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セカイはハルを愛してる  作者: あめふる
現代──日常──
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クラスメイト達


 その後も続々とクラスメイト達が登校してきて、その度に私の姿を見て驚かれると言うルーティーンが繰り返されて行く。

 うん。さすがに鬱陶しいわ。こんなんなら、早く来るんじゃなかった。

 そう思い始めていた時、一際五月蠅いのがやってきてしまったからその想いに拍車がかかる。


「うっひょー、マジで!?ハルカちゃんがいる!何で!?どうして!?」


 教室に入って来て、私の姿を見つけるや否や駆け寄って来て、私の周りをうろちょろしながらおちょくるように言ってくる。朝っぱらから、このうざいハイテンションの人間は、私の知る限り一人しかいない。

 短髪を金色に染め上げ、耳にはピアスの穴をあけた男。少しタレ目で、背は高い方かな。制服を着崩し、シャツのボタンは外れまくって、下に着ているTシャツが丸出しだ。ネクタイも一応つけているけど、だるだる。

 彼の名前は、明方(あけがた) (てつや)。御覧の通り、ただのチャラ男である。


「もうそれ、飽きた」

「あ、朝から、皆にそう言われてるの。だからハルちゃん、ちょっといじけ気味なのかも」


 私の、彼に対する塩対応にメイがフォローしてくれたけど、私は別にいじけている訳ではない。いや、ちょっとはあるんだけどね。

 それ以外にも理由はあって、私は彼の事をあまり好いていない。何故なら、男子のみならず女子に対しても軽口ばかり叩いて、その見た目の不良っぽさの割に、モテて人気があるからである。

 いや、嫉妬してる訳ではないよ?ただ、気に入らないだけ。特に、メイやクルミやレイコに軽口を叩くのが気に入らない。


「そうなん?確かに、皆もビックリラッパーしちゃうよね。だって、ハルカちゃんがこんな時間にいるの初めてジャン?でもハルカちゃん、相変わらずマジクールでカッチョイー!惚れちゃうー!」


 本当に、口の軽い男だ。惚れちゃうとか、好きだとか、愛してるだとか、この男はよく口に出す。あと、言語がたまにおかしくなる。それが嫌いなんだよ。あとうるさい。声がデカイのだ。

 いや、優しい所もあるんだけどね。虐めとかは絶対にしないし、困っている人がいたら手を差し伸べる。私はそんな彼の側面を知っているから、かろうじて会話くらいはしてあげる事にしている。


「確かに、コレはレアな光景だ。トオルのテンションが上がるのも無理がないだろう。オレも上がりそうだ」


 続いて、別の男子がやってきた。こちらはきっちりと制服を着こなし、ツッコミ隙が見当たらない。

 彼の名前は、立花(たちばな) 周介(しゅうすけ)。細くて背が高く、眼鏡をかけた理知的な男の子。どこかの誰かみたいに髪を染めたりはせず、黒髪をマッシュヘアに整えた清潔感のあるヘアスタイルで、まぁモテる人だ。

 柔らかく笑えば女子が黄色い歓声をあげ、熱く夢中になっている姿を見せればため息が聞こえてくる。偏見かもしれないけど、眼鏡をかけてるだけあって頭が凄くいい。それでいてサッカー部に所属していて、レギュラーを張っているというオマケつき。完璧超人と言ってもいいだろう。モテない訳がない。

 だからという訳ではないけど、彼も好きません。はい。


「おはよー、シューちゃん。ホント、珍しいよねー。私も驚いちゃった」

「卒業するまで、コイツのこんな姿を見る事はないと思っていたんだけどな……」

「私もだよー」

「だが、時間に余裕を持つのは悪い事ではない。これからも、この調子で行ったらどうだ?時間に余裕があれば色々な事にゆとりができ、自分のスキルアップに繋がるぞ」


 眼鏡を中指でクイッと掛けなおしながら、立花君がそう勧めて来る。


「立花君に言われなくても、ちょっと頑張ろうと思ってたし。そうすれば、メイと一緒に楽しく学校に来れるからねー」

「うん。今日は驚いたし恥ずかしかったけど、ハルちゃんと一緒で楽しく通学できたんだよ」

「驚いたというのは分かるが、恥ずかしい?何かあったのか?」

「それがねー、聞いてよシューちゃん!」


 朝の出来事を、楽し気に立花君に話すメイ。それを彼女の隣でボケーっと眺めながら、この2人は本当に仲がいいなぁと思う。

 と言うのも、この2人って幼馴染なんだよね。小さな頃から家が隣同士で、小さな頃から一緒に遊び、ここまで学校は全て同じだという2人。更に今年はクラスまで同じで、そんな2人の仲に入り込む隙が見当たらない。

 きっと、私が男の子として生まれていたとしても、結局は同じ。2人の間に入る事なんて、出来ないのだろう。

 立花 周介という男の存在──それが、私がメイに告白できない大きな理由だ。


「ハルカちゃーん。ボケっとしてないで、オレとお話ししようぜっ!恋愛トーク、いっといちゃーう?」

「……」


 2人の様子を見ていたら、目の前に金髪の頭の悪そうな顔が割って入って来た。

 いや、実際は頭良いんだけどね。このナリで、明方君はテストの成績上位者だ。でも私の方が上だから、私凄い。


「ふ。私と話しがしたいなら、私よりも頭が良くなって見せる事だね。その時は、恋愛トークでもなんでもしてあげる」

「マジで!?そんな事言って、後悔すんなよ?今ハルカちゃんは、オレを本気にさせちまったんだぜ?オレ、頑張っちゃうぜ?ぜ!?」

「いや、あんたら割といつもよく話してるじゃん。そんなトークは聞いた事ないけども」


 とツッコミを入れて来たのは、クルミだ。

 まぁご指摘の通りなんだけども。でもこうして話すだけでも条件をつけておけば、私はコイツを好かんっていうアピールにもなるじゃん?


「──おい、周介ぇ!」


 静かな朝の風景をぶち壊すかのように、大きな声が教室の中に響き渡った。私達だけではなく、周囲のクラスメイト達も会話をやめて、声のした方に注目を集める事になる。

 そこにいたのは、ゴリラのようにガタイの良い男だった。肌は焼いてるのかというくらい黒く、身に着けている制服は大きいはずなのに、彼の肉に押されてぴちぴち状態で苦しそう。制服が、ね。目つきが悪く、悪人面の彼の名前は大磯(おおいそ) 啓二(けいじ)。こう見えてもクラスメイトで、同い年である。

 クルミとは反対の意味で驚きだね。


「なんだ、ケイジ。朝から騒がしい」

「今日の体育は、バスケらしい!勝負だ!ほえ面かかせてやるぜ!」

「ああ、そうなのか。バスケかぁ。あんまり得意じゃないんだけどな。まぁ勝負はいいが、手加減してくれよ」

「手加減だぁ?する訳ねぇだろ!ぶっ殺してやるから覚悟しとけ!」


 と、怒鳴り散らす大磯君。いつもの事と言えば、いつもの事だ。

 彼は立花君に対して並々ならぬ対抗心を持っているからね。頭では敵わないけど、得意な運動で負けるのが嫌みたい。ちなみに彼はアメフト部のエースだ。らしいと言えば、らしいね。

 ところで。バスケってそういうスポーツだっけ?彼と私の知るバスケは、もしかしたら違うルールなのかもしれない。

 と、騒がしくなった所で、予鈴のチャイムが鳴り響いた。それを聞き、クラスメイト達が自分の席へと戻っていく。

 嫌だけど、今日も退屈な授業の始まりである。テンション下がるわー。


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