神様、ぼやく
思い付きです!ごめんなさい!
「もう疲れた〜!隠居したい!働きたくない!」
神様ことクロエルはいつものごとくぼやいていた。
「またですかクロエル様!毎日同じ事をおっしゃってますよ!早く次の書類を確認してください!次の山がまだまだ残ってますよ!」
口うるさいこいつはジムエル。俺の秘書官だ。いつも俺に仕事の催促をしてくるやなやつだ。
「それにあなたは神様なんですから疲れるわけないでしょうが!地上からの願い事が次から次へと来ていますよ!ぼやいている暇があるなら早く終わらせてください!」
そう、神様の仕事と言っても色々あるのだが一番大変なのは地上からの願い事。内容はピンからキリまであるし全部叶えると大変な事になる。だからいちいち確認しなくちゃならないのだがなにぶん数が多すぎるのだ。
何しろ地上の生き物たちからの願い全てを確認しなくちゃならない。
正直数が多くて追いつくわけがないのだ。
創造し始めた頃は生物自体も少なく願い事をするような生き物も存在しなかった。
その頃はまだ地上に降りて生命の育ち具合を見たり、進化のきっかけを作ったりする余裕さえあった。
いつからこんな事になったのかというともちろん人間が生まれてからだ。
はじめこそ数も少なく、たまに地上降りて知識与えると感謝をされ崇められるだけだったのだ。
だが知識を与えるとやがて欲が生まれ、欲が生まれると神に願うようになったのだ。
それこそ雨を降らしてくれだのやませてくれだけだったのできにもしていなかったのだが、文明が発展し人間たちが様々な物を作り始め子供を作り数を増やす毎に願いの数も格段に増え、尚且つ複雑化していったのだ。そして、願い事の処理が増え地上に降りる暇もなくなったというわけだ。
「なになに、隣町のメリーちゃんとお付き合いしたいのですが彼氏がいるかお教えくださいだと?そんなもん自分で調べろよ!」
そう、地上へ降りなくなると更に人間達は俺を都合のいい存在にして何でもかんでも願うようになってしまったのだ。
ただ中には本当に叶えてやらないといけない願い事もあるので疎かにするわけにもいかないのだ。
「次は、1か月以上雨が降らず田畑が干上がっています。どうか雨を降らせてください。か、ジムエル!あそこの地域に雨降らせといてくれ!」
「クロエル様。その地域をしばらく晴れにしろっておっしゃったのはあなたですよ!その前の大雨で地盤が緩んだのを乾かし欲しいとかいう願いを叶える為に!覚えてらっしゃらなかったんですか!それでも神様なんですか!」
「毎日毎日山の様に願い事確認してるんだよ!俺だって忘れる事もあるよ!」
「はぁ〜。とりあえず雨を降らせる様、天候局に伝えてきますのでその間しっかりと事務処理しといてくださいね!頼みましたよ!」
そういいながら部屋から出て行くジムエル。その背中に向かって悪態をつきながら書類に視線をもどす。
「わかったよ!ったく人をなんだとおもってんだ。願い事処理マシーンかなんかと勘違いしてんじゃないのか?」
その時、俺の頭に稲妻が走った。そうだこれいけんじゃね?と閃いたのだ。
「よし!創るぞ!願い事処理マシーン!」
俺はそう呟きながら目の前の凄い勢いで増えていく書類の山から視線を逸らし、創造室という俺専用の部屋に入った。
「適当なもんは作るとまずいからな…判断基準は過去の例を当て嵌めるとして…ジムエルにバレるとうるさいから見た目は俺のそっくりにして…そうだ!あいつ俺の事軽く見てるからな。威厳ある喋り方をする様にしよう!うんうん。我ながらいい考えだな!流石は神様だ!」
そままあーでもないこーでもないと言いながら時間は過ぎていった。
ドンドンドン!ドンドンドン!
「クロエル様!何してるんですか!私が行く前より書類が増えてるじゃないですか!早く出てきてください!」
しまった。普段、創造室は時間の流れが止まっているのだが先日の大掃除の時に設定を緩やかに変えたままだった。
「ちょ、ちょっとトイレだよ!すぐ戻るから先行っててくれ!」
「あなた、トイレなんていく必要ないでしょう!神様なんですから!」
「わかったから!先行ってろってば!」
「もう!早く戻ってくださいね!」
扉越しにそう文句を言いながらジムエルの足音が遠ざかっていく。
「あいつはもっと俺を敬うべきだと思う。」
俺はそう思いながら創造の手を止め神々の山を彷彿とさせる書類の山へ戻るのであった。