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星 夜空③

夜空視点です。


「ねぇ流君……1ついい?」


「……なんでしょうか?」


「私も流君のことが好きよ?……1人の男性として……。

だけど……私はあっくんのことを愛してるわ。

それはわかってくれる?」


「はい……」


 拒絶されると思っているのか……流君の表情が一気に曇ってしまった。


「だけどね? 私はあなたの気持ちを受け入れたいと思っているの……」


「えっ? どういう……」


「あなたにだけ打ち明けるわ……実は私、少し前に天樹君に告白されてね? 

それからずっと男女の関係を持っているの」


「えっ? それは不倫ですか?」


「それは違うわ! 私はあっくんのことも天樹君のことも愛してるの……2人に不満なんてないし……お天樹君も私を略奪しようなんて考えていないから……」


「じゃあどうして……」


「私は2人の内、どちらかを選ぶなんてことはできなかった……だから決めたの。

2人の妻になろうって……」


「2人の妻?」


「そうよ? 私はあっくんの妻であり……天樹君の妻でもある……一妻多夫って奴かな?

あっくんには仕事が落ち着いたら話すつもりなの……」


「……」


「それでね? 流君がよければ……あなたを恋人として……ううん、3人目の夫として迎え入れたいと思っているの」


「さっ3人目の夫……ですか?」


「そう……私はあっくんと天樹君と流君の妻になって……平等に3人を愛する!」


「でもそれって不倫になりませんか?」


「勉強不足だよ?流君。 浮気とか不倫っていうのは欲望のためにパートナーを裏切ってほかの異性に乗り換える最低な行為でしょう? 私は誰とも別れる気はないし……夫婦で一緒にいられれば人生に苦労したってかまわない……。 ほらね? 全然違うでしょう?」


