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奏石 天樹③

天樹視点です。

これで天樹の話は最後です。

普段以上に勢いに任せました。

 警察に逮捕された俺は留置所にぶち込まれた……。

そして数ヶ月後……俺は流と共に裁判に掛けられた。

夜空は入院している警察病院から直接裁判所に来る予定らしいが、出廷前に受けている検査が長くなって少し遅れるらしい。


「それでは開廷します」


 裁判が始まった……夜空が到着するまでに事件のあらましを整理する意味も含めて進めていくらしい。

被害者は暁で俺達は加害者……暁の弁護士から俺達が犯した犯罪の内容とやらを淡々と話していく。

証拠を山ほど提示し、その上証人として立花が証人席へに立ちやがった。


「立花テメェ!! 裏切者が正義ヅラしてんじゃねぇよ!!」


 夜空から金を受け取ったくせに、俺達を裏切って暁に味方する立花に吠えるも……周りにいた刑務官に取り押さえられた。

正当な文句すら言えないのかよ!?

流は俺の隣で震えるばかりで……こっち側の弁護士は暁達の主張を素直に受け取り、全面的にこっちが悪いという姿勢を崩さない。

弁護士のくせになさけねぇ!!


「俺達は何も悪いことはしてねぇ! ただ夜空を裏切った暁に当然の制裁を与えただけだ!

そもそも男のくせにレイプだのなんだの騒ぎやがって!! 俺達に文句があるなら拳で語れよ!!

弁護士だの裁判だの……男にくせにやることが汚ねぇんだよ!!」


 裁判官から発言を許され、証人席に立った瞬間……俺は暁に向かって言いたいことをぶちまけた。

だが……言いたいことの半分も言えず、裁判官や刑務官が強制的に俺を被告席に押し戻された。

暁の野郎は呆れたと言わんばかりに俺を半眼で見つめてきやがった。

俺をバカにしやがって……。


※※※


 暁の主張が一方的に通っていき、もう俺達に逃げ場はないと言わんばかりに裁判所内の空気が有罪一色に染まる。

その威圧に負けたのか、隣にいる流はビビってうずくまっている。

だが俺はくじけねぇ!!

俺には愛する妻が……夜空がいるんだ。

簡単に膝を折ってたまるかよ!!

俺は自分を奮い立たせようと……何度もそう心の中で言い聞かせていた。

俺には夜空がいる……それだけが今の俺を作っているんだ。


※※※


「被告……証言台へ」


「はい……」


 そしてついに……検査を終えた夜空が法廷に来た。

彼女の姿を目に映したのは逮捕前だから随分と懐かしく思えてくる。

ところが……証言台に立った夜空の顔を視界に捕えた瞬間、俺の心にはっきりと強く浮かび上がった感情があった。


”キモッ!!”


 それは喜びでも愛しさでもなく……ただただ気持ち悪いという嫌悪感だった。

夜空の美しい顔は事故で受けたケガを縫合したと思われる縫い目があちこちにあり……まるでフランケンシュタインだ。

顔や体には痛々しい傷跡が多少距離がある被告席かでもちらほら見える。

愛する女が大けがをしているんだ……本来は可哀そうだと思う場面かもしれないけど……俺は心底気持ち悪いと思った。

そして……嫌悪感と同時に……あれだけ強く熱い夜空への想いが……霧のようにスゥーと俺の中から消えていった。

そして同時に思った……。


”俺は今まで何をしていたんだ?”


 俺は夜空の何に惹かれていたんだ?

今見ればそこまで可愛くもないし、俺と流と暁の妻になりたいとかほざく頭のおかしい女の……何がそんなによかったんだ?

変わり果てたとまでは言えないけど……何度見ても今の夜空の顔に惹かれる要素なんぞ全く見えない。

俺は流とこんなどこにでもいそうな女を共有して、くだらねぇ一妻多夫ごっこを全力でやってきたのか?

あんなフランケン女のために俺は……犯罪まで犯したってのか?

