記憶と黒靄
中学3年生、15歳の天音雫です。
受験に追われつつ夢を追いかけます。
何かと至らない点があると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
同じ、同じだ。
でも、同じなら、輝留と同じなら雅は神ではないのか。
そもそも姉を乗っ取った雅は何故今葵を助けているのか。
最初から罠だったのか。それとも、ーーーー
葵が足りない脳を回転させ答えを出す前に、雅の声が、上から、微かに聞こえた。
「ーーーーけ!」
「へ、な、何て!、」
焦りと無力感と無理解に苛まれ、半分精神を壊しかけた葵は必死で聞き返す。
「ーーーー行け!このいけすかねえ餓鬼は俺が引き留めといてやるからよ!桜助けてこのふざけた城から出て渚冬のとこまで逃げろ!」
「っ、でも、雅、さん、はっ!」
葵の困惑の叫びに雅は呆れと怒りが、混じったような声をあげた。
「他神のこと気にする暇ねぇだろうがよ!」
その声を聞いた瞬間、葵は走り出していた。ーーーー上から、無数の黒い雪と靄が、降ってきたから。
頭の理解が追いつかず、半分泣きそうになったその時から、葵の記憶は曖昧になった。
しかし、葵は覚えている。
自分が全身のエネルギーを全て手に宿し、自分の目の前を邪魔するかの如く立ちふさがる黒い靄を全て風で吹き飛ばしたのを。
上から援護のように黒い雪が黒い氷柱となって葵を捕まえようとする黒い掌を無数に穿ったのを。
意味を為さぬ言葉を叫びながら桜が閉じ込められている黒い靄で、できた檻の前に辿り着き、落ちていた黒い氷の欠片でその檻を突き破ったことを。
そして、桜を抱えた瞬間、城が前後左右が分からなくなるほどの揺れに襲われ、葵は桜を強く抱きしめたまま地面に倒れた。
強い揺れに平衡感覚が乱され、脳が蹂躙されるかのような不快感が葵を襲う。
意識が暗闇へと沈みゆく中、葵の耳は最後まで地獄のような状況の音を仕事ですからと言わんばかりに葵に提供し続けた。
輝留とあの女店主ーー乙葉の笑い声、雅の絶叫、鈴の音、そして氷が砕けるような、ガラスが割れるような音ーーーー
視界が黒くなり、義務感の強い耳が仕事をついに放棄しかけたその瞬間、遠くから、微かに聞こえたのは、
「あーあ、次はおにーさんが捕まっちゃったねー?
ニンゲンのおねーさんと桜を庇ったばっかりに……
かわいそー。」
「汚らわしきニンゲンをあの場所へ連れ込んだ罰でしてよ。また、”あの時“のようにたっぷり可愛がってさしあげましょう……ふふっ、」
「………っはっ!……で、きる……もん……な、ら、やっ、て……み、やが、れ……クソ、妖魔………」




