瓦礫と五感
中学3年生になりました。天音雫です。
何かと至らない点があると思いますが読んでもらえると嬉しいです。
耳が聞こえない。今の爆音で鼓膜が破れたのだろうか。
しかし目は使えるし手の感覚もあるし嗅覚もあるし、多分味覚もあるはずだ。
五感のうち四感が使える。しかし聴覚を失うのは不便だ。
なぜなら、今、爆破され粉々になった魔呪祓い屋を目の前に瓦礫に埋まっている葵は、何が何なのか、事情が全く分からないのだから。
そして、なんの声も、音も聞こえなくして瑠依と渚冬と桜の、安全は分からない。
「ぐっ……」
歯を食いしばる。体を潰し殺そうとするかのように葵にのしかかっている瓦礫が重い。
命の危険だ。
そう直感した瞬間手のひらを瓦礫に向けて叫ぶ。
耳に届かない自分の発した叫びが能力の引き金となる。
手から放たれた風が瓦礫を勢いよく吹き飛ばし、身体が自由になる。
「っ、ハァっ、ハァッ、ゲホッ」
咳込む。重い瓦礫に殺されかけあちこちが痛んだ。
「っ、お姉ちゃん?!どこ?!どこにいるの?!
っ、な、渚冬さんは?!」
自分がどのくらいの声量で叫んでいるのか分からないまま咄嗟に二人の名前を呼ぶと、ふと肩に誰かの手が触れた。
「ひっ…?!」
驚き振り返ればそこには焦った顔の見知らぬ女の神が葵の肩に触れていた。不安げな顔をした女の神の口が動く。
しかし耳が聞こえない葵は何を言っているのか聞き取れない。
「あっ、ご、ごめんなさい、み、耳が聞こえなくなっちゃって……」
葵が声を張り上げたつもりで必死にそう伝えると、その神はもう片方の手で葵の耳へと手を向ける。
ーーーーとその瞬間、
「ーーーーあおちゃん?!どこなの?!いるならいる、いないならいないって返事して!!」
「あおいちゃん、いるなら少しでいい、風を巻き起こしてくれ!すぐに助けに行くから!」
泣きそうな姉の声と焦燥感に駆られている渚冬の声がどこからか聞こえ、弾かれたように葵は振り返り辺りを見渡した。
「貴方様、傷だらけですよっ?!一体何があったんですか?!」
肩にかけた手の力を強くし、不安げな表情で眉を険しくさせた女の神が問う。
「ご、ごめんなさいっ、ありがとうございました!
事情を話せば長くなってしまうんです……
だけど、もう、行かなくちゃ……っ!!」
肩にかかるその手を振りほどき声の聞こえる方へと駆け出しようやく気付く。
周りで騒然とする神々の姿と、魔呪祓い屋だけでなく、周辺の建物も粉々になっていることに。
あの神が葵の聴力を復活させてくれたのだろう。
葵の耳は再びこの世の音を聞けるようになっていた。
瓦礫で足場の悪くなってしまった道を必死で本能に従い進む。
「お姉ちゃん、渚冬さん!」
二人の名を呼べば応答が返ってくる。
「っ!あおちゃんっ?!」
瓦礫の少し向こうに右往左往していた姉がこちらに気づき駆け寄ってくる。少し遅れて渚冬も、こちらへ駆け寄ってきた。