……アホらし。

なんか……冷めたわ。

つーか目が覚めた。

良い女なんて星の数ほどいるし……別れた暁を執拗に追いかけて俺らとも夫婦の真似事を続ける頭花畑女なんぞに人生捧げるなんて、マジ無意味だよな。

そりゃあ……最初は理想の女だと思っていたぜ?

でもさ……あんなフランケンみたいな顔にボロボロの汚らしい体を見てしまったら……100年の愛も冷めるってもんだ。

整形って手もあるけど……俺、整形する女は生理的に受け付けないんだよな。

不細工のくせに大金掛けて顔を作り替えるなんて、哀れすぎだろ?

はぁぁぁぁ……なんか夜空のために反論するのも馬鹿らしくなってきた。

もう潔く暁の主張を受け入れて、さっさと刑期を終えてシャバに出ちまった方が得だな。

俺はそう思い直し、大人しく罰を受ける姿勢に切り替えた。

まあ冷めちまったもんは仕方ねぇ……今まで色々言って来たけど、ようは……アレだな。


”女は外見が全て”


 これに尽きるな!


--------------------------------------


 そして裁判の結果……俺達は有罪判決を受けて、刑務所にブチ込まれることになった。

まあ共犯者という立場だから、夜空よりは刑期が短い。

さっさと刑務所を出たら、夜空のことなんぞ忘れて新しい女を探しに行くとしますかねぇ!


--------------------------------------


 それから数年後……俺は一足先に刑期を終えて自由を手に入れることができた。

あの夜空のことだ……俺が冷めたと聞けば、暁のように追いかけてくるかもしれねぇ……。

勤めていた工場はクビになっちまったし……新しい仕事先を探さないといけない。

かといって実家には帰りづらいし、縁を切った俺を素直に両親が受け入れてくれるとは考えづらい。

俺は口座にためていた自分の貯金を全て下ろし、夜空の手が届かない新天地へと向かった。


--------------------------------------


 俺が新天地として選んだ場所は、暁が現在住んでいる県以上に故郷から離れている。

ここなら夜空に見つかる心配はないな。

俺は安アパートを借り、以前の工場よりもそこそこ給料の良い工場に勤務することができた。


 プルルルル……。


「んっ? げっ!」


 工場勤務を初めてから数ヶ月経ったある日の昼休み……俺のスマホに着信が入った。

相手は……夜空だ。


「しまった……ブロックするの忘れてた」


 とは思うも、黙っていなくなるっていうのもあんまり良いもんじゃねぇな。

まあ最後くらいこの電話できちんと言ってやるか……俺って紳士だろ?


「もしもし……」


『あっ! 天樹君!? 今どこにいるの!? 今帰ってきたら、天樹君の私物が全部なくなっているし、貯金も下ろしているみたいじゃない!!』


 通話ボタンを押して早々……受話器越しに金切り音を出す夜空。

マジでこんな女の何に惹かれたんだ? 俺。


「あのさ夜空……悪いんだけど、俺お前と縁切るわ」


『はっ!? 何を言っているの!?』


「なんかさ……冷めたわ。 お前と今後も一生いる自信ねぇし……お前を愛し続ける自信もなくなった」


『ふっふざけないでよ!! 私のこと……愛しているって言ってたじゃない!! 俺には夜空しかいないって……何度もささやいてくれたじゃない!!』


「まあそうなんだけどさ……冷めちまったもんはしょうがないだろ?

今の夜空に魅力なんて全く感じないし……それに実はさ、最近新しい彼女ができたんだよね」


 実はこの電話を受ける2週間くらい前……俺は同僚が開いた合コンで安奈あんなという2つ年下の美人と知り合い、現在付き合っている。

彼女を一目見た瞬間……夜空とは比較にもならない運命ってやつを感じたんだ。

俺が本当に求めていた女は安奈だったんだって……今ならはっきりとわかる。


『は? 女がいるの?』


「そうそう……すげぇ美人で、スタイルも抜群なんだぜ?」


『ふっふざけないでよ!! 私と言うものがありながら女を作るとか、ただの浮気じゃない!!』


「はぁ? いやいや……そもそも俺ら浮気なんて呼べるような関係性してねぇだろ?

