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セカイはハルを愛してる  作者: あめふる
現代──日常──
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優しくも残酷な夢


 コレは、昔実際あった出来事だ。


 当時の私は結構ひねくれていた。周りの子供のように感情を露にするが嫌で、無口で影が薄い。だけどやれと言われた事はなんでもすぐに出来るようになってしまい、運動神経も良くて、周囲の人間は大人も子供も関係なく、そんな私を気味悪がっていた。

 その時は一人が好きだったので、それはそれで割と都合が良い事だった。気味の悪い女の子に近づこうとする人間なんて、どこにもいないから。


 だけど、そんな私にも友達が出来た。

 それは近所の神社に住む動物で、たぶんアレは……ネコだったと思う。ネコにしては、ちょっと大きいし耳もデカかった気がするけど、たぶんネコ。金色の毛のネコ。

 とってもキレイな子で、私は彼女に会うため、毎日神社に通った。別に餌をあげにいっていた訳ではない。会いに行っていただけなんだけど、彼女は毎日私をそこで待っていてくれた。


 私にできた初めての友達は、ネコだったのだ。

 はっ。笑うなら笑うと良い。だけど私は彼女と毎日遊び、話し、笑い、そうしていく内に段々と感情という物を覚えて行ったのだ。


 はい。変な子供でした。

 でも今の私がいるのは、間違いなくその子のおかげだ。彼女と話すうちに、私は普段から感情を表に出すようになり、友達も出来るようになっていったから。それからは全てが上手くいき、人生に華が咲いたように幸せになる事ができました。

 別に、怪しい商品を買わせようとしている訳ではない。実際そうなっていったのだから、他に言いようがない。


 さて。こうして今の私の原型が出来上がった訳だけど、それでも私はしょっちゅう彼女に会いに行っていた。初めて出来た友達を、ないがしろになんてしない。私はその子にとっての親友であり、私にとっては記念すべき親友第一号である。


 そんなある日。いつも通りその子の下へと赴いた日だった。


 その子が、いつもいるその場所で死んでいた。倒れて、頭から血を流して冷たくなっていたのだ。近くに大きめの石が落ちていて、その石に血がついていたので、それで殴られたのだと思う。

 その姿を見て、私は泣いた。彼女を抱き締め、悲しみという感情を爆発させたのだ。

 当時、この近所では小動物が殺されて死体が放置される事件が何件か起きており、彼女もその犯人にやられてしまったのだと思われる。

 あまりにも唐突で、衝撃的な、友達とのお別れ。

 彼女は私に、感情の全てを教えてくれた。共に笑い、共に遊んで楽しみ、たまに喧嘩もした。喧嘩は本当に些細な事だったなぁ。だって、聞いてよ。彼女が──あれ?

 彼女は喋る事なんて出来たっけ?だって、ネコだよね。喋る訳がない。でも言い争いをしたような気が……いや、気のせいか。

 とにかく彼女は、私に色々な事を教えてくれたのだ。


 私は彼女を、泣きながら神社の裏山に埋めて、供養した。

 友達を埋めるのは、とても悲しく苦しかった。でもそうしなければ、彼女の死体がその場で酷い状況になっていってしまう。だったらせめて、誰の目にもつかない土の下に埋めてあげなければと思った。


 そういえばその時、確か誰かが手伝ってくれた気がする。

 誰か……確かその子は、私と同じ小さな女の子だった。それ以外の事は、思い出せない。

 昔の事なので色々と曖昧になってるな。

 二度と忘れないと誓った日の出来事なのに、自分の薄情さに腹が立つ。人の記憶なんてそんなもんだと言う事は理解しているけど、それでも腹立たしい。


 でも何故急にあの日の事を思い出したのだろうか。


 それはたぶん、彼女と同じ匂いがしたからだ。

 それがキッカケとなり、思い出す事となった。でも、何が彼女の匂いだったかな……。本当に曖昧過ぎて、私はダメな奴だ。

 若干の自己嫌悪に陥りながらも、どうやら起きなければいけない時間となったようだ。


 私はゆっくりと目を開くと、この優しくも残酷な夢にさよならを告げた。


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