「……」


 流君はしばらく考え込み……そして意を決した表情で口を開いた。


「夜空さん……僕を……受け入れてもらえませんか? 3人目の……夫として……」


「フフ……そう言ってくれるって信じてたよ?」


 こうして私と流君は夫婦となった……戸籍上は赤の他人であったとしても関係ない。

これは私達の気持ちの問題なんだから。


「改めてごめんなさい……あんなことをしてしまって……」


「もう気にしてないよ? だって私達は夫婦なんだから……」


「フフ……そうですね」


 やっと流君の顔に笑顔が戻った……小動物のように愛らしく朗らかなその笑顔が私の選択が正しかったことを証明してくれた。


「それはそうと……そろそろパンツを履いてくれる? 目のやり場に困るから……」


「ごっごめんなさい!!」


 それから私達はあっくんにばれないように脱衣所を片付け……何事もなかったようにいつもの日常に戻った……。


※※※


「それじゃあ行ってくるから!」


「もう! 遅くまでアニメ鑑賞なんてしてるから起きれないんだよ?」


「悪かったって! それはそうと流は大学、大丈夫なのか?」


「はい、今日の授業は午後からですから……夜空さんに朝食まで作ってもらったので……ゆっくり食べてからここを出ます」


「そうか……あっ! やべっ! じゃあそろそろ行くから!」


「いってらっしゃい!」


 翌朝……遅刻ギリギリで目を覚ましたあっくんは大慌てで家を出ていった……。


「夜空さん……」


 朝食を済ませた流君が食器を片付けていた私の腰に手をまわしてきた。

なんだかお母さんに甘えてくる子供みたいで可愛い……。


「どうしたの?」


「あの……なんというか……僕……あまりよく眠れなくて……」


「そうなの?」


「僕……夜空さんとお付き合いさせてもらえるのが信じられなくて……あれは夢なのかなって……不安になって……」


「安心して……夢じゃないから……私は本当に流君の奥さんだからね?」


「じゃあ……証明してもらってもいいですか?」


「証明?」


「夜空さん……僕の”全て”をもらってくれませんか?」


 流君の言葉を意味を、私はすかさず察した……。


「私でいいのね?」


「あなたじゃないと嫌です……」


「わかった……」


--------------------------------------


 私はそのまま流君と寝室に行き……互いに衣服を全て脱ぎ捨て……私達はベッドの上で愛し合った。

流君はこの時が”初めて”で、私は家庭教師時代の頃のように……優しく彼に手ほどきをした。

まさか夫婦の寝室で3人もの男性と体を重ねるなんて思いもよらなかったな……。


「夜空さん……愛してるよ……」


「私もよ……」


 時間を忘れて欲望のまま互いの体を欲し……気が付いたらお昼を回っていた……。

流君はこの日、初めて大学の講義を無断欠席し……私との仲を優先してくれた。


「大学はいいの?」


「今は夜空さんと一緒にいたいんです……嫌ですか?」


「ううん……とっても嬉しいわ……」

 

 心だけでなく体まで繋がった私達の愛はより確かなものになった……。


--------------------------------------


 すっかり私との行為にハマってしまった流君とそのまま午後も愛し合い……空が夕暮れに染まった時間帯に彼は帰宅した。

私と離れるのがさみしいと子犬のように抱き着いてきたときは母性本能が刺激されてどうにかなっちゃいそうだった……。


「また会いに来て」


 私は流君に別れのキスをして見送ったのだった……。


--------------------------------------


「来たぜ! 夜空!」


「お邪魔します……」


「いらっしゃい! 2人共わざわざごめんね?」


 それから1週間ほど経ったある日……私は天樹君と流君に連絡して、家に足を運んでもらった。

理由はもちろん、天樹君に流君のことを話すため……。

ラインや電話でも良いかもしれないけど……こういう大事なことは、直接口で言うのが一番でしょ?

あっくんは今日から3日ほど出張で家を空けているから、私達に出くわすことはない。


「それでなんだ? 話って……」


 ソファに座るやいなや、天樹君が開口一番に切り出した。

隣にいる流君は察しているみたいで、無言を貫いている。


「天樹君……単刀直入に言うね? 私、流君を3人目の夫として迎え入れたの……」


「えっ? どういうことだ?」


「ほら……天樹君は私のもう1人の夫として私と愛し合っているでしょう?

流君も同じで……私の3人目の夫として愛し合っているの……」


「えっ? つまりは流も俺と同じく夜空のことが好きだったってことか?」


「うん……夜空さんから兄さんとのことは聞いた。 最初は戸惑ったけど……僕も同じように愛してくれるって……夜空さんが言ってくれて……だから3人目でも構わないから、夜空さんの夫になりたいって……そう思ったんだ」


「そうだったのか……」


 天樹君は目を丸くして驚きを隠せないでいた……無理もない話ね。

実の兄弟で同じ人を好きになって……どちらとも相思相愛の関係なんて……あまりないことなんだから……。


「天樹君……流君が私のことを好きなのは私も正直驚いたわ……でも、流君の想いは本物だったわ……。

彼も天樹君と同じで、あっくんと私の関係を壊す気はないって……。

だから、私は3人の妻として生きていきたいの……わかってもらえないかしら?」


「まあ……驚きはしたけど……別に夜空にフラれるって訳じゃねぇんだろ?

だったら俺は構わないぜ?

