星が降る(最終話 おまけ)
そっと差し出されたリボンをヴィルは目を細めながら受け取った。
シェスカの頬は暗がりでも分かる程に紅潮している。その姿は愛しく、手放す事など考えられなくさせる。
シェスカの腰を抱き寄せたまま、贈られた緑のリボンにヴィルは口付けた。
目を丸くして見上げてくる腕の中の少女の熱い頬に触れる。
「え……っとヴィルさん?」
戸惑うシェスカの声すら、欲を起こさせる薬のようで。
我侭になって行く。心が重なったのなら、その全てが、欲しくなる。
なめらかな頬から指を動かし、赤い唇をなぞった。
小さく名前を呼ばれた。
かかる吐息は甘く、背筋が熱くなる気がした。
頤を上向かせ、覗いた舌をそっと塞いだ。
強張る体を強く抱き寄せる。離さないように角度を変え深く求めた。
シェスカはくぐもる息に必死で耐えた。混乱しつつも噛まないように懸命に堪える
押し入られる扇情的な思いに足の力が奪われていく。
漏れ聞こえる声は他人のもののようで……。
力強い腕に全てを任せてしまいたくなる。
なぞられる感覚に思考を止める。
なぞる感覚に理を見失っていく。
苦しそうな甘い息に、舌を抜く。
崩れる少女の体を支えなおし、清潔な耳朶に口付けた。
流石に吃驚して一気に我に返ったシェスカは、震える両手でヴィルの胸を押した。びくともしなかったが、唇は離してくれたのでほっと力を抜いた。
「あ、あの、だめ」
ぼうっとする頭でシェスカはヴィルを止める。
心臓が破裂しそうだ。
腕の中で戸惑うシェスカの額に軽く唇を押し当ててヴィルは笑う。
肩を竦めて上目使いに見詰めるその姿が、どれだけ自分を煽っているのか少女は分かっていないようで。ヴィルは短く息を付いた。
首を傾げて笑って見せると、シェスカの瞳に安心の色が見えた。
ヴィルはシェスカの髪を一房手に取り、囁き声で言う。
「流石にここじゃこれ以上しませんよ?」
「?」
眉を寄せて首を捻ったシェスカに。
「意味、わかります?」
聞いたのは多分不安から。
「え?」
「…………」
ここまでして、この反応はどうなんでしょう? 混乱しているだけのか……とヴィルは空を見上げた。
「星、本当に綺麗ですね」
言うヴィルにつられてシェスカも星空を仰ぎ見た。
そうだねと、頷くシェスカにヴィルはもう一度口付けて。
「おいおい教えます」
「え?」
「さ、そろそろ帰りましょうか」
疑問顔の少女の手を取って、ヴィルは町へと歩き出した。
初ちゅーでベロちゅー