望まぬ邂逅
中学3年生になりました天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでもらえると嬉しいです。
しかしその時、鈴の音が一段と強く聞こえた。
ーーーーシャン。
間近に聞こえる澄んだ鈴の音に思わず葵はハッと顔を上げた。葵の正面、人ーー否、神が立っている。
その神は、口を開いた。
「お前の探してるものは多分、ここにはねぇよ?」
「ーーーーーー」
腰ほどまでもある紫がかった髪に、インナーカラーの赤色。その目つきは狼のように鋭い。
黒い袴に下駄。鋭い目つきは狼を連想させる。
目の前の店によりかかるようにして立ち、腕を組んで葵を見下ろしているのは忘れもしない。
かつて姉を乗っ取った邪神ーー雅だった。
邪神、雅との思わぬ再開に葵は声を失った。
転んだ体勢のままで、絶句する。
だって、この邪神ーー雅は、色々な罪を犯した罰で、執行人に、牢に入れられたはずじゃ。
なのに、なんで、今、ここに。
「つーかお前酷い怪我……っつーか火傷か?いや、切り傷とかかすり傷もあんな……何があったんだよ。」
「いや、それ聞きたいのはこっちなんですけど……」
雅を凝視しながらかろうじて言葉を生み出す。雅はその問いに深いため息をついた。
「あぁ俺か?」
少し黙ってから、葵を見たまま、
「まぁ色々あったんだよ。あのクソ兎に牢に入れられ、反省文書けだの黒幕吐けだの何だのこんだの。んでもってようやく最近開放された。」
「いや、何でですか」
「は?今説明しただろ。聞いてなかったのか?」
葵は頭を抱えた。時雨夜はもしかしたら人間界の刑務所よりも遥かにルールというか憲法というかーーが緩いのかもしれない。
あんなに色々なことをしてきた大罪人だというのに、その大罪人はケロッとした様子で今こうして平然と葵の目の前に立っている。
「いやいやいや、何でお前が頭抱えんだよ。抱えてぇのはこっちだわ。」
呆れたように嘆息し、雅は葵に歩み寄り、目の前にしゃがんだ。
「ーーーー治療、」
手のひらを葵に向け、ボソリと雅が呟く。その瞬間雅の手から淡い紫色の燐光が放たれ、葵の体を包み込んだ。その光景に葵は戦慄する。
「ひっ、ヒィィィぃ!助けてお姉ちゃん渚冬さん!
の、の、の、乗っ取られるっ!」
「乗っ取んねぇよ!!!」
乱暴に吐き捨て雅は手のひらを下ろした。そして、
「火傷も傷も軽くは直した。まぁでも応急処置だ。
後で自分ででもあの姉貴でもいいから、ちゃんと手当しとけよ。」
頬杖をつく雅に葵は自分の火傷した手のひらを、瓦礫で切った腕を見る。どちらも綺麗に治っていた。治したのだ。雅が。
やったこととやった人が、うまく結びつかず葵は酷く困惑した。
「ぅ、え、あ、ありがとう、ございます……?」
「うわー、すげー動揺してるー」
雅は棒読みの言葉を葵に浴びせると、立ち上がり、「それで?」と、葵の目を見つめて続ける。
「ーーーー何があった。」
「………え、と………」
唐突な質問に葵は思わず固まった。雅がそれに取り合わず続ける。
「今、時雨夜はテロだ戦争だって大騒ぎしてる。何でお前が一人でここにいる。あの桜が何であんな事になった。」
「ーーあんな事ーー?!って…、
そ、それより、何で、桜がいなくなったこと、知って、」
「馬鹿か。お前、さっきうわ言のように桜桜呟きながらフラフラ歩いてただろ。」
動揺する葵に容赦なく鼻を鳴らした雅が知っていた理由を明かした。




