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PASTIME!!!  作者: 暮
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第69話_気遣い

 二頭をようやく温めてあげられたところで、みんなも少し安堵の表情を浮かべていた。さて次はそんな心優しい彼女達を温めないと。女の子は身体を冷やしたら駄目だって散々言っておいて、私のせいで全員を凍えさせるなんて冗談じゃない。慌てて火を起こし、温かい飲み物をそれぞれに手渡した。

「没頭しちゃってごめんね、その辺の鍋とかで叩いて止めてくれても良かったのに」

「いや、流石に鍋はアキラちゃんも死ぬでしょ」

 他に武器になりそうなものが見当たらなかったので言ってみたが、確かに鍋は死ぬと思う。

「鍋はともかく……ラターシャとルーイが止めなければ、私が引っ叩いていたわよ」

 いつものことながらナディアは手厳しいな。でも彼女の厳しさが私の丁度いいストッパーになってくれているのは分かっているし、多分ナディアも、他に厳しく言う人間が居ないから強めに言ってくれているんだと思う。本当に嫌われている可能性は一先ず今は除外しておく。傷付くからね。

 ただ、今回はそんなナディアも子供達が強く反対した為、引き下がったと言う。私が二人に視線を向けたら、二人はお互いを気にするように目を合わせていた。可愛い。

「一人になりたいかなって……」

「熱中してたら気も紛れるのかもしれないと思って」

 寝落ちる時に思っていたこと、ほとんどバレバレじゃないですか。子供って怖い。でも堪らなく可愛い。

「うん、そうだね、いい憂さ晴らしになったよ」

 雨は未だ降り続いている。だから気分が完全に晴れたわけでもないが、山を越したような感覚はあった。別に大した話じゃない。嫌な記憶があるだけだ。こっちの世界に居ることも相まって、ちょっと苛々しやすいだけだ。少なくとも大騒ぎするような話ではない。でもあんまり思い返しているとぶり返しそうだから、やっぱり話題としては一旦避けておこう――、そう思って口を開く前に、ナディアの方が話題を変えてくれた。

「それで、火傷はどうしたの」

「あー」

 忘れてましたね。呑気な声と、今更その患部を確認している私の行動に、ナディアは小さく息を吐く。

「うーん、痛くないけどなー」

「でもまだ赤いよ、治して治して」

 リコットが苦笑いで指を差している。確かに明らかに赤いんだよね。私、結構痛みには鈍いからなぁ。火傷も場合によると放置が酷い結果に繋がることがあるし、うん、みんなもこの程度の怪我でもちゃんと言いに来てほしいから、やっぱりみんなの前で治しておくべきですね。本当に今更だな。回復魔法を掛けたらすぐに色が普通の肌になって、見守っていたみんなの目が明らかに和らいだ。本当に心配してくれていたんだな。

「そんなに簡単なら今度からすぐに治してね、アキラちゃん」

「はーい。心配かけてごめんね」

 わざわざ手で触れて確認した後で、ラターシャがそう言った。可愛いから撫でよう。そういえばココア淹れてあげようと思ってたのに忘れてた。夕食後に淹れよう。

「じゃ、今日のご飯は何にしようかな。ミネストローネ風スープの残りでパスタソース作っちゃうか」

 何か適当なやつ。で、汁物はポタージュスープにしようかな。またナディアとリコットに野菜を渡して、下処理をお願いした。お肉はどうしよう。毎日ハムをただ焼いてるだけだとつまらないから、今日はポークピカタみたいに卵を衣にして焼いてみようか。

(かまど)が二つだと足りないね! レッドオラムに着いたらあともう二連買おうっと」

「贅沢ね……」

「ご飯が豪勢過ぎるんだよねー。私らは嬉しいけどさ」

 食はやっぱり楽しくないとね。それにみんなまだまだ細い女の子達だし、栄養たっぷりなご飯を沢山作りたいのだ。子供も居ることだから、いい加減ではいけない。

「今日はちょっと停滞しちゃったけど、もうすぐレッドオラムに着くからね」

 夕飯の用意が済んで、大きなテーブルをみんなで囲いながらそう話す。明後日には到着できるだろう。雨も、もうすぐ止んでくれそうだ。

 レッドオラムに到着したら宿を取って、その街には少し長く滞在するつもり。本屋にも回りたいし、竃も追加購入して。ああ、そうそう。

「みんなに可愛い洋服も沢山買わないと」

「それ重要?」

「え……? 一番大事でしょ……?」

「一番ではないと思うわ」

 物凄く怪訝な顔をしたリコットとナディアに対し、ルーイは可愛らしく首を傾けているが、ラターシャだけは何かを察して顔を強張らせた。

「もう帽子は要らないからね?」

「要るよ! もっと可愛いのがあるかもしれないでしょ!」

 たった五つを使い回させている状態はそこそこ罪悪感があるんだよ。最終的には二十個くらい選べるように持たせておきたい。強くそう言い張る私に、ラターシャは言葉を失くしてナディアとリコットに視線で助けを求めていた。

 四人が全員で結託して反抗したってこれだけは譲りませんよ! みんなに可愛い恰好させるんだ私は!

 頑な過ぎる私に、夕食後にはもう誰も反対意見を言わなくなっていた。

 最後にナディアが「好きにさせましょう、それで大人しくなるなら」と付け加えたことについてはもう忘れる。

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