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PASTIME!!!  作者: 暮
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第33話_拷問

 数分後、ボス猿さんの手足には無数の穴が開き、そこから細く血が流れ落ちていた。

 さっきまではぎゃーぎゃー喚いていたけど、今はただひくひくと身体中を震わせ、涎や涙を垂れ流しているだけ。うん、大人しくなった。そろそろ何を聞いても、素直に質問に答えてくれそうかな。

「この組織は、あなたが作った独立のものかな?」

 質問する間にも、五寸釘の形をした金属をいくつも周囲に浮かべておく。さっきもこれで男の手足に穴を開けた。土属性の魔法で作ったものなので、実物ではない。もうちょっと集中したら魔法石みたいに形が残るかもしれないけど、こういう時を除けば釘なんて多分、買った方が早いよね。

 怯えた目をした男が中々答えない。もうちょっと刺した方が良いかなぁと釘の狙いを定めたところで、気配を察した男は慌てて私の質問に肯定を示した。

 この組織は立ち上げてまだ一年ほどで、働き手の女性もあの三人だけ。娼婦を使って麻薬を吸わせ、しっかり漬けてしまった後は麻薬の売買で稼ぐという仕組みだそうだ。まあ予想通りだな。

 あの子達は、娼館から買ってきたのだと言うが、その経緯も真っ当なものではなかった。娼館の主人を騙して麻薬に漬け、まとまった量の薬を渡す見返りに、あの子らを得たと言う。このビジネスがもう少し軌道に乗ってきたら娼婦や組員も増やす想定であったらしいが、まだあまり大きくない内であって良かったと、少し思った。個人的にね。潰す手間が面倒だから。被害の多さの話はしていない。別にそんなことまで私が考えるつもりは無いよ。

「組員は今居るのが全員なの?」

「上に、四人、居る。この街に、居るのは、それで全部だ」

 四人はさっき寝かせた奴らだから、もう一網打尽だな。こいつらにとっては本当に不運な夜だったとしか言いようがない。数名お使いにでも出していれば、まだ希望もあったのだろうに。ただ、組員は他の街にも居るらしい。彼らは街を転々としており、麻薬をいくらかの客に馴染ませたら次に移るようにしていたようだ。娼婦を使うのは麻薬導入のみなので、今までの街には漬けた客へ薬を売る為の人員だけが残されているとのこと。

「あの子達が元々、娼館に居た経緯は?」

「知らない。あいつらは働かせる為に、買ってきただけだ」

 そうだろうとは思ったけど。つまりその辺りのことを本気で明確にする為には、その娼館、または彼女ら本人から聞く必要があるのか。ちなみに娼館とこいつらの間には、もう薬以外の取引は無いようだ。

 要するに。この組織さえ潰してしまえば、他からあの三姉妹が追われる可能性は低い。各街に留まっている残りの組員だけは気になるけれど、本部ほどの脅威はおそらく無いだろう。

「オッケー、こんなもんかな。話してくれてありがとう。拷問は終わり」

 そう言って、私は周囲に浮かんでいた五寸釘を全て消した。ボス猿さんはホッとしたみたいだけど、まだ踏ん張っていないと壁には縫い止められたままだから、慌てて体勢を維持している。力を抜いたら首が締まるもんねぇ。でも、結末は一緒だよ。

「用が済んだから、全員、死んでもらうね」

 男達は私の言葉を聞き、喉を震わせる。命乞いを始める奴も居たが、拷問前に消音魔法を使ったので外に漏れることは無い。どれだけ泣き叫んでも誰にも届かないし、助けが来るはずも無い。

「あ、そうだ。その前にちょっとあの子らに聞かないとな。戻るまでお祈りでもしといてー」

 早く始末して終わらせようと思ったんだけど、三姉妹にも確認しなきゃいけないことがあった。男らを放置し、一度さっきの部屋に戻る。足音もノックも怖がるかと思ったので、短い廊下を無駄に鼻歌交じりに歩いた。

「お待たせー」

 そのお陰もあってか、ばーんと扉を開いても三姉妹は驚いた顔はしていなかった。ただまだ、不安そうな顔はしていた。

「もう拷問は終わったよ。でも聞きたいことがあるから、えーと、ナディア、ちょっと廊下に来てくれる?」

 彼女だけを呼び出したことに、ルーイと黒髪の子が心配そうにナディアを見上げる。ナディアは柔らかく二人に微笑んで、大丈夫だと告げていた。そんな笑顔を私にも向けてほしかったんだけどな。まあ仕方ないな。

 ナディアと二人で廊下に出て、扉を閉ざす。一応、私とナディアだけを包む小さい消音魔法を使い、その旨を彼女にも告げた。これは私と彼女だけの、内緒の話だ。

「ナディアはあの男達に何か恨みとかある?」

「……どういう意味ですか」

「ああ、今から全員殺すんだけどね」

 私が軽く言い放つ言葉に、ナディアは息を呑んで目を見張った。その表情を慎重に見つめてみるけれど、うーん、やっぱり聞かないと分からないな。

「死ぬとこ見たい? もしくは自分で殺したいとかある?」

 どの程度の憎しみがあるのかを、知りたかった。別に、自らの手で憎しみを晴らすことを正だと思っているわけじゃないけれど、憎しみの対象が「もう死んだよ」と言葉だけ告げられた時、納得できるかどうかの問題だ。この機会は、逃せば取り戻せるものじゃない。だからちゃんと自分で考えて、決めてほしかった。

 だけど、まるで思い詰めたみたいな表情で黙るナディアに、もう一つ別の考えが浮かぶ。

「……殺してほしくないくらい大切な人がいる?」

「ありません」

 それは即答だった。良かった。それ言われたらどうしようかと思った。

 一度目を閉じたナディアは、静かに深呼吸をしてから、再び目を開ける。視線は私を捉えなくて、足元を見ていた。

「殺したいと思ったことは、何度もあります。ですが、……それを見守る程の、度胸はありません」

「そっか。それでいいと思うよ」

 何となく手を伸ばして軽く後頭部を撫でれば、ナディアは今までで一番の無防備な表情で、私を見上げた。

「次、あの黒髪の子にも同じ質問がしたいんだよね。呼んでくれる?」

「分かりました。あの……ルーイ、小さいあの子には」

「あの子はいい。聞かないし、見せない」

「……ありがとうございます」

 この時の声が、初めてナディアから感情を垣間見た時の声に似ていて、何となくその理由が分かって、やっぱり私は彼女のことが好きだと思った。

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