姉妹
ロロアちゃんのお姉さんは、髪を編み込んでお団子にしていて、袴のような服装だ。胸は大胆に開いていて、でもその中身はサラシをまいてしっかりと隠されているので大事な所は見えない。でも、鎖骨とかは露出しているので露出度は高い。
ロロアちゃんもだけど、お姉さんもとんでもない美人さんだ。これは今から、ロロアちゃんの将来が楽しみすぎる。
「無事で良かった!」
駆けつけてすぐに、お姉さんはロロアちゃんを抱き締めた。熱く、強い抱擁。本当に、本気でロロアちゃんの事を心配していたんだ。
この光景を見れただけで、助けて良かったなと思える。
「ハルカお姉ちゃんと、セカイお姉ちゃんが助けてくれたんだ」
「……人間、か?」
「うん!でもこの世界の人間さんじゃなくて、異世界の人間さんなんだって!だから、悪い人間さんじゃないんだよ」
ロロアちゃんは必死に、私達が悪い人ではない事をお姉さんに説明してくれた。
なんていうか、お姉さん嬉しいよ。大人たちはそんな彼女の言い分をきいてくれないかもしれないけど、助けた幼女が必死に庇ってくれるだけで、ホント嬉しい。
「そうか。ならば、お礼をしなければいけないな。というか、怪我をしているではないか!すぐに療養所に連れて、治療を!」
「正気か、リリア!?こいつらは人間だぞ!」
「そうだが、ロロアの恩人だ。私はロロアの恩人である彼女達に、最大限の感謝の気持ちを抱いている。この気持ちは、相手が人間だからという理由で消える物ではない」
毅然とした態度でそう言い放つ、ロロアちゃんのお姉さん。カッコイイ。大勢の男の人たちに、全く怯んでいない。
「ようやくまともに話が通じる者が現れたようじゃな。ワシらは森の意思に従い、この娘を助けてここに連れて来た。それなのに、この歓迎っぷり……。エルフとは、礼をわきまえん下等種族なのかと思ってしまったぞ」
「んなっ!?」
セカイのあまりにもストレートすぎる言い方に、周囲の男エルフ達が驚いて悔し気な表情を浮かべる。でも本当の事だからか、怒ったりはしてこない。失礼な言い方だったかもしれないけど、それで怒ってこない分だけ、ロロアちゃんを攫った人間よりは理性を持っていると思う。
「嫌な想いをさせて、すまない。今すぐ療養所に案内する。いいな、村長?」
「……ああ。確かに、その通りだな。こんな年端もいかぬ娘に諭される事になるとは……無礼な態度を、謝罪する。すぐに治療させてくれ」
ロロアちゃんのお姉さんのおかげで、風向きが変わった。
私達はそこから療養所とやらに連れていかれ、治療を受けられる事となったのだ。高い木のてっぺんにある一際大きな木の建物に、目的の場所はあった。その建物に入ると、まず薬品の臭いに出迎えられた。それから服を脱がされ、消毒されて、包帯を巻かれ、治療は終了。セカイも頬にガーゼを張ってもらい、簡単だけど治療してもらえた。
そこからが退屈の始まりで、私とセカイは村長とやらの男の人に連れて来られた。ここに訪れて、最初につっかかってきた男の人だね。若く見えるけど、その人が村長だったのだ。そこで私達の事を色々と聞かれた。この森にやってきた理由とか、ロロアちゃんを助けたいきさつとかね。全部セカイが正直に答えてくれて、私が出る幕はない。説明が終わるとようやく解放されて、とりあえず皆で会議開くから待ってねとなった。
「やっと終わったー。私もう、疲れたよー」
「お主は何もしておらんじゃろう。むしろ寝てたじゃろう。ワシが話している横で」
「いや、話が長すぎて、つい」
「……まったく。お主こんなんではこの世界を一人でやっていけんぞ」
「セカイがいるからいいじゃん」
「ワシとていつまで一緒にいられるか分からん。じゃから、ワシに頼るな。一人でやっていくだけの力を身に付けよ」
「でも私は、セカイと一緒にいたいよ」
「……」
私の正直な気持ちだけど、セカイは黙って遠くを見つめたまま何も答えてくれない。照れてるのかな?でもそんな感じでもないか。
「ハルカお姉ちゃん!セカイお姉ちゃん!」
「おー、ロロアちゃーん」
とそこへ、ロロアちゃんがやってきた。私は膝を付いて彼女を迎えると、彼女は胸にダイブしてきてくれた。だから熱い抱擁で迎えてあげる。
「ようやく村長の話が終わったようだな。妹と終わるのを待っていたんだ」
ロロアちゃんのお姉さんも、ロロアちゃんに続いてやって来た。
彼女にも向かって胸を広げたけど、彼女は飛び込んできてはくれなかった。まぁロロアちゃんが既に胸にいるからね。それは今度、胸が空いてる時にとっておこう。
「私の名は、リリア。改めて、ロロアを助けてくれてありがとう」
「私は、ハルカだよ」
「セカイじゃ」
「ハルカ殿と、セカイ殿。良い名だ。恩人の二人には、是非私の家に来てもらいたい。狭い家だが、出来る限りもてなしたいのだ。エルフは、礼儀知らずの下等種族ではないのでね」
「ふ。良いじゃろう。もてなしとやら、受けさせてもらう」
こんな所で村長さんを待つのも癪だ。暇を持て余していた所だったので、リリアさんの申し出はありがたい。だから断る理由はない。
「やったー!ロロアちゃん家だー!」
「やったー!」
私はロロアちゃんを抱き上げて、喜んだ。ロロアちゃんも喜び、声を上げてくれる。このロリエルフ、本当に可愛い。持ち帰りたい。
「ははは!良かったな、ロロア」
私とロロアちゃんを見て柔らかく笑うリリアさんも、可愛い。可愛いの連鎖が、留まる事を知らないよ。だってこの世界に来てから、セカイ、シキ、ロロアちゃんとリリアさんと来て、全部可愛いんだから。私の心を射抜いて来る物ばかりで、私はどうにかなっちゃいそう。
え?それ以外にも色々いたって?そんなのどうでもいいよ。
そして案内された、ロロアちゃんの家。こじんまりとした家で、やはり木にくっつくようにして建てられている。木造なので、木の良い匂いがする。扉を開いてすぐのリビングには、4人がけの机が置いてあるだけでけっこう手狭だ。奥に部屋はあるようだけど、確かに全体的に見てあまり広くはなさそう。でも私にとって、新鮮で素敵な家だ。
「本当に狭いだろう?」
「ううん。素敵な家だよ。ね、セカイ」
「悪くない」
「ほら、セカイがこういうんだもん。間違いないよ」
「ありがとう。私達にとっては、思い出の詰まった家なんだ。そう言ってもらえると嬉しい」
「うれしー!」
リリアさんを真似て、ロロアちゃんも喜ぶ。なんだろうね、この姉妹。可愛すぎて、もうまとめて抱きしめたい。
「村長との話を盗み聞きさせてもらったが、異世界からやってきたばかりでまともにご飯を食べていないのだろう?私が腕をふるうので、食べて行ってくれ。そこで、何かリクエストがあれば遠慮なく言って欲しい。出来る限りの範囲で応えさせてもらう」
「本当に!?」
私は喜んだ。リリアさんの言う通りで、この世界に来てから果物と水しか口にしていない。
「肉!肉食べたい!」
「っ……!」
私がそう訴えると、リリアさんが口を押えて黙ってしまった。なんだろう。私、面白い事言った?