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第3話 爆薬の量間違えたのか?

ドーーーーン!

ドドドドドド!

パン!パパン!パパパン!

バリバリバリバリバリ!


「弾込め良し!」

「目標敵散兵!撃て撃て!ジャンジャン撃て!」


ついに待ち望んだ(?)陣地攻撃が始まり、あたりは一気に騒がしくなる。すぐ隣に居る相手にすら叫ばないと声が通らないほどだ。それほどに戦場というのはうるさい。

訓練ですらこれなのだから、本物の戦場はいかほどのものかと思う。


普通科連隊の小銃小隊が複数、砲迫撃の支援の元、という設定で、俺たちの防御陣地へ突撃をかけてくる。

装甲車両も参加していて、かなり気合の入った訓練だ。


そして俺たちは空包を撃ちまくる。

我々対抗部隊の役目は戦場のにぎやかしだ。

切れ間なく銃声を鳴り響かせ、戦場っぽさを演出する。

たまに地面にしかけておいたTNTが爆発したりして、それっぽさの演出に貢献する。

もちろん危険が無いように、深めの穴が掘ってあり、その中で爆発するだけだ。


「オイ!あと何発撃てばいいんだ?!」

「終わるまでッスよ!!!ところでこんなにジャンジャン撃ちまくっていいんですかね?!安全装置よし弾込めよし!」

「撃て!…使用期限が近い空包の処分も兼ねてるとか聞いたぞ!!」

「なんすかそれぇ!」


アホみたいにデカい声でくだらないことを話しながら、ひたすら89式小銃に弾を込めては撃ち弾を込めては撃つ。とっくに耳はバカになっている。しばらく無心で撃ちまくっていたが、


「ここは通さねえぞ!絶対に守り抜くゥ!」

「オラオラ死ねや侵略者ども!」


耳だけでなく頭もおかしくなってきたのか、俺たちはノリノリで状況に入り始める。

いや、設定的には「侵略者」は我々のほうなのだが。


(それにしてもさっきから意識が朦朧としているような気がする。叫びすぎて酸欠になったか?)


なんだか始まってからかなりの時間が経った気もする。


「敵の数が減りません!」

「クソォ!奴らは本気だぞ!」


訓練だから減らないのは当たり前だ。そう、これは訓練だ。


「だいぶ接近されました!」

「そろそろ砲撃来るぞ!気を付けろ!」

「了解!」


プーーーーー!と電話の呼び出し音が鳴り、小隊長が何かを伝えてくる。もうすぐ敵の支援砲撃が来るから気を付けろ的なことを言っている気がするが、周りがうるさすぎて聞こえない。


今頃、攻撃部隊の小隊長が無線で特科部隊へ支援砲撃を要請しているだろう。あと1分もすれば、砲撃の弾着に見立てたTNTが爆発し、煙幕が上がり、鉄条網を越えて自衛隊員たちが殺到してくるはずだ。


(これが俺が自衛隊らしいことをする最後の1分間かもしれないな。いや勿論、訓練の状況が終了してからの後片付けがあるし、退職するまでの期間は自衛官なんだが。

でも、戦場で銃を撃つという「自衛官っぽいこと」はこれが最後だろう。いや、訓練だけど。

自衛官ってのはもっとバンバン銃を撃ったりするもんだと思っていたが、通信科に配属されたらそんな機会はほとんど無くて、実弾を撃つのなんて年に2,3回の射撃訓練くらいだったな…)



もっと沢山銃を撃つ経験をしたかった。今撃ちまくっているのは実弾ではなく空包だけれど、せっかくだし全力で撃ちまくってやろう。


「さあかかってこい!俺が相手してやる!」


隣にいる奴のことはもう気にしない。

ヒュ~~~~~~~~~~、と何かが落下する擬音のような音が聞こえる。

砲撃の弾着の前触れを知らせるために、花火のようなものを使って音を出しているのだ。


もうすぐ砲弾が落ちる。疑似的な爆発が起きるだけだが。


敢えて身を隠さない。TNTの爆発で土が舞い上がるところをしっかり目に焼き付けてやる。


誰かのカウントダウンが聞こえる。

「5、4、3、だんちゃーーーーく、今!」




カッ!!!!!!!!!!!!!




「え?」


爆発が想像の何十倍もデカい。しかもなにか鮮やかな光を発している。TNTの爆発で炎色反応が見られるとか聞いたことが無い。


(爆薬の量間違えたのか?いやいやそもそもTNTの爆発じゃないだろこれ…)


などと呑気なことを考えているうちに、俺は爆風に吹き飛ばされた。


(あ、富士山キレイ…)


吹き飛ばされながら視界に入った富士山?を見て、そんなことを考えた。なんだか妙に遠くにあるように見えたし、俺の知っている富士山より、だいぶデカい気がした。

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