ヒカリは無事なんですか!?」


 俺が声を上げる前にヒカリの両親が医者に詰め寄った。

さすがヒカリの親だと俺は圧倒してしまった。


「手術は成功しました……意識は失っていますが、命に別状はありません……」


「「「!!!」」」


 医者からのその言葉に俺は安堵した……。

直後に手術室から運ばれていくヒカリの顔が目に映った。

能面のような顔をしているが、肌色は良い。


「「ヒカリ!!」」


 ヒカリの両親は涙を流しながらヒカリにすがりついた。

俺も彼女の顔にそっと手を触れ、そのぬくもりが消えていないことを文字通り肌で感じ取った。


「良かった……」


 バタンッ!


 心の底から安堵した瞬間……俺の意識は遠のいていった……。

そういえば俺……風邪を引いていたんだ……。

長時間無理をしたツケが回ってきたんだな……。

でもよかった……ヒカリが無事で……。


--------------------------------------


「うっ!……」


 意識を取り戻すと、俺は病室のベッドで横になっていた。

腕には点滴が打たれていて、服も患者用のものに着替えさせられている。


「気が付かれました?」


 そばにいた看護婦が意識の戻った俺に話しかけてきた。


「ここは……」


「坊園病院です……あなたは病院内で倒れられたんです。 覚えてませんか?」


「なんとなく……」


「ご無理をしたせいで、風邪が悪化したんです。一時は39度近くの高熱にまでさらされていたんですよ?

ここが病院だったから良かったものの……もう少しご自分の体のことを労わってあげてください」


「すみません……」


 看護婦さんの言葉は最もだ……俺はヒカリのことばかりに意識を向け、自分自身の体調不良は一切頭になかった。

その結果がこれか……全く自業自得だ。


「あの……ヒカリは? ヒカリはどうなったんですか?」


「隣の病室にいます。 少し前に意識も戻ったそうです……ただ……」


「ただ?」


「事故の後遺症で……下半身に麻痺が残ったようです」


「まっ麻痺? それって……つまりどういうことですか?」


 意識が戻ったばかりだからか……まだ少し頭が回らず、看護婦さんの言葉の意味を解することができなかった。


「歩くことも立つこともできないと言うことです……リハビリ次第である程度回復する可能性もありますが……今後の人生で車いす生活は避けられないでしょう……」


「じゃっじゃあ、ヒカリはどうなるんですか!?」


「幸い……というべきかわかりませんが、退院することは可能だと思います。

ですが……これまで通りの生活を送ることはかなり厳しいと思います」


 俺の頭がようやく看護婦さんの言葉を理解し始めた……。

ヒカリの命が助かったのは心から安堵した……でもこれまで当たり前のようにできていた立ち歩きができないとなると、ヒカリの日常が一気に狭まってしまう。

何よりヒカリの心の傷は俺には想像もできないほど深いものだろう……。


--------------------------------------


 翌朝……俺は医者からヒカリとの面談を許される範囲に体調が回復した。

点滴は外せなかったが……俺はヒカリのいる病室へと向かうことができた。


「暁君……もう大丈夫なのか?」


「はい……お騒がせしてすみませんでした……」


「ヒカリを心配してくれるのは嬉しいけど……無理はしないでね」


 病室に入るや否や、ヒカリの両親からいたたまれない言葉を頂いた。

ヒカリのことで不安だらけな2人にさらなる不安を与えてしまったことには本当に申し訳なく思う。


「ヒカリ……」


「暁……」


 俺はようやくヒカリと対面することができた。

時間的には半日ちょっとしか経ってないけれど……気分的には何年も離れ離れになっていたようや不可思議な感覚だ……。

それほど俺はヒカリとの対面を心待ちにしていたってことだろう……。


「ヒカリ……大丈夫か? いや、大丈夫じゃないかもしれないけど……あの……」


 ヒカリにどんな言葉を掛けたらいいかわからない……。

どういうことを言えば、彼女を元気づけられるんだ?

