神様、冒険者になる。
毎日更新できない…
「さぁ、お待ちかね。ここがメトロタウンだ。そこの衛兵さんに身分証を見せればすぐに通してもらえるからね」
み、身分証だと。そんなもん持ってないぞ。
「み、身分証がないと入れないのか?」
「なんだ、身分証も持ってないのかい?身分証がなければ銀貨1枚で仮の身分証を発行してもらえるよ」
「な、なるほど。だが銀貨なんて持ってないしな…」
そう、俺は神様。人間の通貨など持ってる訳がない。つまり無一文なのだ。
「なんだ、あんた金も持ってないのかい?よくもまぁここまでこれたもんだ。仕方ない、乗り掛かった船だ。私が出そう」
「おお!すまない!助かるよ!」
この男いい奴だな。よし、神の名にかけて恩を返さなくては。
「なに、人への親切は自分への親切ってね!」
「ありがとう!ポルコさんに祝福があります様に」
お礼に俺の祝福を授ける。もちろん神力は使うが微々たるもんだ。
ポルコの周りが金色に光る。
「うぉ!な、なんだ」
光はすぐに収まり元どおりになる。
「ん?どうかしたのか?」
俺は知らないふりをしつつ尋ねる。
「今確かに光が…い、いや。長旅で疲れてるんだろう」
「じゃあすまないが身分証の件よろしく頼む!」
「ああ。任せてくれ。なんだかすごく気分がいいんだ」
俺の祝福による幸福感のせいだな。
そのまま衛兵の所まで行き手続きを行う。ポルコのおかげで速やかに仮身分証の発行は終わり、思ったよりもあっけなく中に入る事ができた。
「じゃあ私は店に戻るのでこれで。仮身分証を普通の身分証にするには商業ギルドか冒険者ギルドで手続きが必要だからな?早い事済ましたほうがいいよ。じゃあこれで失礼するよ!」
「ああ。いろいろと本当に助かった!ありがとう!あとは自分でやってみるから!またどこかであったら声掛けてくれ!」
俺はポルコの背中を見送りながらこの後の事を考える。
「冒険者ギルドに商業ギルドか…どっちにしようかな。とりあえず冒険者ギルドから行ってみようか。
なんか面白そうだし!」
そんなゆるい感じで冒険者ギルドへと向かう。
ポルコに場所は教えてもらっていたので意外とすぐに着いた。
「おー。これが冒険者ギルドってやつか。とりあえず入ってみるか」
冒険者ギルドの扉を開ける。
「お邪魔しま…」
「次の冒険者の方!どうぞ!」
ワイワイガヤガヤ。なんだかすごく忙しそうだな。
とりあえず並んでみるか。
俺は長い列の1番後ろにならぶ。
それにしてもどいつもこいつもすごく強そうだ。
「おい兄ちゃん!あんたここら辺じゃ見ねぇ顔だな!新人かい?」
声がでかい。
「そうだ。今日初めてこの町にきたんだ。とりあえず身分証を発行してもらうんだ」
「そうなのか!今この町は聖女様をお迎えする為に町周辺のモンスター討伐やら周辺警備やらで大忙しだからな!仕事はいくらでもあるぞ!」
なるほど。この賑わいは聖女とやらのせいなのか。だが聖女とは一体なんなんだろう。
「ちなみにその聖女様ってのはどんな人なんだ?」
「なんだいあんた聖女様を知らないのかい!?聖女様ってのはな、神様に代わり奇跡を起こしてくださるんだ!人々の願い事を聞いて叶えてくださるんだ!実際に天候を操ったり、人の力では出来ない奇跡を起こされたんだとよ!いやぁすごいお方だよ!聖女様は!」
願い事を叶える?一体どうやって。こいつはちょっと調べてみないとダメだな。
「へぇ。そいつはすごいな!で、その聖女様にはどうやって会うんだ?」
「この町に聖女様が来られた後中央の広場でみんなの願いを聞いてくださるんだ!その時なら会えるんじゃないか?」
よし。その時に調べてみるか。
「いろいろ教えてもらって助かったよ。ありがとう」
「なに、いいってことよ!また分からないことが有ればカウンターの受付嬢に聞いたら教えてもらえるらな!」
そう言って前の男はカウンターに呼ばれて行った。
「次の方!こちらの窓口へ!」
お、俺の番だな。
「すまないが身分証の発行を頼みたいんだが」
「はい。身分証の発行ですね。手数料として銀貨2枚必要ですがよろしいでしょうか?」
さっきポルコから発行に必要だろうと手渡された。
本当にポルコはいい奴だ。よし、もうちょっと祝福しておこう。
「銀貨2枚だな。これで頼む。」
カウンターに銀貨を置いた。
「はい。確かにお預かり致しました。それではこちらにをかざしてください。カードにあなたの情報を登録します」
カウンターに置かれたカードに手をかざす。
「お名前をおっしゃってください。次に職業を続けて答えてください」
職業…今は無職になるのか?神が無職ってのもなんかやだな。とりあえず冒険者って事にしとくか。
「名前はロエル。冒険者だ」
するとカードが一瞬光り元に戻る。
「はい。以上で身分証の登録が終わりました。こちらのカードがあなたの身分証になりますのでくれぐれも失くされませんように」
「おう。ありがとう。あとお金を稼ぐにはどうしたらいいんだ?」
すると受付嬢は壁の掲示板を指差しながら、
「あちらに依頼書が貼ってありますので受けたい依頼をお持ちください。ただ失敗されますと罰金が課されますので注意してください」
「わかった。ありがとう」
俺は礼を言ってカウンターを離れる。
「とりあえず金が必要だからな。手っ取り早く稼げるのを探すか」
割りのいい依頼を探すべく掲示板へ向かった。