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セカイはハルを愛してる  作者: あめふる
再会──異変──
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人の村


 シキと別れた私とセカイは、再び二人きりとなった。この世界に来てから、毎日ずっと一緒にいるので、セカイが近くにいる事が当たり前になっている。

 それは嬉しく楽しい事なんだけど、ここの所の別れの連続が、いつかセカイともお別れする事になってしまうのかなと、不安な気持ちにさせてくる。


「セカイは、どこにも行かないよね?」

「……なんじゃ、突然?」


 その不安な気持ちは、セカイにそう尋ねさせた。

 突然な質問に、セカイは顔をしかめる。


「いや、なんとなく……ふと思って」

「お主が望む限り、ワシは傍にいる。無論、一生傍にいれる訳ではないが……現状は傍にいる。じゃから、そんな不安そうな顔をするでない」

「私、そんな顔してた?」

「してた」


 とりあえず、傍にいてくれると言ってくれたセカイに、安心した。

 まぁ、一生は無理だよね。寿命とかあるし。だからそれは、そうだと思う。


「よしっ」


 不安を拭った私は、重いリュックを背負っているというのに、その歩みを速めた。シキの話では、この丘を越えたら人間の村があるはず。丘のてっぺんはもうすぐそこで、その先に村があるのだ。


「慌てるでない。転ぶぞ」

「だいじょー、ぶぉっと!?」


 普通に歩くセカイにそう声をかけられ、大丈夫と答えようとした時だった。足元に落ちていた石に躓き、転びそうなってしまう。でも転ばずには済んだ。

 フラグというやつを、回収した形である。

 私は手を伸ばして驚いた表情を見せていたセカイに対し、照れ隠しで笑いかけてから普通に歩き、そして丘の頂上に到着した。


「おー!」


 丘の上からは、更に景色よく見える。周囲の地形が、丸わかりだ。

 そして見下ろした先に、シキが言っていたように村があった。人工的な木の建物が密集して村の形を作り、大自然の中に君臨している。村の周囲には道が伸びていて、舗装されている訳ではないんだけど、どこかへ続いているようだ。その先にはきっと、別の集落があるのだろう。

 シキじゃないけど、一気に人間臭くなってきた。


「……情報通りじゃな。それにしても、どこの世界も人間の文明は同じ道を辿るものじゃな。ワンパターンで、つまらん限りじゃ」


 遅れてやってきたセカイも、私と同じように村を見下ろし、そう感想を述べた。

 確かに、村の建物は私の世界でいう所の、ビンテージ風な物だ。ファンタジー物のアニメとか映画で出てきたり、海外の中世ものの映画で出てくるような建物で、見ても特に違和感がない。

 セカイに言われて気づいたけど、異世界という事は全く違う文明のはずな訳で。それなのに、服や建物といった基本的な所に違いがなく、同じ道を辿っているのは凄い。でもある意味でつまらない。

 ま、その辺は違和感がない方が都合がいいと思う。だって、裸社会だったりしたら嫌すぎるじゃん。


「あそこに、人がいるのかぁ」


 エルフとは出会ったけど、この世界の人間と会うのは二度目で、緊張してきた。

 緊張する原因は、ロロアちゃんを攫おうとしていた人みたいな人だったら、嫌だなという想いから来る。


「行くぞ、ハル」

「あ、ああ、うん」


 そんな私の想いなんて知るよしもないセカイが、一歩踏み出して歩き出した。私は慌てて横に並び、セカイと一緒に歩いて行く。

 うん。大丈夫。私にはセカイがついているんだ。例え汚いおじさんだらけの村だったとしても、なんとかなる。自分にそう言い聞かせて歩き、やがて村に辿り着いた。


「ん。おい」

「あ?」


 村の入り口に、武装した人間のおじさんが待ち構えていた。でも汚くはない。ちゃんとした鎧を身に纏い、兵隊のような装いだ。

 彼らは訪れた私とセカイに気づくと、それまでイスや地面に座ってだらけていたのをやめ、立ち上がって私とセカイが近寄ってくるのを待つ。

 兵隊さんの数は、3人だ。別に多くはないし、その表情から敵意は感じない。だからなのか、セカイは特に警戒する事もなく足を止めず、ずかずかと歩いて行く。私も合わせるように、セカイについて歩いた。