言ってみればほとんどセフレ関係じゃね?」


『なっ何がセフレよ!? 私は本気であなたを愛していたのに……』


「愛していたって……3股女が何純情ぶってんだよ。 だいたい流がいるんだろ?だったらあいつと一緒になれば良い話じゃねぇか」


 あの時は普通に受け入れていたけど……今考えたら、夜空がやりだがっているのはただの3股じゃねぇか。

それなのに、”私は3人を愛してる”とか純情ヒロインぶってふざけたセリフ吐きやがって……脳みそあんのか? こいつ。


『この……裏切者!! あんたなんか地獄に堕ちろ!!』


「おぉ怖い怖い……とにかく、俺はもうお前のことは完全に冷めているし、新しい女もいるんだ。

もう電話もラインもブロックするから、もう俺に関わるなよ? メンドくせぇから」


 俺は通話を切り、宣言通り夜空の連絡先をブロックした。

ついでに夜空にご執心な流もブロックしておくか……。

暁のように探偵を使って俺を探す力なんて、もうあいつらには残ってないだろうし……。

俺の幸せが脅かされる心配もないし、夜空の馬鹿に付き合う必要もない。

俺は……自由を手に入れたんだ。


--------------------------------------


 それから……20年の歳月が流れた。

俺は安奈とデキ婚し、1人娘の沙耶さやを授かった。

安奈は専業主婦となり、俺は2人を支えるために変わらず工場に勤めている。

俺と安奈は結婚しても変わらず熱々だし、18歳の沙耶は俺にきつくあたるけど……年頃ってやつだからしかたねぇ。

夜空や流、暁とはあの裁判以来会ってもいないし連絡も取っていない。

理由もないし、俺には愛する家族がいるからな。

愛する家族に囲まれるってことが……こんなに良いものだとは知らなかったぜ。

そんな幸せが……これからも続くと本気で信じていた。


--------------------------------------


 「ゲホッ! ゲホッ!!」


 俺は今……病院のベッドに上にいる。

症状は色々ある。

呼吸困難になりそうなほどひどい咳……40度近くの熱……頭が割れるような頭痛……。

その要因となっているのは……勤めている工場で扱っている製品。

それに部品として使われている金属には、人体に有害な物質が含まれていたらしく……工場で長期間その金属粉を吸っていた俺を含めた工場関係者達が体調を崩し、中には死んでしまったやつもいる。

