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第7話 何だ、あのまだら模様の男は

自分が放った魔法の威力にしばし呆然とした私は、味方を巻き込んだりしていないか心配になり急いで城壁の兵達の元へ向かった。

私の攻撃に合わせてしっかり防御魔法が発動されていたおかげで少なくとも死人は出ていないようだった。訓練の成果である。


「やった!やったぞ!勝った!」

「あの魔法攻撃のおかげだ!それにしてもどこの部隊がやったんだ?見たこともない魔法だったが…」

「あとであれをやった隊には全力でお礼しないとな!」


兵達が勝利に湧き上がっているのを見て安堵する。

ほっとしたのも束の間、一部の兵達が戦場の一点を指さして騒いでいるのに気づく。


「何だ、あのまだら模様の男は」


兵の指さす先を辿ると、そこには不思議な身なりをした男が居た。

緑と黒のまだら模様の服を着て、筒状の黒い塊を所持している。何に使う物なのかは全くわからない。剣でも杖でもない。共和国の魔導兵器にもあんなものがあるとは聞いたことが無い。

近くに居た指揮官を捕まえ問いただす。


「隊長、あの男は何だ」

「は、ロ、ロイシン様?…ハッ、し、失礼いたしました!!あの男ですが、不明です。突然そこに現れたとしか思えません。見たところ共和国の兵士ではありません。」

「敵意は感じられるか?」

「敵意は無いように見えます。先ほどから何か言葉を発していますが、全く聞き取れません。」

「大陸共通語ではないのか。」

「はい、未知の言語です。どこかの部族の言葉かもしれませんが。」

「そうか。攻撃はするな。お前の隊であの男を回収し、指揮所に連れてこい。抵抗しないなら拘束の必要もない。あの筒は正体不明だ。十分に注意しろ。脅威となるようなら没収しろ。お前の上級指揮官には話を通しておく。」

「直接尋問をされるおつもりで?よろしいのですか。」

「共和国兵ではないなら問題ないはずだ。行け。」

「了解しました!」


私はここの責任者ではあるが軍の所属ではない。貴族の権力を以て勝手に命令を出せば指揮系統に乱れが生じる。

それは理解しているのだが、私は不思議とあの男に興味が湧き、直接話してみたくなったのだ。

共和国兵ではないのなら、私が直接話をしても問題ないだろう。


「念話の魔道具が必要だろうな…アレを使う機会が来るとは思わなかったが」


王国と共和国の公用語は同じである。意思疎通の魔道具など普段は滅多に使われることのない代物だ。

何らかの理由で言語による意思疎通が難しい場合に用いられる。

大陸共通語を話せない者達が多く残っていた時代は頻繁に持ち出されることもあったようだが、私が生まれた頃には既にそんな時代は終わっていたから、使うのは初めてだ。


戦場では死体処理が始まっている。

今日は若い敵兵の死体が多い。これまでは老人や女の死体が多く、共和国軍の編成に疑問を抱いたものだ。


「これまでの無謀な突撃は捨て駒による威力偵察だった?それにしても命が失われ過ぎだ。共和国には人の心が無いのか?おっと、指揮所に戻って魔道具を準備しなければ。」


今日はいつもと何もかもが違う。

特にあの謎のまだら模様の男の出現が妙に気にかかる。


あの男が我々に大きな変化をもたらすのではないか、そんな直観があった。

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