それに見知らぬ男ならともかく、血を分けた俺の弟が惚れちまったっていうなら、兄として受け入れてやるのが男ってもんだ!」


「兄さんありがとう!」


「ありがとう! 天樹君!」


「流! 暁と一緒に夜空を幸せにしような!」


「うん! 僕、頑張るよ!」


 天樹君は私と流君の想いを受け入れてくれた……正直不安はあったけど、それ以上に信じていた。

天樹君ならきっとわかってくれるって……。

流君だって……天樹君とあっくんのことを受け入れてくれた……。

やっぱり愛の力はみんなの心を繋いでくれるのね……。


「夜空! 暁はしばらく出張で帰らないんだろ?」


「うん」


「だったら帰るまでに、3人でたっぷりとヤろうぜ!」


「もう天樹君たらそればっか……」


「いいじゃねぇか……俺達は夫婦なんだろ?」


「仕方ないな……流君もどう?」


「ぼっ僕もぜひ!」


「じゃあ3人で愛し合いましょうか!」


 私達3人はあっくんが帰ってくる3日後の夕方まで、夫婦としてこの家で愛し合った……。

夫が2人いる空間はとっても新鮮で……とても心地よい時間を過ごせた……。

一対一で愛し合う夫婦というのもいいけど……2人の夫に挟まれるというのも極上なものだ。

私に少しでも長い間愛されたいと必死に求めてくる流君と獣のように荒々しく私を求めてくる天樹君。

兄弟であっても対極的な2人の夫……私は本当に幸せ者なんだと改めて自覚した。

だけど同時に……あっくんがこの場にいない寂しさもあった。

もしもあっくんが加わって4人全員で夫婦生活を送れたら……どれほど幸せか……。

そろそろあっくんも仕事がひと段落するって言ってたから……もう少し経ったらあっくんにもこのことを伝えよう……。

天樹君も流君もわかってくれたんだから……きっとあっくんだってわかってくれる。

誰よりも長く私と一緒にいてくれた男性なんだから……誠心誠意、話せばわかってくれるわ。


--------------------------------------


 そして天樹君と関係を持って1年……流君と関係を持って半年が経ったある日……。

私達3人は家に集まり……帰宅してくるあっくんを待っていた。

あっくんの仕事がようやく落ち着いたようなので、今日みんなで話し合おうと決心した。


「ただいま~」


「おかえりなさい」


 帰ってきたあっくんを私はいつものように出迎えた。

天樹君と流君がこの場にいたことには驚いていたみたいだけど、特に気にしてなかったみたい。


「あっくん、話があるの」


「話? なんだよ改まって……」


 私は床に頭をこすりつけ……土下座の姿勢であっくんに全てを話した……そして。


「私は……3人の妻になりたいの!!」


 私は自分の素直な想いをあっくんにぶつけた……。

戸惑いはするだろうけど……きっとあっくんはわかってくれるって信じてた。

だって私達は夫婦なんですもの……。


「ふっふざけんなっ!! なんで不倫を続ける嫁と結婚生活を続けなくちゃいけないんだ!

なんの罰ゲームだよ!!

慰謝料は当然もらうとして……離婚もする!!」


 ところが……あっくんから帰ってきた返事は私達の想像を超えた残酷なものだった……。


「離婚なんて……やめてよ! 私のこと、愛しているんでしょ!?」


「不倫している嫁を愛せる訳がないだろう!? しかもよりによって俺の幼馴染とその弟まで……だいたい3人の妻になりたいってなんだよ!? 気持ち悪い!!」


「そんなひどい!……あっくんならわかってくれると思って正直に話したのに……」


「わかる訳ねぇだろう!! 俺を裏切って2人と不倫しておいて4人と付き合いたいとか、乙女ゲームの主人公みたいなこと言ってんじゃねぇよ!! クズ女!」


 あっくんに暴言を吐かれた瞬間……頭が真っ白になった……。

今まで小さな喧嘩はしたことがあったけど……こんな風に私を罵る言葉なんてあっくんは使ったことはなかった……。

ショックで体中の力が抜けてしまった……愛する夫からあんなことを言われれば当然だ。


「いい加減にしろよ!」


 頭に血が上った天樹君が拳までふるってくれた……暴力は良くないけど私を想ってしてくれたことだ。

流君も必死にあっくんを説得するけど……それでもあっくんは私達を受け入れてくれないと言う。


「後日弁護士と俺達の両親を交えて改めて話をしよう」


 あっくんはそう言い残して家から出て行ってしまった。

私達は必死に後を追いかけたけど……見失ってしまった……。


--------------------------------------


 そして後日……私達はあっくんの実家に呼ばれた……。

そこにはあっくんとアッ君の両親……そして私達の両親とあっくんが雇った弁護士がその場に居合わせていた。

あっくんはあろうことか……その場でも私と離婚したいと言い出してきた。

私は慰謝料は払うから離婚だけはやめてほしいと何度も懇願したけど……あっくんの意思が変わることはなかった。

10年以上も一緒にいた仲なのに……愛を誓い合った夫婦なのに……どうして離婚しないといけないの!?