そんな危ない金属を用いた理由は言うまもなく、利益だ。

その金属は有害だが生成は普通の金属よりも安く済む。

これは工場を運営していた上層部の人間がやったことだと、ニュースで知った。

すでに警察の調査が入り、事件に関わっていた人間は逮捕されていった。

製品の回収にも動いているらしいが、すでに購入者の中で軽症ではあるが、症状が出てしまっている人間が何人かいるらしい。


--------------------------------------


 そして……俺自身は症状がかなり重く、はっきり言って手の施しようがないらしい。

要は……もう長くないってことだ。

最初は納得できなくて、喚き散らしていたが……時間と共に現実を冷静に受け入れることができた。


「あなた……」


「安奈……」


 俺の身を案じて安奈と沙耶が病室まで来てくれた。

俺にはもう……起き上がる力はない。

声もささやくような小声でしか話せなくなっている。

なんとなくだが……もうすぐ迎えがくるみたいだな。


「安奈……沙耶……すまねぇ」


 2人を残して死ぬのはマジでつらいが……家族のために必死で貯めた貯金と生命保険でしばらくは2人でも生活できるはずだ。


「俺はもうダメそうだ……だけど俺は……お前たちを心から愛している。

アッチに行っても、お前達の幸せを祈っている」


 愛する妻と娘に見送られてこの世を去る……それはそれで悪くねぇ最期だな。

安奈……沙耶……俺はお前達を……。


ガラガラ……。


「よう! 安奈。 野郎はくたばったか?」


 家族水入らずの空間に……突然知らない男が土足で踏み込んできた。

高級そうなアクセサリーや服に身を包んだいかにも金持ちって感じの嫌味な野郎だ。


「ちょっと直哉なおや! 外で待っててって言ったでしょ?」


「待ちくたびれちまったんだよ……つーかまだくたばってなかったのか?」


「もうすぐよ、だから外で待ってて」


 直哉と呼ばれた男は安奈の肩になれなれしく手を置き、嫌な笑みを浮かべて俺を見下ろした。


「あっ安奈……誰だよそいつ」


「あぁこの人はね? 直哉。 私の彼氏よ」


「……は? 今なんて……」


「彼氏だって言ってんの。 先に耳が死んだの?」


「どっどういうことだ……まさかお前、浮気してたのか?」


「浮気? それはあなたの方よ。 私の愛する人はずっと直哉だけであんたのことなんか愛したことは1度もないわ。

いわば浮気相手はあなたの方よ……ちょっちょっと直哉……」


 直哉とかいう男はいきなり安奈の顔を引き寄せ、俺に見せびらかすようにキスしやがった。

安奈も嫌なそぶりを見せるどころか、直哉の頭に腕を回して情熱的なキスをしやがった。

もうそれだけでこの2人が深い関係であることは明白だ。

そして同時に、裏切られた怒りが俺の中で爆発した。


「おっお前ら……ふざけるな!」


 飛び掛かってぶちのめしたいが、体が全く言うことを聞かない。

もう迎えがすぐそこまで迫っているってことか……。


「さっ沙耶! お前もなんとか言ってやれ!」


 俺は沙耶に向かって残り少ない力で叫んだが……沙耶はニヤりと笑って俺にこう返した。


「うるさい……さっさとくたばれ、無能ATM」


「さっ沙耶?」


「マジで早く死んでくれない? あたしはあんたの遺産とか生命保険にしか興味ないから」


「なっ何を言って……」


「ハハハ!! 言うじゃねぇか! さすが”俺の娘”だ」


 豪快に笑う直哉の発言の中に……耳を疑う言葉が混じっていたのを俺は聞き逃さなかった。


「おい待て……俺の娘……だと?」


「なんだ? マジで気づいてなかったのか? 沙耶は俺と安奈の娘だ」


「えっ?」


「DNA検査も済ませているわ……沙耶とあなたは赤の他人よ」


 衝撃の事実に俺は言葉を失った……当人である沙耶は全く驚くそぶりも見せず、どうでもよさそうにスマホをいじっている。


「沙耶……知ってたのか?」


「それがどうかした? あたしのお父さんはここにいる直哉さんだけ、あんたのことは金を運ぶATMとしか思ってないわ」


「そんな……なんで……」


 つまり……安奈は俺に托卵していたってことか?

しかも沙耶自身もそれを知っていて……俺を騙し続けていたってのか?


「ねぇ天樹……托卵ゲームって知ってる?」


 キスを終えていつの間にか直哉と腕を組んでいた安奈が、パニックで頭が真っ白な俺にそんな言葉を投げかけてきた。


「托卵……ゲーム……」


 それには聞き覚えがあった。

随分昔……どっかの金持ち共が博打感覚で托卵を企てたとかなんとか……結局なんかの拍子にそれがバレて、関係者全員転落していったらしい。


「世間に露見こそしたけど……ゲーム自体は今もなお、上流階級の人達の中で流行っているの。

規模はかなり小さくなったけど……掛け金は結構なものよ?」


「まっまさか……」


「察しがいいわね……そう、あなたはゲームの駒よ。 本当は沙耶が20歳になるまで夫婦でいるつもりだったけど……その辺はあなたの遺産で補充することにするわ」


「ホント、あと2年で最高金額に達するはずだったのに……マジで使えないおっさんだわ」


「おっお前ら……」


「まあいいわ……これでようやくあんたとのくだらない家族ごっこを終えて直哉と幸せに暮らせるようになる。

金のためとはいえ……好きでもない男と夫婦を続けるのは本当に苦痛だったわ」


「よく言うぜ……しょっちゅう俺に会いに来たくせに……」


「つーか、それで浮気に気づかないとか馬鹿すぎでしょ?