ダメだ……わからない……。


「ごめんね? こんな体になってしまって……」


「なっ何を言ってるんだよ!? そんなのヒカリのせいじゃないだろう!?」


 あとから聞いたことなんだけど……ヒカリを轢いたのは20代のフリーターで、ろれつが回らないほど酒を飲んでいたらしい

いわゆる飲酒運転だ……。

本人は軽く大丈夫だと思って運転していたらしいけど……その結果、ヒカリの足を奪う最悪の結末を迎えてしまったんだ。

その男は当然逮捕され、法の下で裁きを受けることになったけど……はっきり言って俺の怒りはそんなことでは収まらない。

被害者当人であるヒカリならなおさらだ……。


「暁……私達……別れましょう……」


 絞り出すような声でヒカリが俺にそう言った。

なんだか申し訳なさそうな顔で涙まで流していた。


「なっ何を言ってるんだよ!?」


「見ればわかるでしょう? この足ではもう……立つことも歩くこともできない。

こんな私が一緒にいたら、あなたの人生の足手まといになるだけよ」


「何を言ってるんだよ!? 俺はヒカリのことを足手まといだなんて思ってない!

それに……リハビリすれば足が良くなる可能性もあるんだろう!?」


「そんなの気休めよ……私の体は……半分死んでしまったの……。

もう私には……あなたと一緒にいる勇気がないわ。

こんな私といるより、新しい相手を探し方が……あなたの幸せよ……」


 俺にはヒカリがどんな思いで俺と別れようとしているのかわかる……。

俺がヒカリと同じ立場だったらきっと……同じことをしたと思う。

自分の不幸に、相手を巻き込みたくない……そんな思いから、彼女は、心を痛めて俺を突き放そうとしているんだろう……。


「暁君……私達は君の意見を尊重する。 君がヒカリを重荷と感じて別れを選ぶというのならどうか娘のことは忘れて幸せになってほしい……」


「そんな体でヒカリを想って駆けつけてくれたんですもの……あなたを責める人なんて誰もいないわ」


 ヒカリの両親は俺に責任を感じさせないように言葉を掛けてくれた。

その心遣いは嬉しいが……俺の答えは決まっていた。

いや……答えなんて最初から決まっていると言った方がいいか。


「お父さんお母さん……お心遣いありがとうございます。 ですが……俺はヒカリと別れる気は一切ありません」


「暁君……」


「ヒカリ……お前の気持ちは嬉しくは思う。 思うけど……悪い……俺はお前と別れようなんて微塵も思えない。

立てなくなろうが歩けなくなろうが……俺にとってヒカリはヒカリだ。

ずっと一緒にいたいと思い続けたヒカリだ。

この気持ちに嘘はない」


 俺はヒカリの手を握りしめ……さらにこう続けた。


「俺が……俺がヒカリの足になる……この先生きていくのが不安だっていうのなら……俺がヒカリの支えになる。

だからヒカリも……俺の支えになってくれないか?

これからの人生を……ずっと……」


 それは俺なりのプロポーズだった……本当なら”一生俺がお前を守る!”みたいなセリフを言いたかったんだけど……俺はそんなにできた人間じゃない。

助け合ってもらえないといけない情けない人間だ……。


「だけど……でも……」


「俺にはヒカリが必要なんだ……ヒカリにとっても俺が必要だと思いたい……。

だからさ……別れようなんて寂しいこと言うなよ……。 

俺……そんな軽い気持ちでヒカリと付き合ってたつもりないんだよ……」


 思わず目から涙があふれてきた……ヒカリと別れるなんて絶対に嫌だ!

俺はヒカリとこれからも一緒にいたい!

