霊によってめちゃくちゃにされた家族の例①
※この小説はあなたに不快感を与える可能性があります。直接的な描写はあまり出てきませんが、書いているうちにエッチな内容になってしまいました。
最近、小学2年生の娘が変なことを言う。
「あ、またいる」
何もないところを指さして呟くのだ。おばけとかだったら怖いので、私は娘に何が見えたのか聞くことはしなかった。
それからしばらく経ったある日、娘が今までにないほどの興奮を見せた。
「マジで!? こんなことあるの!?」
何もないところを指さして大声で叫んでいる。
「パパも見る? 私と手を繋げば見えるようになるかもよ!」
娘よ、お前は何者なんだ。
「いや、ちょっと怖いから⋯⋯」
「おじさんがいるんだよ!」
ほら、怖いじゃん。やだよ。おじさんの幽霊なんて見たくないよ。ボンキュッボンのビキニお姉さまなら見たかもしれないけどさ。
「どうしても見たくないの?」
娘が寂しそうに聴いてくる。
「うん⋯⋯」
私は力なく答えた。
「そこにおじさん3人いるんだよ? それでも見たくない?」
えっ!? 3人もいるの!? なんで私の家に幽霊が3人もいるんだ? しかもそこに集まってるのはなんなの?
「気になる。見せて」
そう言って私は娘の手を握った。
すると、目の前に3つの人影が見えた。徐々にくっきりと見えてくるその姿に、私は驚きを隠せなかった。
同じ顔のおっさんが3人いる。
白いランニングのシャツに乳首が浮いた、少し腹の出た58歳くらいのおっさんが3人いるのだ。
「見えた? 面白いでしょー! 今日初めて3人になったんだよ!」
娘が嬉しそうに言った。今日いきなり増えたってこと? なんで? 影分身の術でも覚えたの?
「いや、今日初めて3人になったんじゃないですよ」
真ん中のおっさんが口を開いた。喋るのかよお前ら。しかも敬語なのかよ。
「私たち3つ子ですから」
3つ子だからって58歳にもなって3人でペアルック着てんじゃねーよ。3人ならもはやペアじゃないか。髪型も同じだし、なんなんだよ。
「でもここ3年おじさんのこと見てきたけど、今までずっと1人だったよね?」
幽霊見え始めたの最近じゃなかったんだ。3年も見てたんだ。ご飯食べてる時とかもいたのかな。妻とエッチしてる時もいたのかな。娘は何も思わなかったのかな。
「かわりばんこで隠れながら出てきてましたからね」
かわりばんこって言葉20年ぶりくらいに聞いた気がする。こいつら成仏とかしないのかな。
「それにしても旦那さん。夜、凄いですね! フヒヒ」
やっぱり見られてた。ウザい。ウザすぎる。
「パパ夜何やったの? 凄いってなにー? 見せてー!」
まずいことになってきた。見せられるわけないだろ。
「夜にね、君のお父さんとお母さんがベッドでね、毎晩⋯⋯」
「うわあああああああああああああ!」
「どうしたのパパ!」
思わず叫んでしまった。
「素っ裸でね⋯⋯」
「うわあああああああああああああ!」
こいつ、私への配慮が1ミリもないどころか、私を破滅させようとしているのか!
「お母さんがお父さんの上に⋯⋯」
「うわあああああああああああああ!」
「何回も⋯⋯」
「ゔあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
一切攻撃の手を緩めないおっさんの霊。
「そう、何回も何回も⋯⋯」
「ゔあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
やがて喉が裂け、血が吹き出した。
「パパっ!」
「お母さんを四つん這いにさせて⋯⋯」
「ゔあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!」
これを6時間ほど繰り返した頃、私は倒れて病院に運ばれた。娘が救急車を呼んでくれたのだ。
「いったいどれだけ叫んだんですか⋯⋯」
「あ"⋯⋯あ"⋯⋯」
もう声が出せるような状態ではなかった。
「残念ですが、余命1日です」
突然の余命宣告に絶望したと同時に、霊の恐ろしさを実感した。霊に取り殺される人ってみんなこうなんだろうか。
その後私は病院のベッドに寝かされ、家族に召集がかかった。ほどなくして親戚一同が到着し、しんみりムードになった。
皆シクシク泣いている中、娘だけは私を見ず、別の方向を向いて泣いていた。
「ぐすん⋯⋯え、そうなの⋯⋯?」
なにか独り言を言っている。
独り言⋯⋯
いやちょっと待てよ!? もしかして!
