心外と圏外
中学3年生になりました天音雫です。
受験が近づいているので勉強も頑張ります。
何かと至らない点があると思いますが、読んでもらえると嬉しいです。
息を切らしながら左に走り続け、知らない通りに出る。
魔呪祓い屋の爆発騒動で通りを行き交う神々の面は誰しも緊張と不安を宿している。
「おい、聞いたか……?」
「あぁ、爆発したんだってな…」
「テロだって噂もあるみたい……」
「あの“稲荷渚冬”の仕業じゃねえのか?」
ふと聞き捨てならない声が葵の耳に飛び込み足を止める。
その言葉を言ったのは店先で話している二人の神のうちの一人だった。
先程と言い今と言い、渚冬を侮辱する発言に葵の大切なものがブチッと音を立てて切れた。
聞き込み調査のついでに、と二人が話している店へと近付く。
「すみません」
店先で話す二人に声をかける。
「?何だ、嬢ちゃん。………嬢ちゃん、神か?」
「桜、知りませんか?」
「あぁ?」
一方的な質問に神は顔をしかめた。
「桜ぁ?桜……って、あぁ、あの稲荷家のか?」
「………?多分、天沢家、だった気がするんですけど……いえ何でもないです」
名字の食い違いに怪訝な顔をされ葵は無理矢理誤魔化す。
そういえば。先程も“稲荷家の”文様と言っていたから、こっちの世界では渚冬は“天沢渚冬”ではなく“稲荷渚冬”で通っているのかもしれない。
「桜ぁ?なんかあったのかぁ?もしかしてさっきの爆発と関係してんのか、嬢ちゃん」
「よしなさい、あんまり質問攻めにしないであげなさい。
この子、顔色がとても悪いし怪我してる。何か緊急事態なんでしょう。」
もう一人の女の神が男の神の質問を遮った。男の神は不服そうな顔をしたがその不満を口に出すことはなかった。
「ーーーー俺は知らねぇなぁ。でも、ここは広いからあんまり誰かを人伝に探すってのは難しいと思うぞ。」
「ーー分かりました、ありがとうございます。」
立ち去る直前、葵は声を低くした。
「渚冬さんのこと、次悪く言ったら許しませんから」
「、は、」
男の神が呆気に取られたような間抜けな声を出したのを聞き届け再び葵は左に走る。
後ろから会話が聞こえてきた。
「あいつ、聞こえてたのか」
「言ったでしょう。人のことを悪く言えば必ず誰かが聞いてるってね。」
「何であの嬢ちゃんが邪悪極まりない氷結の鬼を庇うんーーーーいでっ!」
「今しがた言ったばかりでしょう。人のことを悪く言うのはやめなさいと。あなたの耳は節穴なの?」
「悪かった、悪かったよ。」
葵は走りながら、舌を出し、対象者には決して届かないであろうあっかんべーをする。
しかし、今の神の言葉が本当なのなら困ったことになる。
時雨夜での人伝の人探しは困難。それはつまり、葵が桜を見つけ出すのは難しいと言っているのと等しい。
「絶対見つけなきゃ、ダメなのに……」
桜を変身出来なくさせたのも、桜を攫うためだったのか。なら、桜は一体いつ、どこで呪われたのだろうか。
いつの間にか少しずつ人が少なくなってきていた。和風な通りは変わらないが、今自分がどこにいるのか分からない。冷や汗が首を伝う。
「す、スマホっ……電波、届くかな…」
不安を胸にスマホを取りだし姉へと電話を掛ける。しかし、画面には“圏外”の文字が表示される。
「っ……!待って!!ここ電波ないの?!ち、ちちちちちょっと遅れてない?な、なんて……あ、あはは……」
動揺を軽口で誤魔化そうとしたが上手く行かない。葵はうつむき脳ミソをフル回転させる。
「今来た道があっちでこれから行く道が向こう。それでーー」
不意に、シャン、という鈴の音が聞こえた気がして、葵は脳の回転を一時停止して顔を上げた。
シャン、シャン、シャン。
音は連続して聞こえてくる。
似ている。桜が、扇を振ったときの音に。
思った瞬間音の聞こえた方へ一歩進む。
「ーーーー桜?」
呼びかけるが返事はない。
「さくーーーーっうわっ?!」
前方ばかり見ていたせいで足元が疎かになり躓く。その拍子に手に持ったスマホが吹っ飛び葵自身もバランスを崩し転ぶ。これを災難と呼ばずしてなんと呼ぶのであろうか。
「いっだぁ………」
時雨夜の地面もどうやらコンクリートらしい。硬い地面に派手にあちこち打って転び葵はうめいた。