そんな俺の心の表れが涙として出てきた……のかもしれないな。


「……馬鹿」


「一緒に……いてくれますか?」


「……はい」


 ヒカリの顔に微笑みが戻った……彼女の目から流れる涙も、なんだか輝いて見えた。

ヒカリは俺の手を握り返し……互いにこれからの人生を歩んでいく決意を固めた。


--------------------------------------


 ヒカリの両親を始めとした周囲の人たちからも言われた……”今のヒカリを支えることは簡単なことじゃない”って……そんなことはわかってる!

そう思っていたから、ヒカリだって俺と別れようとしたんだ。

だけど……俺はその提案を突っぱねてヒカリと一緒にいることを選んだ。

ヒカリ自身も、俺と一緒にいることを選んでくれた。

自分で選んだ以上……彼女が俺を信じてくれた以上……俺自身、これまで以上に頑張らないとな!!


--------------------------------------


 それから数週間後……ヒカリは無事に退院することができた。

俺達は互いの信頼と覚悟を示すために、婚姻届けにサインして市役所に提出した。

生半可な気持ちじゃないって……みんなに……そして俺達自身に証明するためにだ!

そして俺とヒカリは互いの貯金を出し合って……バリアフリーに適した家を建てることにした。

出し合ったとはいっても……結構不足分があったので互いの両親が補ってくれたんだけどな……。

俺達の結婚とヒカリの事情を知った仲の良い同僚達もバリアフリーなんて素人な俺達のために、いろいろ情報を仕入れてくれた……。

ヒカリは退院してすぐに会社に退職願を出した……。

独り身だったら障がい者雇用ってことでそのまま働くこともできていただろうけど……俺と結婚した今であれば……妻と会社員の両立は、彼女には荷が重い。

本人は”家事に専念して暁を支えたい!”と決意が固かったので、その気持ちを尊重し……俺も新たな家庭を守るためにこれまで以上に仕事に打ち込みかつ、ヒカリを大切にしないといけない。


--------------------------------------


「……絶対に許さない」


 ヒカリと結婚してから1年弱……俺の目の前に現れたのは思い出すのもつらい元嫁である夜空。

どうやったのかは知らないが、夜空は俺の居場所だけでなくヒカリのことまで知っていた。

奴は俺を裏切者だの浮気者だの……一体どの口が言うんだ?って罵声を浴びせてきた。

まあそれくらいなら聞き流すことはできた……が。


「ハハハ!! こんな動く生ごみに何ができるって言うの? あっくん頭がどうかしちゃったんじゃない?」


 こともあろうに……夜空はヒカリのことまでも馬鹿にしやがった!!

俺は頭に血が上り……。


「おい! 俺の妻を悪くいうな! それ以上ごちゃごちゃ言うと警察を呼ぶぞ!!」


 俺はスマホを片手に、ここが公の場であることも忘れて怒鳴り声を出した。


「わかった……今は引くことにするよ。 でもこれだけは覚えておいて?

愛する人を裏切って浮気するような人間は……絶対に幸せにはなれないんだよ?」


 そう言い残して夜空は去っていった……まるで嵐のような奴だった。

あともう1度言う……一体どの口がそんなことを言ってるんだよ?

電車に乗る前にラインでヒカリに安否を確認したが……彼女は『大丈夫だよ』と返してくれたので、俺はそのまま会社へと赴いたのだった……。


--------------------------------------


 帰宅後……ヒカリから夜空がウチに来たことを聞いた。

どうやらあの後すぐ、俺の家に赴いてヒカリに会ったらしい。

夜空から言われた言葉をようやくすると……”暁と自分は愛し合っているから別れろ、寝取り女!”ってな感じだ。

いよいよあいつの思考が異次元じみてきた……。

取っ組み合いになりかけたらしいが……近所で仲の良いおじさんが助けてくれたらしい。

俺も改めて礼を言わないとな……。


「ごめんな……俺のせいで怖い思いをさせてしまって……」


「あなたのせいじゃないわ……」


「ともかく今のあいつは何をしでかすかわからない……少し厳しいけど、家に防犯カメラを設置しよう。

それと……あいつがまたヒカリの前に現れたら、遠慮なく警察に通報してくれ」


「わかった……あなたも気を付けてね」


「あぁ……」


--------------------------------------


 俺はヒカリの身を案じて業者に頼んで防犯カメラを設置してもらった。

万が一夜空がウチへやってきたら、この映像を証拠に警察へ被害届を出すつもりだ。

よく考えたら、今日会った時にさっさと警察を呼んでおけばよかったな……。

あの時は夜空がいきなり現れたことに驚愕して、冷静な対応ができなかった……。

だけどもし次に現れたら容赦しない!