「パパ、毎晩ママの×××に☆☆☆を入れて何してたの⋯⋯?」
親戚一同の前で絶対にタイミングの違う質問をする娘。それはもう少し大きくなってから、私が元気な時に聞いて欲しかった⋯⋯
「クソー! 幽霊めーーーーっ!」
私は最後にそう叫び、大量に吐血して息を引き取った。
火葬を終え霊となった私は、まず3人のおっさんのもとへ向かった。まぁおっさんのもとといっても私の家なのだが。復讐をするつもりだ。
家には親戚が集まっていた。私の仏壇が運び込まれている。
「まさか、幽霊に取り殺されるなんて⋯⋯」
「シクシク、幽霊怖いわ⋯⋯」
親戚の間では私は霊によって殺されたことになっていた。いや、実際そうだけど、思ってた殺され方と違うんだよな。体を乗っ取られて崖から落ちるとか、顔色がどんどん悪くなっていって衰弱死するとか。私の場合叫びすぎで死んだんだぞ。
「やぁ、元気でしたか」
あのおっさんが話しかけてきた。元気どころか死んだんだが。
「なんであんなことしたんだ」
私はおっさんを睨んで問い詰めた。
「実は私ロリコンでしてね、ああいう話を聞いた女児がどんな反応をするのか気になったんですよ」
なんだこいつ。警察は小さい犯罪よりこういうのを取り締まれよ。幽霊課とか作ってよ。
「でも、お前3年くらいうちにいたんだろ? なんで今更?」
「2年生くらいが1番良いんですよ、フヒヒ」
おっさんの笑顔に腹が立った私は、いつの間にかおっさんをボコボコに殴っていた。
やがてパトカーがサイレンを鳴らしながらやってきた。家の前で停まったというのに、親戚は誰ひとりとして気にしていないようだった。
「あ、幽霊おまわりさん! こいつです! こいつがいきなり殴りかかってきました!」
えぇっ!? 幽霊おまわりさんだって!?
「タイホシマス」
ロボットなのかよ!
いや、突っ込んでる場合じゃないぞ! まず幽霊おまわりさんってなんなんだよ! 逮捕されたら私はどうなるんだ!
いや、ちょっと待てよ? そもそもこいつが悪いんだよな。ロリコンだし。
「こいつが娘に卑猥なことを言ってたんだ! だから殴ったんだ! 何が悪いんだ!」
「タイホシマス」
壊れてんのか?
「幽霊おまわりさんは幽霊同士のトラブルでしか動きません。私のやっていたことは合法なのです」
おっさんが頬を押えながら言った。
じゃあ私が捕まるやん。そんなことって⋯⋯
あんまりだぁ⋯⋯
私は逮捕され、幽霊裁判にかけられ、幽霊刑務所に連れていかれた。
あれから4年が経ち、私は出所した。久しぶりに娘に会いに行くと、娘は大人になっていた。正確に言うと大人ではないが、とても大人びていたのだ。もう立派に女性の魅力を醸し出している。
「じゃあ今日シュン君の家に泊まってくるからー」
妻にそう言って娘は家を出た。
「やぁいらっしゃい」
「ただいまのチュー!」
「レロレロレロ」
「ぶちゅぶちゅぶちゅ」
娘は見知らぬ家の玄関から出てきた見知らぬ少年と熱いキスを交わした。
「3人ももう来てるから、上がりなよ」
「わーい! やったー!」
娘はルンルンで入っていった。
家に入ると裸の少年が3人いた。シュン君とやらも服を脱ぎ始めた。娘はシャワーを浴びてくると言ってその場を離れた。
ダメだ、もうこの場にはいられない。つらすぎる。
私は涙を流しながら家に帰った。家には3人のおっさんがいた。気がつくと、私はおっさんに殴りかかっていた。
「お前が教えたのか! 娘はあんな子じゃなかったはずだ! あんなふうになったのは全部お前のせいだ!」
私は力の限り殴った。何度も何度も殴った。
聞き覚えのあるサイレンが聞こえる。
「タイホシマス」
同じ流れだ。でも、許せなかったんだ。体が勝手に動いていたんだ。
「最後にひとつだけ教えてくれ。いくらロリコンだからって、なんでそこまでするんだ?」
私は涙ながらに質問した。
「いや、私じゃないです。久しぶりに娘さんを見に来たらビッチになってて私もビックリしましたもん。元々そういう素質のある子だったのでしょうね」
おっさんが頬を押えながら言った。
そんな⋯⋯娘がそんな⋯⋯
「さっきだって隠しもせずにお母さんに男友達の家に泊まりに行くって言ってたでしょ。思いっきりオープンにしてるんですよ。もしかしたらあなたが死んでグレちゃったのかも?」
私のせいだというのか? お前のせいだろ⋯⋯お前の!
