神様、地上に立つ
コツコツ
「おー、1000年ぶりの地上はだいぶ様変わりしてるなー」
門をくぐり地上を覗き込むクロエル。
「とりあえず人間が集まる場所に降りて様子でも見ようかな」
適当な町を決めそこに降りることにした。
「よし!では降りるぞー!」
直接町に降りて神降臨!とか言われて騒がれても困るので静かに降り立つ。
「久しぶりの大地だ!草原だ!やっぱり地上はいいよなぁ!」
願い事が増え始めてから地上に降りる余裕も無くなりここ300年ほどは覗き込む余裕もなかったのだ。
なので願い事の内容以外の事はさっぱり分からず、とりあえず町に入る前に道行く人間に尋ねてみる事にした。
「いきなり町はハードル高いしなぁ。あっちょうどいい所に商人みたいな奴が来たな。ちょっと聞いてみよう」
ガラガラと馬車の音が近づいてくる。
「おーい!ちょっとすまん!聞きたいことがあるんだが!」
馬車が目の前で止まり商人が御者台からこちらを覗き込む。
「おや?ここら辺じゃ見ない顔だね。こんなとこでどうしたんだい?旅人にしては荷物が少な過ぎるし、冒険者にしては軽装過ぎるし。それにしても変わった服だね?そんなに白い布は見たことがないよ!」
しまった。下調べもなんもしてなかった。久しぶり過ぎて今時の服装も知らないし。どうしよう。
「い、いや。あれだよ!えーっと、その、アレを見に来たんだよ!」
半ばやけくそだった。もちろん神なので神力を使えばどうとでもなる事なのだが、地上ではなるべく神力は使わず人間の様に振る舞うと決めたのだ。なぜかって?万が一、神だとかバレたらゆっくりできるわけが無いからだ!何でもかんでも神力を使い、時の流れや現界の理を変えてしまうと他に影響が出てしまい後がめんどくさいのだ。何より一番の問題は天界にバレてしまう事だ。それは絶対避けなければならない。俺の明るいスローライフ計画がパーになってしまう。
「さてはあんた。聖女様を見に来たんだな?」
「聖女様?」
「あれ?三日後においでになられる聖女様を見に来たんじゃないのかい?」
「そ、そうなんだよ!聖女様を一目見たくて来たのさ!」
「やっぱりそうか!いやぁーそうだと思ったんだよ!一風変わった雰囲気の人だったからそうじゃないかと思ってたんだよ!」
やっぱり変だったんだな。よし、町に行ったらすぐ着替えよう。
「どうだい?町まではそんなに離れていないが乗っていくかい?」
「そうだな。せっかくだしよろしく頼む」
そうして俺は勧められるがまま商人の隣に座らせてもらう。
「そういえば自己紹介がまだだったね。私は今から向かう町メトロタウンの商人ポルコというんだ」
「先に名乗らせてすまん。俺はロエル。ただの田舎もんさ」
クロエルじゃまんまだしなバレない様にしないとな。
そんな事を考えながら町へと向かった。