第1話 思えば幸せな人生であった。
主人公が異世界転移して魔法をバンバン使うお話はたくさんあるけど、魔法の仕組みについて詳しく描写する作品はあまり無いなあと思って書き始めました。
投稿は初めてです。よろしくお願いします。
思えば、幸せな人生であった。
埼玉県に生まれ、平凡な家庭で育った。
この「平凡」というものがどれほど得難いものであったのかを、最近になって痛感しているところだ。
両親は共に公務員で、特に化学教師である父の影響を強く受けた。
小学生にして将来は理系の道に進むものと確信していた。
実際そうなった。
いわゆる天才肌というやつなんだと思う。
小学校の勉強など何一つ努力しなくとも毎回テストは100点だった。
当たり前のように私立の中高一貫校へ進学、当たり前のように大学の工学部に現役合格した。
大学では特にサークル活動などはしなかった。バイト漬けの日々、なんてやつとも無縁だった。
真面目に講義に出席し、順当に単位を取得し、順当に4年での卒業が確定した。
幸せな人生であった。
このまま普通に就職して相応の収入を得て身の丈にあった生活をすることもできたはずだ。
しかし就職活動の段階になって、自分がとてもつまらない、「平凡」な人生を送ってきたように感じてしまった。当時の俺はそう考えた。
なにかこれまでの自分からは考えられないような、全く縁のなかったような世界に飛び込んでみたくなった。
そうして、ちょっと変わった所に就職を決めた。
そして大学卒業から約5年。
俺は期待以上に平凡から逸脱した。