あっくんは私が不倫したからだと言っているけど、私は不倫なんて断じてしていない!

私はあっくんを裏切っていないし、3人を心から愛している。

それなのにあっくんは不倫した私とは結婚生活を続けられないと訳の分からないことしか言わない。

一体どうしてしまったの!? 

天樹君と流君もあっくんを何度も説得するけど……聞く耳すら持ってくれない。

その上、両親までもが……あっくんの意思に賛同すると言い出す。

娘である私の幸せを誰より願っている両親が、どうして子供の味方をしてくれないの!?


『いい加減にしろ! 何が3人の妻だ! この恥知らず!!』


『お願いだからこれ以上私達を失望させないでちょうだい!!』


 両親からそう叱責されるも……はっきり言って意味が分からない。

何が恥なの? 何に失望しているの?

あっくんも……何がそんなに不満なの?

一体何がいけないっていうの?

誰か教えてよ!

どうすれば……私達4人は幸せに暮らせるの!?


--------------------------------------


 そんな私の問いには誰も答えてくれず……結局あっくんと離婚するハメになってしまった。

あの後両親からも、勘当され……同じく勘当された天樹君と流君と肩を寄せ合うように安アパートに身を寄せることにした。

あっくんにはあれから何度も話し合おうとしたけど……あっくんは私の顔を見ただけで逃げ出すようになってしまった。

どうして逃げるの? 私達は夫婦でしょう?

たとえ法的に離婚していたとしても……私達が愛し合った事実は永遠に消えないはず!!

そう信じていたのに……あっくんは私に黙って他県に異動してしまった……。

どうしてそんなことをするの?

私達はネットやSNSなどを利用してあっくんの居場所を探し始めた……。

もう1度話し合えばきっとわかってくれる……そう信じていたからこそ、諦めずに探すことができた。

だって私達は愛し合っているんだもの!!


--------------------------------------


 離婚してから3年後……やっとのことであっくんの居場所を突き止めることができた。

そのきっかけを作ってくれたのは……私達が雇った探偵さんだ。

私達は必死に働いて稼いだ給料から3人で依頼料を出し合い……探偵さんにあっくんを探してくれるように依頼した。

やっぱり人探しは私達みたいな素人よりも、プロに頼むのが一番だ。

ちょっとがめつい探偵さんだったから時間が掛かったけど……ようやくこれであっくんに会える。

そう思っていたのも束の間……探偵さんが集めた資料で信じがたい情報が飛び込んできた。


「えっ!? あっくんが再婚している!?」


「えぇ……仕事上で知り合った女性のようです……名前は星 ヒカリ、27歳。 今は寿退社して専業主婦をしているようです」


「嘘だ……信じられない……」


 あり得ない! あっくんが私以外の女性を結婚したなんて……そんなの認められるわけがない!!

だけど探偵さんが集めた証拠の数々が、それを事実だと私に告げてくる。

信じたくない……だけど信じざる負えない。

あっくんは私を裏切って……別の女性と浮気したんだ……。

ドラマや漫画とかで見かける夫に裏切られた妻って……こんなに苦しい思いをしていたのね……。

みんな夫を心から憎んでいたわね……当事者になった今ならわかる……私もあっくんが許せない。

だけど、信じたいと思う心もある。

だから私は……あっくんに会いに行くことにした。

直接アッ君の口から真実を聞くために……。


次話も夜空視点です。

回想がひと段落したので、ようやく1話目から止まっていた話を進められます。

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