ヒカリにまで危害を加えようとしたんだ……許せるはずがない!!


--------------------------------------


 それから何日か過ぎたある日……家の郵便受けに高校の同窓会の招待状が届いた。


「同窓会か……みんな元気かな……」


 高校時代に仲良くしていたクラスメイト達に会いたい気持ちはある……が、素直に行く気にはなれない。

俺にそう思わせているのは無論、夜空達の存在だ。

あいつらも一応、高校の同期だからな……。

いくら同窓会とはいえ、あいつらの顔は見たくない……まあ、夜空の顔は見てしまったけど……。

だけど……ほかの同期達と久々に顔を合わせたい気持ちも強い。

迷ったが……ひとまず幹事を任せられている元クラスメイトに電話で事情を話すことにした。


「……ってな訳でさ。 同窓会には参加したいけど……夜空達と顔を合わせるのは正直ごめんなんだ」


『そうだよな……あんなことがあったんだから仕方ないよ。 だけど……俺としては、暁には参加してほしいんだよ。 俺以外にもお前と話したい奴はいるしさ……もう招待状は出しちゃったけど……だからと言ってあいつらが来るとは限らないだろ?』


「まあそうだけど……」


『わかった! もしあいつらが来たら追い返すようにみんなにも言っておくよ! みんなだって事情は察しているし……きっと力になってくれる』


「悪いな……」


「気にすんなって! そもそも不倫したあいつらが悪いんだ。 お前は堂々と胸を張って帰ってこい!」


「わかった……じゃあ当日よろしく!」


『おう!!』


 不安はあるものの……俺は同窓会に参加することを選んだ。

万が一、夜空達が顔を出してきたとしても……同期達が追い返してくれる。

俺はみんなと信じて、久しぶりに地元へと戻った……。


--------------------------------------


『かんぱーい!!』


 同窓会当日……俺は高校の同期達と再会し、酒を酌み交わした。

会場は元生徒会長が務めている高級料亭だ。

高校卒業から結構経ったのに……みんなあの頃の面影を残したまま大人になっていた。

高校時代の話……現在の話……いろんな話に花が咲き、会場は大いに盛り上がった。

心配の種であった夜空達だったけど……あいつらは同窓会には現れなかった……。

俺が来ないと思ったのか……単純に同窓会に興味がなかったのか……。

まあどちらのしても、あいつらと顔を合わさずに同期達と飲めるのは嬉しい!


「暁! 今日はとことん飲むぞ! 付き合え!!」」


「おぉ!!」


 再会の喜びと夜空達がいない安心感で……俺も少々飲みすぎてしまった。


※※※


「ふわぁぁぁ……なんかすげぇ眠い……」


 2時間後……同窓会は無事に終了したのだが、酒を飲みすぎたせいか……俺はものすごい睡魔に襲われた


「飲みすぎだ馬鹿野郎! 明日には二日酔いを覚悟しておけ!」


「テメェもだ馬鹿!!」


 なんて言ったものの……立ち上がることすら危ういんだよな……。

飲んだと言えば飲んだんだけど……感覚的にはいつもより少し多めって感じなんだよな。

実際……意識や思考はそこまで不安定じゃない。

泥酔状態というよりも……徹夜明けの寝不足状態って感じだ。

まあどう違うんだ?って言われたら、答えられないけど……。

マジでこのまま帰れるのか心配になってきた。


「俺が送っていってやるよ。 こいつの実家、俺の家の近くだしさ」


 そう言って俺に手を差し伸べてくれたのは立花という元クラスメイトの男だ。

とは言っても、そんなに親しい間柄じゃないけどな。

あんまり人と関わりを持つのが得意じゃないタイプだったが、大人になってあか抜けたのかな?