ホント……これと血が繋がっていなくてよかったわ」


 3人は俺を嘲笑い……罵声を浴びせてくる。

そして……俺の中で……これまで家族として過ごしてきた時間や思い出が……崩壊していった。

なんで……なんでだよ……。


「はぁ……もういいわ。 直哉、行きましょう」


「おいおい良いのか?」


「どうせもうすぐ死ぬだろうし……わざわざ見送るのもメンドくさいわ」


「あたしも賛成! 今日、彼氏と会う予定だし」


「そういえば沙耶……お前もゲームに参加するんだってな!」


「そうだよ? 駒に仕えそうな男はもう見つけているから……今、彼氏に仕込んでもらっているんだよね」


「駒は慎重に選びなさいよ?」


「大丈夫だって……こんな中途半端に死ぬポンコツよりはマシなの選んでるからさ。

しかも馬鹿すぎてあたしに彼氏がいるのにも全然気づいていないいんだよね~」


「うまく言ったらちょっとくらい掛け金分けてよ?」


「う~ん……考えとく」


「ハハハ! 全く大した親子だぜ!」


 もはや俺など存在していないかのように……3人は病室を出ていった。

俺の中にはマグマのように煮えたぎる怒りと殺意がこみあげていた。

今すぐにでもあいつら3人を……家族を裏切ったあいつらをぶち殺してやりたい!!

俺にはその権利があるはずだ!!

なのに……俺の意識はどんどん薄れていく……。

俺は……死ぬのか?

あんなクズ共に大金を残して……あんな裏切者共に馬鹿にされたまま……。

そんなのおかしいだろ!?

なんで家族のために堅実に頑張ってきた俺が死んで……俺を裏切り続けた安奈が……俺に托卵を仕込んだあのクズ野郎が……育ててきた恩を忘れて今まさに誰かに托卵してようとしている沙耶が……幸せに生きていくんだよ……。

悪は正義の名のもとに制裁を受けるのが……当然の成り行きだろ?

なんでこんなふざけた話になるんだよ!!

俺は一体……なんのために……この20年間……あいつらに尽くしてきたんだよ……。

俺頑張ったよな?

そもそも夜空だってそうだ……。

俺があんなに尽くしてきたっていうのに……バカみたいな逆ハーレム思想を捨てなかった。

夜空が俺だけを愛してくれていたら……俺だって冷めたりしなかったはず。

どいつもこいつも……女って生き物はどこまでクソなんだよ!!

俺の人生を……あいつらはなんだと思ってんだよ!!

いやあいつらだけじゃない!!

暁だってそうだ……あいつがきちんと夜空を繋ぎとめていれば……俺はあんな女と一緒になることもなかったんだ。

流もだ……あいつがもっと早く俺のように正気に戻ってくれていたら……そもそも夜空なんぞに惚れていなければ……俺を救おうと頑張れたんじゃねぇか!?

親父もお袋も……俺がこんな目に合っているのに、何をやってんだよ!!

俺が勤めてきた工場だってそうだ……。

工場長が俺を雇ったりしなければ……上層部があんな欲に走ったりしなければ……俺はこんなところで死ぬことはなかったんだ。


「なんだよ……よく考えたら俺の周りにまともな人間が1人もいねぇじゃねぇかよ……」


 そうだ……悪いのは俺の周りにいた人間全員だ!

そのせいで俺の人生は狂ってしまった。

俺はこの世で最も可哀そうな……被害者だ!!

マジで生まれてくる所間違えたわ。

死ぬべきは俺じゃない!

俺をこんな目に合わせたあいつらだ!!


「どいつもこいつも……みんな地獄に堕ちろ」


 俺は呪詛のようにそうつぶやいたが……そもそもこの世界そのものが地獄なんじゃないか?

俺のような清く正しい人間が死に、クズ共がのさばる世界が正常な訳がない。

はぁ……もう何もかもが馬鹿らしい。

俺の意識は……闇に沈んだ。


 永遠に……。



次話は流視点です。

次も1話にまとめたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] こうなると最後に出て来た3人のざまぁも欲しくなる
[気になる点] 天樹がクズ過ぎてやばいなと思ったら輪をかけてクズな奴が更にいてそいつに潰されるというなんとも締まらん話に。 いや、良いんだけど、こいつらが得すんのかと思ったら結局モヤモヤしたまま。 そ…
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