見習い修道女の献身
父には淋しくなったら、いつでも修道院から屋敷に戻るように言われていたのですが、祈祷と学習に忙しく、また同い年と二つ年上の見習い修道女様が話相手になってくれるので、そのような心配は無用でした。優しい祖父母、伯父、伯母、やかましい従兄弟に会いたい気持ちはありましたが、手紙のやり取りがありました。
忙しすぎるということもありませんでした。祈祷と学習は他の人々と同じように取り組めましたが、労働はさほどさせてもらえなかったからです。刺繍、機織り、糸紡ぎ、写本、挿画描きなどの修道院に収入をもたらすためのお仕事は少し体験させて頂けましたが、炊事、洗濯、掃除は全くさせてもらえませんでした。
自分の部屋と服の掃除と洗濯すら、侍従としてついた見習い修道女様がされました。
「お嬢様の身の回りのお世話をさせていただく事が、私の努めの一つだと院長様に命じられております。お嬢様、私に義務を果たす機会をお与えください。お願いいたします。」
こうまで言われてしまうと、お任せするしかありません。
「他のお仕事でお疲れのところ、私に世話を焼くのはつらくはありませんか?」
私の本心です。
「他の努めは減らされております。御心配に及びません。」
しかし、修道院全体で配慮されていました。
部屋には、いつの間にか鏡が設置され、見習い修道女様がブラシで私の髪をとかすのが日常になりました。
「長く美しいウェーブのかかった髪が羨ましいです。私はずっと短髪ですし、伸ばすことがあっても、お嬢様のような髪にはなりません。」
そう言われると申し訳なくなって、見習い修道女様のお世話は拒絶できませんでした。気づくと、着替えも手伝われるようになりました。
「お嬢様の髪をとかしているのが、祈祷よりも充実した時間なのです。」
鏡に恍惚とした見習い修道女様の顔が映っていました。彼女にとって私は愛玩動物なのであろうと、このときは理解していました。
「特別な扱いの私に腹が立ちませんか?」
私は正直に聞きました。
「修道院長様にお嬢様を任せると命じられたときは、正直、困惑しておりました。しかし、お嬢様を一目見たときから、お世話をさせて頂けるのが光栄になりました。」
殿方に言われたいお言葉が返ってきました。
いつも一緒にいましたから、身の上話も自然としました。見習い修道女様は、物心ついたときには修道院にいて、両親については何も知らされていないと明かしてくれました。
「父母に愛された私を、妬ましく感じませんか?」
私は躊躇いながら聞きました。
「そんな事はありません。お嬢様は愛を受けるのに相応しい存在です。私めの愛も、どうか御受け取りください。」
見習い修道女様は、私の耳元でささやきました。
「たまには一人の時間が欲しいとは思いませんか?」
私に甲斐甲斐しく世話を焼きすぎで、疲れてしまいはしないでしょうか。
「どうか、そのようなことはおっしゃらないでください。私にはお嬢様と一緒に過ごす時間が幸せなのです。」
見習い修道女様の涙が見えました。私には見習い修道女様のお言葉は、修道院長様の命によるものではなく、本心のように思えました。
見習い修道女様は無用に話かけて来たりはしませんし、いつも一緒でも私は困ることはありませんでしたから、私は見習い修道女様の親切に甘えることにしました。見習い修道女様の使命が私に世話を焼くことならば、私は彼女に甘えることで彼女の尊厳を守るべきでしょう。
見習い修道女様は、修道院内の人間関係に詳しかったです。誰と誰の仲が悪いと言う話以上に、誰と誰の仲が過度によいかについてもでした。
私は確認しました。
「修道院長様は女同士でも、そういう関係になるのを禁止されていましたよね?」
見習い修道女様は、ベッドに寝そべっている私の足の裏をマッサージしながら笑顔で答えました。
「目立たないようにやれと言われたと理解しております。」
修身と言う意味で、恋愛は障害になります。しかし、この修道院の修道女たちの多くは、信仰に身を捧げるためにここに来たのではありません。修道院長様も、見て見ぬふりをしようと決めたのでしょう。他人の信仰心を咎める資格は私にはありませんでした。だんだんと見習い修道女様のなすがままになってきた自分を律することに集中する必要がありました。
「足裏マッサージを誰に教わったのでしょうか。とても気持ちがよいです。」
「本当ですか。お嬢様に御満足いただけて感激です。誰に教わったのかは申し上げられませんが、もっと気持ちよくなるように務めます。」
見習い修道女様は私もふくらはぎ、そしてふとももにオイルをつけた指をはしらせます。
「ぁん」
変な声が出て、身体がびくっと動いてしまいました。ずっと見習い修道女様が私の傍にいて、私は自分の身体を慰めることができず、身体が敏感に。
「力を抜いて、私にお任せください。」
見習い修道女様は構わずフットマッサージを続けました。
「お嬢様のためであれば、私はどんなことでもする心の準備ができています。何なりとお申し付けください。私の指先も、唇も、舌先も、この身すべてが、お嬢様のものです。」
見習い修道女様のお気持ちは拒絶できませんが、痴態をさらす勇気もありませんでした。
「修道女の皆様は…その…どこで、逢瀬を重ねていらっしゃるのですか?」
気を紛らわそうと話題を探したのですが、そういうことしか考えられないように。
「寮ですると、声が漏れてさすがに罰せられるので、ひと気のない場所を探すそうです。ある人は、敷地内にある古い水車小屋を使うと言っていました。明日、見に行かれますか?」
「ひゃっい」
ふとももの内側を付け根のほうまで触られすぎて、同意することになってしまいました。
「お嬢様とあの水車小屋にいけるなんて、今夜は興奮して寝られそうにありません。」
私は不安で寝られそうにありませんでした。