「悪いな……立花」


「気にするな」


 俺は立花の好意に甘えることにした。


「じゃあお疲れ!!」


 俺はみんなに別れを告げ、立花が捕まえたタクシーに乗って会場を後にした……。

不覚にもというべきか……当然というべきか……タクシーにしばらく揺られた俺は眠りこけてしまった……。

まあ家に着いたら立花が起こしてくれるだろうし……実家には親父達もいるんだ……。

大丈夫だろう……。


--------------------------------------


「うっ!……」


 それからどれだけの時間が経ったのか……俺は目が覚めた。

覚めたとは言っても、若干二日酔いが回っているせいでまぶたが重く感じる。

でも肌に感じる感触から……自分がベッドの上にいることはなんとなく理解できた。

最初は俺の部屋のベッドかなと思ったけど……背中から伝わる弾力が明らかに違う。

鼻をなでるほのかな香水のような香り……耳に心地よい振動を伝えるクラシック風オルゴールなんて……明らかに俺の部屋にはないものだ。

それにおかしなことはまだある。

感触でわかったんだけど……俺はどうやら裸みたいだ。

パンツすらはいていない……。

それに……変な言い方だけど……下半身にどこか身に覚えのある妙なスッキリ感がある。

何がどうなっているんだ?

その答えは……ようやく開いたまぶたの先にあった……。


「おはよう……あっくん」


「!!!」


 俺の横には……裸の夜空が寝そべっていた。

まるで添い寝するかのように……。


「なっなんで……」


「あっくんが求めてきたんでしょう? 私を」


「やめろ!!」


 俺の頬を投げてくる夜空に嫌悪感を感じ、俺はベッドから飛び起きた。

その時、自分がいる部屋の間取りを見てなんとなくわかった……ここはラブホテルの一室だと……。


「よう、暁」


「暁さん、おはようございます」


 夜空のほかに、天樹と流までここにいた。

2人も裸だ……。


「なっ何が……何がどうなってるんだ!?」


 俺は必死に記憶を呼び起こそうとするが……どう頑張ってもタクシーに乗ったまでの記憶しかない。

そもそもなんで裸なんだよ!!

夜空達だけならともかく……なんで俺まで……。


「何を言っているの? あっくんはあのゴミ女を捨てて私の元に帰ってきたんだよ?」


「ふっふざけるな!! そんなことがあってたまるか!!」


 俺がヒカリを捨てて夜空の元に戻るなんて……あり得ない!!

だけど……だったらこの状況はなんなんだ?


「もう……昨日だって4人で楽しんだじゃない」


 そう言って夜空は自分のスマホの画面を俺に見せるように突き付けた。

そこに写っていたのは……夜空を取り囲むようにベッドで寝そべっている俺と天樹と流の姿だった。

そんな馬鹿な!!


「嘘だ……嘘だぁぁぁ!!」


 これは悪い夢だ……そうに決まってる!!

これが現実であってたまるか!!

頼む……頼むから……悪い夢なら、覚めてくれぇぇぇ!!

次は夜空視点です。

もうそろそろ私なりの夜空達への制裁に取り掛かりたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あんなことがあったわりに下半身不随の嫁を残してのこのこ同窓会に行くという危機感の無さ。。。 まあ、何かしら展開させるためには致し方ないのだろうけど。 数日しか経ってないのに。 拉致られ…
[一言] 展開上隙を作らないと話し進まなさそうだから仕方ないんだけど、 主人公は油断しすぎ。 ストーカー女に自宅ばれしてる時点で 奥さん残して同窓会で深酒はさすがに…… 今回は奥さんじゃなくて本人の…
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