私はまたおっさんに殴りかかった。
「お前のっ! お前のっ! お前のっ! せいだァーっ!」
お前のっ! botになった私は力の限りおっさんを殴った。
「タイホシマス」
幽霊おまわりさんの鍛えられた強靭な腕が私を取り押さえる。
「やめろーっ! 離せーっ!」
「タイホシマス」
「離せーっ!」
幽霊おまわりさんに引きずられながらふとおっさんから目を離すと、視界の端に自分の首を包丁で切り裂く妻の姿が見えた。
「何もかももう無理なのよ。あなたのところへ行くからね⋯⋯」
そう言って妻は倒れた。
次に妻と会ったのは面会室だった。私は刑務所にぶち込まれていたので、妻と普通に会えないのだ。
「あなたに会えると思って死んだのに、なんで捕まってんのよ」
「かくかくしかじか⋯⋯」
「そんなことが!? ていうか家におっさんの幽霊が3人もいたの!? 私たちのエッチもじっくり見られたってこと!? いやもうビックリしすぎて何が何だかファー⋯⋯」
妻は驚き過ぎて「ファー」と言いながら成仏してしまった。こんなことってあるかよ。不幸過ぎるだろ、私の家族。
10年後出所すると、世界は変わっていた。スマートフォンはなくなり、己の体に埋め込まれた電子機器でやりとりをしている人間がほとんどだった。
空にはUFOがたくさん飛んでいた。未確認飛行物体でUFOなんだから、これらは確認されたUFOだな。
娘はどうなっただろうか。もう22歳だし、就活でもしてるかな? もう内定決まってるかな?
そんなことを考えながら私は家に向かった。
家⋯⋯
あれ、家がない。
家のあった場所に別の建物が建っている。引っ越したのだろうか。
表札を見ると、「背触霊教会」と書いてあった。なんと読むのだろうか⋯⋯
せ⋯⋯ふ⋯⋯れい⋯⋯セフレ教会!?
なんだそれ!
気になるから入ってみよ! どうせ私幽霊だから誰にも見えてないし!
「つまりそういうことなのです。さぁ、身を清めましょう」
全裸の女性がなにか言ったかと思うと、周りからぞろぞろと全裸の男性が数十人集まってきた。
「さぁ、おいでなさい」
女性の顔をよく見ると、娘の面影があることに気がついた。お前、娘なのか。私が刑務所に入ってたこの10年で変な宗教の教祖になったのか。
「あ、パパ久しぶり〜!」
娘が私に話しかけてきた。私が見えているのか? ていうか、普通に話しかけてこられるそのメンタルはなんなの? 父親だぞ?
「見えるのか⋯⋯?」
「いやいや、私が霊感あるのなんて小学生の頃から分かってたことじゃ〜ん!」
あ、確かに。てことは⋯⋯
「6年生の時にこっそりついて行ってたのもバレてた?」
「もちろん。見せつけてあげようかと思ったのに、シャワーから上がったらいなくなっちゃってるんだもん、残念だったなぁ。それから10年音沙汰なしだし⋯⋯」
「ごめん」
「私、霊感あるはずなのに、なんでパパが見えなくなったんだろって、もしかしたらもう成仏しちゃってて、一生会えないのかななんて思ってたの」
「ごめん、捕まってたから⋯⋯」
「だからこうして会えて嬉しい。ママはいつ出所するの?」
「いや、ママはすぐに成仏したよ」
「え、ママこの世に未練なかったの? そんなすぐ成仏するもんなの?」
「いやそれが、ビックリしすぎて『ファー』って言いながら成仏しちゃったんだ」
「そんなパターンあるんだ」
娘は数十人の男とエッチをしながらもしっかり私と会話をしてくれた。14年振りに娘と話せたことで、私は満足していた。もしかしたらもうすぐ成仏しちゃうかもなファー⋯⋯
「えっ! パパ! パパ! なんで消え始めてるの!? 『ファー』は? 『ファー』なしで成仏するの!?」
取り乱す娘に声をかけることも出来ず、成仏する私。心の中でしかファーって言えなかったな⋯⋯
ファーって言えないと困ることでもあるのか。
逆ハーレムのタグを初めてつけた。ハーレムもつけたことないのに。
2度もぶった! 親父にもぶたれたことないのに! みたい。そうでもないか。