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PASTIME!!!  作者: 暮
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第32話_治療

 私は「さっさと終わらせたい」という気持ちになったので切り替えるつもりで強く両手を叩いたら、男共がめっちゃビクッてして笑ってしまった。怖がる仕草も少しも可愛くないねぇ。

「まずはちょっと話が聞きたいんだけど、そうだな、素直に話してもらう為に軽く拷問しよっか」

「はぁ!?」

 一斉に驚きの声と抗議の声が上がる。抗議されても。私達お友達じゃないから情とか無いし。それに私は悪党なので、あるべき論とか掲げられたって知らん。

「でも女子供に見せるものじゃないから……ねえ、近くに部屋ある?」

「は、はい……」

 振り返れば、三姉妹は扉前で立ち尽くしたままだった。部屋にまで入れとは言っていなかったし、入る必要も無かったからね。何かワイワイ後ろで騒いでいる男共を放置して、私は彼女らを別室に促した。二つ隣にある、倉庫のような部屋だ。椅子も無ければベッドも無い。丁度いい位置の部屋だけど、此処でそのまま待機は流石に心苦しいな。私は収納空間から徐にクッションと毛布を取り出した。

「はい、これ好きに使って。身体を冷やさないようにしてて。あ、お腹空いてたりする?」

「いえ……」

 完全に「こいつ何がしたいんだ」って顔でナディアが困惑している。少なくとも君達を傷付けたい気持ちは無いよ。なんてことを悪党が伝えても意味は無いだろうから、敢えて言うのは止めた。

「じゃあちょっと待ってて。三十分くらいで終わると思うから。あ、向こうの音は遮断するし、拷問の音が漏れてくることは無いよ、心配しないでね」

 見せないんだから当然、聞かせるつもりなんか無い。部屋に明かりらしい装置すら置かれていなかったので、私の照明魔法を部屋の端に置いた。一時間くらいは保つだろう。

 私が促すのに従ってクッションに座る三姉妹は、まだまだ困惑している様子だが、私が居なくなって、三人だけで会話できる間にもう少し落ち着いてくれるかな。まあ、疑問は一切解消されないだろうから、不安なままかもしれないけれど。

 そんなことを考えながら部屋を出ようと一歩離れた時、急に伸びてきたタグに思わず足を止める。……いや、それは、何で今なんだ? 目を凝らすけれど、タグの記載内容が変わる様子は無い。

 不自然に立ち止まった私を、三姉妹が不思議そうに見上げている。私は背を向けようとしていた身体を再び彼女らに向け、小さい女の子の方へと歩み寄った。咄嗟にナディアがその子を庇うように腕に抱いたので、また足を止める。……そうだね、無言で悪党が近付いたら怖いよね。気が回らなかった。申し訳ない。

「うーんと、君、怪我してない?」

「え?」

 ナディアから強引に奪うような真似はせずに、二人の半歩手前で屈みながらそう告げる。驚いた声を上げたのはナディアだった。黒髪の子の方も目を見開いて、小さな子を凝視している。

「そうなの? ルーイ、何処か痛む? 見せて」

 小さな子はルーイと言うらしい。彼女はナディアと、黒髪の子と、私を窺うように見つめてから、恐る恐るという様子で軽く服を引き上げてお腹を見せてくれた。左脇の辺りに、大きな紫色の痣が広がっている。それを見て、姉二人が息を呑んだ。

回復(ヒール)

「えっ」

 傷の状態をきちんと確認することも考えたけど、一秒も長くその痛みを残しておきたくなかったし、私が見ていたくなかった。瞬時に消えた傷を見て、三姉妹がまた驚愕の表情を見せる。

「もう痛みは無いね?」

「は、はい」

 ルーイが頷くと、ナディアと黒髪の子は彼女の傷が消えたことを何度も確かめてから、改めてルーイを抱き締めていた。本当に姉妹みたいだな。彼女らの動きを微笑ましく思う反面、心臓の裏側からどす黒い怒りが湧き上がるのは抑えられない。

「気付かなかったな、さっきの客か」

 つい、声のトーンが落ちた。三姉妹がその変化に緊張したことにこの時は気付かなくて、床を見つめ、ルーイから引き剥がした男のことを思い出していた。

 女の子を買って行為に及ぼうとしていた、または及んでいたという立場は、私と同じもの。今日は偶々私が此処を潰そうと思っていて、彼らは運悪くその場に居合わせただけだ。なので魔法を使って彼らを攻撃したのはやり過ぎたかもしれないって気持ちが、さっきまでは少なからずあった。けれど今あるのは、『足りなかった』という思いだけ。

「……今は、いいか」

 先に片付ける案件があるからな。そう思って立ち上がった時にようやく、私の様子に彼女らが怯えていることに気付いた。ああ、重ねて申し訳ない。殊更にっこりと笑みを向ける。余計に怖いかな?

「じゃ、すぐ戻るよ。少しゆっくりしてて」

 これ以上は怯えさせまいと、さっさと傍を離れる。慎重に彼女らの部屋の扉を閉ざし、放置していた男共の部屋に戻った。私が部屋に入り込むなり三つの魔法が飛んできたんだけど、ぺいってまとめて消しておく。不意を打つべく一生懸命に魔力を練っていたのか、さっきよりは手ごたえがあった。でも残念ながら痛くも痒くもなくて、男達の絶望顔がちょっと面白い。

「はい、じゃあ、しばらく頑張ってねー」

 拷問しまーす。

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