「止まれ」


 やがて、兵隊さんにそう声を掛けられ、そこでセカイは止まった。当然私も止まる。

 そこに兵隊さん達が近づいてきて、私は緊張した。この世界の人間の男に対する警戒感は、高い。同じ人間なのに、それを警戒するのはどうなのという話だけど、彼らが普通の人とは限らない。そう考えて警戒してしまうのは、ロロアちゃんを攫おうとしていた臭そうな男達のせいである。


「──旅人さんですか!?その格好、魔術師ですよね!?」

「は、はい……?」


 そんな私の警戒感とは裏腹に、兵隊さんはきさくな笑顔を浮かべて話しかけて来た。

 どうやら、私とセカイのローブを羽織った服装を見て、魔術師だと勘違いしているらしい。特に私は杖も持っているから、魔術師という存在がいるこの世界の人にとって、そう見えてしまうのかもしれない。


「その通りじゃ。この村には旅の途中で寄らせてもらったのじゃが、宿をとるのは可能か?」

「勿論です!寂れた村ですが、飯は美味いって評判なんですよ。是非寄ってってください」

「村の名前は、ガルスター卿が領地、東エジジバ平野、ゲティブ村!ゆっくりしてってくれ!」

「うむ」


 兵隊さんは笑顔で道を開けると、私とセカイを村の中へと通してくれた。

 村の紹介は長くてよく分からなかったけど、意外にも歓迎ムードだ。

 セカイは偉そうに頷いて歩き出し、私もそれに続いて村の中へと足を踏み入れる。

 踏み入れた村は、兵隊さんが寂れていると言う程寂れてはいない。道は人々が忙しそうに行き来し、立ち並ぶ建物の中には家の他に、様々なお店がある。


「おー……!」


 村の様子は、さながら映画や小説で見た光景と全く一緒だ。人々の服装などといった生活様式は、中世時代の欧州を思わせる。

 古めかしいと感じると同時に、逆に目新しい。作り物みたいな世界の中にいると思うと、魔法という物を目の当たりにした時のような、ワクワク感が生まれて目が輝いてしまう。


「あまり、きょろきょろとするでない。真っすぐ前を見て歩くのじゃ。転ぶぞ」

「はい……」


 セカイに怒られてしまい、私は歩く事に集中した。

 そんな私達に対し、村の人たちが興味深そうな視線を向けて来る。

 いや、幼女に怒られる私に興味がある訳じゃない。こんな格好をしている旅人が、皆気になるんだと思う。

 この視線は、そうだなぁ……子供の頃、レンタルビデオ屋さんで迷い込んで入ってしまったアダルトコーナーで、エロいビデオを漁っているおじさんたちが、場違いな私に向けて来る視線みたいだ。いや、ちょっと違うか。まぁとにかく、物珍しそうって事。


「まず、どうするの?」

「宿じゃな。荷物を置き、今度は人間側からの情報として、この世界について知っておきたい。そのためこの村の人間と交流をする必要がある。まぁそれは、適当な店にでも入って買い物でもするついでに、世間話として出来る事じゃ」

「なるほど。えっと……宿はどこ?」

「知らん。ワシは適当に歩いているだけじゃ。歩いていればその内見つかるじゃろう」

「……」


 その無計画さに、私は絶望した。いくら小さな村とはいえ、歩いて宿を探すのは中々に骨が折れると思うよ。道行く人に宿の場所を尋ね、真っすぐ宿に向かった方が断然早い。


「あ、すいません」


 という訳で、私は丁度横を通り過ぎようとしていた女の子に、声を掛けた。


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