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PASTIME!!!  作者: 暮
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第64話_冒険者ガロ

 少し居住まいを正すようにしたおじさんが、私の方へ身体を向ける。

「改めて、俺は冒険者のガロだ。男四人で各地を旅しながら、主に魔物の討伐を請け負ってる」

 声は先程よりも更に静かになり、表情は真剣なものに変わった。ほろ酔いの陽気なおじさんって顔は演技だったのかもと思うくらい、彼からは酒気が消える。

 けれど私は楽しく食べて飲むことを止めるつもりもなく、また口いっぱいにホクホクのポテトを放り込んだ。ハーブで味付けされてるのが病み付きになるなぁ。美味しい。あ、話はちゃんと聞いてますよ。

「戦闘については知識も経験もある。今まで、多くの駆け出し冒険者の手解きもしてきた。だが、魔法についてまるで明るくない。そして魔術師さん方は俺らみたいな無頼漢の言うことは碌に聞いちゃくれない」

 なるほどね。魔法について何か疑問がある、または聞きたいことがあるのに、当てがなくて困っていたところに偶然、私を見付けたのか。

「ほんの少し相談に乗ってほしいだけなんだ。此処の飲み代は持つ。更に大銀貨を三枚出そう。話を聞いてくれないか?」

 武器屋のおじいさんのデジャヴだな。私が此処へ召喚されて鍛錬なく当たり前に使えるもの全てが、この世界では随分と貴重なものであるらしい。

「飲み代だけでいいよ。分かること答えるくらいなら。でも私、まだまだ飲むし食べるからね?」

「ふはは! ああ、幾らでも頼んでくれ」

 了承を得た直後、私はおつまみとお酒を追加注文した。今夜は飲むつもりだったから夕飯を控え目にしていて、たっぷり入りますよ。ミニピザもあるな。頼もう。

「まずこの魔法陣を見てほしいんだが」

 ガロは徐にポケットから十五センチ四方くらいの紙を取り出してテーブルに置いた。ちらりと視線を落とす。これ自体には魔力が籠められていない。写しだな。けれど幸い、タグはそれがどんな効力を持つ魔法陣の『写し』なのかを教えてくれた。タグよ今日もありがとう。

「うーん、凶暴化かな?」

「見ただけで分かるのか?」

「まあね。でもこれは色んな効力が入ってて、結果的に『凶暴化』する感じだけど」

 魔法陣が持つ効力は『判断力の低下』、『焦燥感の付与』、『覚醒作用』、『攻撃性の活性』などが含まれており、これはどう見ても魔物が凶暴化しそうだなと思ったのだ。

「実物を見たの?」

「ああ。この皿くらいの大きさだ」

「なるほど、そんなに強い威力じゃないね」

 彼が示したのはミニピザが乗っている皿だ。直径二十センチ程度だろうか。魔法陣は大体、大きさで強さが決まる。と、今までに読んだ本にも書いてあった。その程度なら人間にはほとんど影響なく、獣や魔物には強く作用するくらいだろうか。そう説明すれば、彼は目を見張った。

「本当にすごいな。俺が見た現象と一致する。間違いないだろう」

 声量はまだ落としているけれど、ガロは少し興奮気味だ。

 聞いたところ、彼はある村に立ち寄った時に周辺の魔物討伐を依頼されたらしい。普段は結界の気配や火による威嚇ですぐに離れていく魔物の様子がおかしく、結界には突撃して来るし、火を恐れる様子もない。かなり凶暴な状態で村付近を暴れており、不安を感じていたところに偶々訪れたガロ達を頼った。

「普段と勝手は違ったが、極端に強くなっていたわけでもない。討伐自体は滞りなく終わった。だが、一か月後に様子を見に行ったら、再発していたんだ」

「んー、魔法陣が原因だったら、そうだろうねぇ」

 あれは結界魔法と同じだ。破られるか、解除するまで効力が継続する。そう話すと、ガロは眉間に深い皺を刻んだ。元よりちょっと彫りが深い顔立ちだから迫力あるなぁ。

「とにかく原因を探るべく、興奮している魔物を探して討伐しながらあちこちを探索したら、さっきの魔法陣を見付けた。地面に描かれていて、どうすればいいか分からずに最初は踏み荒らして消したが」

「少ししたら、復活した?」

「その通りだ。……やはりそういうものなのか」

 魔法陣は、描いた模様と魔力が一つになって完成するものだ。どちらか一つが欠ければ作用しない。けれど、それは発動する()()の話。一度、完成してしまったら主体は『魔力』になる。それを取り除かないと、模様を消しても上書きしても元の形に戻ってしまって、解除できない。

 というか、そうであるように術が組まれるのがセオリーであるみたい。模様維持の機能を付けていない魔法陣は、形を崩すだけで消えてくれるものもある。

「簡単な見分け方は、丸くないのは消したら解除可能。丸いと無理」

「……丸くない魔法陣など存在も知らん」

「そうだろうね。だから、ほぼ無理って思っていいよ」

 魔法陣の歴史書を一冊読んだけど、大昔の魔法陣は丸くないものが多かった。次第に模様を維持させることが主流となって、丸いのが当たり前になったらしい。

「で、その村は今、どうしてるの?」

「一応、俺達が一か月に一度、討伐に通うことで何とかしているが、永遠に続けるわけにもいかない。村が払える金も限度があるだろうし、俺達もボランティアが出来るほど余裕は無い」

 結界が破られることは無いから今のところ被害は出ていないようだけど、付近にそんな凶暴化した魔物が跋扈(ばっこ)していたら、まず村の外に出られない。出る時は腕の立つ傭兵が必要だ。それこそお金が幾らあっても足りなくなる。

「相談は、その解決方法かな?」

「ああ。どうにか解除する方法は無いのか?」

「うーん……私が行くのが確実だし、興味もあるけど、私もこの旅には連れが居るからなぁ、あんまりウロウロできないんだよね。場所は?」

 聞けば、此処から馬車を使って一週間くらい掛かる。みんなを連れて寄り道するには遠すぎる場所だった。それに守護石を渡しているとは言え、魔物が凶暴化している場所に連れて行く気にはならない。やはりどう考えて私が行くのは無理だ。

 転移魔法も私を異世界の者だと知ってる人以外には見せられないから使えないし、大体、毎回そんな人助け紛いのことしてたらキリが無いんだよな。私もボランティアじゃないんだから。

 いつの間にか飲み食いの手を止めてしまった私は、両腕を組んで天井を見上げる。何かいい方法ないかな~と、今持っている知識を引っ掻き回していたところで、ふと、元の世界でのファンタジーを思い出した。

「あ、私が行かなくても解決できるかも」

「本当か!?」

「確証は無いけどね、一度、試してみてほしい。ちょっと準備が要るから、明日また同じ時間にこの店に来れる?」

 彼は迷う様子無く頷いてくれた。他に解決できる方法が一切分からないのだから、『試し』であっても何もしないよりマシ、と思っているようだった。

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